【山村 佳子】「東大卒の夫と高学歴の子を作る」4月出産を目指す妻が夫の浮気よりショックだったこと

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「小学校や中学校受験では4月、5月生まれが有利とされています。そのために妊活の天王山も夏。今の季節は教育意識が高い人から“妊娠したいから夫の行動を調査してほしい”という依頼も増えます」
こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんだ。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。
子供の数が減少しているにも関わらず、小学校受験をして私立に進む子供の数は増え(1)、中学受験者数も2024年度が過去最高を記録している(2)。
受験というのは何かに挑戦すること。親子で何かに挑むことで子供も親も成長することもあるだろう。しかし、それは「誰のため」なのかを見誤ると、子供を苦しめることにもなりかねない。そして時に夫婦の関係にひびが入ることもあるだろう。
今回、山村さんのもとに相談にきた44歳の専業主婦、順子さんは、結婚15年になる夫と「4月か5月生まれの子を出産したいのに妊活ができない。夫は浮気をしているのではないか」と相談してきたのだ。それも、ひとり目の息子が予定日からひと月近く早産になったことで早生まれとなり、その後小学校受験も中学受験も、順子さんの良かれと思う大学附属校に不合格だったことから、「受験のための妊活」にとらわれてしまっているようだった。
順子さんは「主人が浮気して、私が孤独で、息子は勉強ができないなんて、最悪の人生です」とまで語った。こう言われてしまう息子さんのことも、そう言ってしまう順子さんのことも、ケアが必要ではないかと心配になってしまう。
果たして浮気の現状は。そして順子さん一家はどうなってしまうのか。
1)「文部科学統計要覧」令和5年度版
2)首都圏模試センターの「私立・国立中学校の受験者総数」
改めて振り返ると、順子さんと、コンサルティング会社に勤務する43歳の夫は結婚して15年。2人の間には、私立中学校に通う13歳の息子がいます。
順子さんと夫は17年前に、コンサルティング会社の同僚として出会いました。「頭がいい子供が欲しい」と願う順子さんは、東大卒の夫を相手として選んだのです。その背景には、順子さんの学歴偏重の価値観がありました。東京郊外の比較的裕福な家庭に育った順子さんは、公立高校から名門私立大学に進学。そこで、附属校から上がってきた人の、豊富な人脈と経験、金銭感覚などに大きなショックを受けたのです。「附属校出身者が10年近くかけて培った人脈、積み上げてきた経験に、太刀打ちできない」と感じた順子さんは、いつの頃からか「我が子は大学附属の小学校に入れる」と決意するようになったのでした。
小学校受験は、4月、5月生まれが有利と思いこみ、妊活をした順子さんは、無事に授かり医師から「予定日は4月10日です」と言われました。ところが産休直前まで仕事を詰め込んでいたので、切迫早産に。その結果、息子は3月末に生まれたのです。幸い切迫早産でも元気なお男の子が生まれて素晴らしいのですが、順子さんは早産にショックを受け、会社を退職してしまいます。
そして息子の小学校受験に邁進しましたが、不合格という結果に。その後、中学受験の挑戦もしたのですが、大学附属の中学校はどこも落ちてしまい、現在は第三志望の私立中学校に通っています。
順子さんは6年前から「4月か5月生まれの子供を産み、リベンジしたい」と思うも、夫は「子供は一人いれば十分」と考えており、妊活に協力的ではありません。不妊治療ができず、自然妊娠を狙うしかないのに、仕事を言い訳に、夫は帰ってこないのだそうです。順子さんは元同僚に出張だったかどうかLINEで問い合わせると、出張ではないという返事が来ました。それと同時に、夫から「出張で、今ここにいる」と、どこかのオフィスにいる自撮り写真が送られてきました。夫の浮気を確信した順子さんは、調査を依頼したのです。
夫の行動を聞いたところ、いつも深夜0時以降、順子さんと息子が眠った頃に帰ってくると言います。そして朝は6時に家を出ていくとのこと。よく話を聞くと、1週間のうち、自宅で夕飯を食べるのは、日曜日と月曜日の2日間だけどいうことがわかりました。
ひとまず、1日目は、朝6時から都内の自宅マンション前で待機。ポロシャツにチノパン姿の夫が家から出てきたところを尾行したところ、都心の大きなオフィスビルに入って行きました。
18時30分ごろにスーツ姿になり、男性2人と出てきて、タクシーに乗り銀座の和食料理店に入って行きます。客単価2万円程度のお店なので、おそらくクライアントとの会食でしょう。20時30分に4人で出てきて、解散しました。夫は部下らしい人の肩を叩いて「お疲れさま」と言い、別れます。
夫は新橋方向まで歩き、あるバーの中に入って行きました。会員制のお店なので、私たちが入ると目立ってしまうので外で待ちます。22時に出てきた夫は、汐留方面まで歩き、古い雑居ビル内に入って行き、朝まで出てきませんでした。
翌朝、8時に昨日の朝と同じチノパン姿になった夫が出てきて出勤します。ペアの探偵がビル前を張っていると、40代の女性が出てきて、近くのメディア関連会社に出勤したと報告がありました。
