アルピニスト・野口健氏が「秘策」を緊急提言!富士山が「汚すぎて世界遺産剥奪」という重大危機

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’13年の世界遺産登録から5年強で、訪問客がそれまでの倍となる500万人を突破。日本が世界に誇る富士山に重大危機が迫っている。
「世界遺産」の剥奪――しかも、その理由が″汚すぎるから″。
『世界遺産にされて富士山は泣いている』(PHP新書)の著者でアルピニスト・野口健氏は「富士山が『世界一汚い山』なのは登山家たちの共通認識」と証言する。
「’97年に様々な国の登山家からなる公募隊に参加して初めてチベット側からエベレストに挑戦したのですが、現地はゴミが散乱していて、その多くが日本製の食料品でした。皆で掃除していると隊長が『日本人はヒマラヤもマウント・フジのようにするのか?』とポロッと言いました。聞けば、登山界のスーパースター、ラインホルト・メスナーさんも『世界中の山を登ったが、マウント・フジが一番、汚かった』と言っているという。僕は冬しか登ったことがなかったので、翌年夏に富士山に行ってみたら、たしかにゴミだらけでした……」
この時の衝撃をキッカケに野口氏は’00年から富士山とエベレストの清掃登山を始めた。マイカー規制導入などによって多少は改善されるも、富士山の″汚染″は未解決。野口氏が内情を明かす。
「そこはユネスコもよくわかっていて、富士山の世界遺産登録は実は『条件つき』でした。オーバーツーリズムを解決する、大型観光バスによる排気ガス汚染を改善するなど、様々な″宿題″がユネスコの諮問機関から出されている。そしてその事実を、山梨県は積極的に広報してこなかった。条件をクリアするためには、厳しい入山規制が不可欠だからです」
入山規制は観光客の減少に直結する。
実際、「入山料を取って、入山規制をしないと世界遺産になれないなら、そんなのいらない」という声が一部の観光業者や首長から上がっていた。
ところが、折からの円安を追い風にインバウンド客が激増。長崎幸太郎知事(55)はついに富士山の世界遺産登録が「剥奪の危機」にあることを会見で訴え、入山料の徴収と入山規制に踏み切った。
「僕は世界遺産登録前から山梨県の職員に請われて意見交換をしているんですけど、彼らはずっと『手を打たないとマズい』『登録抹消となったら、犯人探しが始まる』と危機感を抱いていた。でも、政治がそれを許さなかった。だから、知事自ら″タブー中のタブー″に言及したことに驚きました」(野口氏)
長崎知事が打ち出したもう一つの策が、「富士山登山鉄道構想」だ。
富士山の麓(ふもと)と5合目を繋ぐ有料道路「スバルライン」から観光バスやタクシーを排除して路面電車を走らせることで排ガスをカット。「電車の本数で入山者数を管理できて、冬季の富士山の観光にも繋がる」と知事はアピールしたが、富士吉田市や山小屋組合、市民団体らが「導入工事で環境が破壊される」「土砂崩れや雪崩の危険がある」などと反発。
「冬の富士山に入らない、というのが信仰にのっとっている」と地元の神社まで参戦するドロ沼バトルに発展している。
野口氏は「海外の例を見ても、入山規制と高山鉄道しか打開策はない」と言う。
「いま、入山料は2000円ですが、外国人からしたらラーメン1杯程度の額。これを3万円に引き上げる。それでもインバウンド客は来ますよ。日本人は1万円。タダでもいい。エベレストはネパール人の入山料は無料。外国人からは170万円くらい取りますから」
暗礁に乗り上げている登山鉄道構想についても「秘策がある」と野口氏は言う。
「富士山の冬景色って綺麗ですよ。構想では、5合目にできる駅はシェルターの役目も兼ねる。富士山は活火山なのに6合目に小さいシェルターが1個あるだけ。一石二鳥なんですよ。″冬の富士山に入るのは信仰上の問題がある″という指摘は矛盾している。山頂にあった気象観測のドームや冬も営業している小屋に神社が抗議したなんて話、聞いたことない。どうしても鉄道がダメなら、スバルラインを廃止して麓から歩くようにすればいい。樹林帯を抜け、高山植物を愛でて、楽しみながら2泊3日で登る。4000m弱の山を日帰りで登ること自体が乱暴なんです。槍ヶ岳だって皆、3泊して登ります。高尾山の延長みたいに考えているから、半袖短パンとか、キャリーバッグを持って登る輩が出てくる。無謀な弾丸登山の犠牲者が後をたたないのです」
山梨県の広報担当は、地元神社が冬季営業する小屋等に抗議したかどうか「承知していない」とした上でこう回答した。
「信仰上の理由から議論をいただく場合には、国民的・国際的説得力が得られるだけの論拠が必然的に求められていると考えている。入山料の値上げは今後、必要経費が増えればあり得る。外国人料金の設定については、登山鉄道の運賃も含め、導入について研究していく」
霊峰・富士山を大事にしたい。その想いは皆、同じはずだ。
『FRIDAY』2024年8月9日号より

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