調査2日目、夫は19時に退勤し、タクシーで再び雑居ビルに「帰宅」します。23時に出てきた夫の隣には女性がおり、手を繋ぎながら地下鉄の駅まで歩いて行きました。二人は何も言わず、静かで穏やかな関係であることがわかります。
帰宅する夫を見送ると、女性はコンビニに立ち寄り、ビールとおにぎりを購入して再び雑居ビルに入って行きました。
これは、関係が長く続いたカップルの行動そのもの。夫婦以上に一緒にいるから、会話をしなくても思いは通じ、多くの価値観をわかり合っている。肉体でつながっている以上に強固な関係を築いていることが多い。この二人を別れさせるのは手強そうだと思いつつ、順子さんに報告。すると「この女性、知っています。私たちの結婚式にも来た、夫の大学時の同級生です」と驚いていました。
順子さんは夫を呼び出し、「これはなに?」と迫ったところ、夫は驚きつつも「俺のシェルターがバレたか」と冷静に言っていたそうです。順子さんが詰め寄ると「家の居心地が悪いから、彼女のところにいた。オマエは仕事の話ができないし、口を開けば成績と妊活と不満ばかり。離婚はしないけど、接点を持ちたくない」と言い切ったとか。
夫も順子さんと実家にたくさんの不満を抱えていましたが、言ったら時間のロスが生まれると口にしなかったそうです。
夫は順子さんを「オマエは息子の母親として信頼している」とだけ言ったそうです。ショックを受けた順子さんが、「私のことを愛していないの?」と聞くと、「そういう問題はもう終わっている。オマエは自分のことしか考えていない。金はやるけれど、もう一緒にはいたくない」とまで言われたそうです。お前呼びが当然の夫婦関係なのかな、とちょっと気にもなりました。
「主人は小学校受験には反対だったそうです。家中に受験勉強の張り紙がされ、家でもマナーや行動に厳しいチェックを入れるなんて、おかしいと。受験勉強に辟易していたところ、同級生の女性にばったり会ったそうです」
夫は自分の状況を彼女に話すうちに、彼女に心惹かれるようになり、恋愛関係に。女性も離婚して数年が経過しており、人肌恋しいタイミングだったそうです。
「もう、8年近く、彼女の家に行っているんだそうです。彼女も仕事で出張が多く、留守中にペットのインコの面倒を見たり、家の掃除をしたりして、そっちの方が本当の家庭みたいだと言ったんです。主人は、私が受験や妊活のことばかり話していて、自分のことを見ていないのが悪い、と言ったんですよ」
順子さんは「こうありたい」と思う願望が強い。夫はそれに引きずられてしまったのかもしれません。
「私は東京育ち、主人は地方育ちで、“東京はこうだ”というマウンティングをするのも不満を抱えていたようなのです。私が、“それなら私と離婚して、女性の家に行けばいいじゃない”と言ったら、“彼女は別に俺と住みたいわけではない。向こうにも生活があるから同棲はしない”と言うんです。夫も女性もお互いに無責任すぎる」
順子さんは怒り心頭に達し、夫と離婚を提案。息子にも話してしまいます。そこで大きなショックだったのは、息子が「パパと暮らしたいい」と言ったことでした。
「あれだけ手塩にかけて育てて、毎日のお弁当作りを始め、生活の世話をしてあげたのに、私よりも主人がいいって、恩知らず!」
浮気そのものよりも、息子のこの言葉が一番の衝撃だったようです。
そんな順子さんに対して、夫は「冷静に、気長に考えよう。俺はオマエたちの面倒を最後まで見る。今のところ離婚は考えていない」と、3ヵ月程度の別居をすることを提案したそうです。さらに、英語が堪能な順子さんに「1ヵ月くらい、前から行きたいと言っていた、海外旅行でもしてきなよ」と提案したそう。順子さんは「私を追い出そうとして」と泣いていましたが、私はそこに夫の思いやりを感じました。
子育てを通じて、人間的に成長し、寛容になる人もいますが、「子供に幸せになってほしい」と願うあまりに、視野が狭くなってしまう人も少なくありません。夫はヒステリックな順子さんから逃れるために、女性の家にたびたび行っていました。しかし息子を連れて別居をすれば、夫が家事や息子の世話もするので、遅くなることはできません。女性との縁は次第に薄くなっていくはずです。
順子さんも、母になってから13年間、ひたすら自分を責め、息子に向き合い、小学校や中学校に合格させることばかり考えていました。しかしそれは息子が望んでいたことなのでしょうか。息子本人と向き合っていたのでしょうか。息子そのものを愛していると伝えてあげていたのでしょうか。
また、妊娠というのは奇跡のような授かりもの。コントロールをしたいと思っても、思いもかけないことが生じることも多くあります。もし妊娠しても、また早産になって早生まれになったら、また次の妊娠を狙うのでしょうか。生まれる前から受験をさせると決められている中、その子は幸せなのでしょうか。なにより、順子さんご自身は「子供の受験結果」によって幸せとなるのでしょうか。幸せとはいったい何なのでしょうか。
今、このタイミングで息子と離れ、一人の時間が増えたら、順子さんはきっと何かに気づくはずです。その結果が家族にとっていい方向に進んでいくと感じました。
受験は合否と幸・不幸を結びつけて語られることが多いですが、長い目で見れば、合格したからいい結果になると保証されているわけでもありません。なにより大切なのはどんな学校に行こうが、息子さんはそのままで十分愛される存在だということ。さらに自分の人生を自分で決断して生きる権利があるのです。親は子供に「示唆する」「提案する」ことはできても、息子の人生は息子自身が選べばいいのです。順子さんは、ご自身も母親から「GMARCH以上の人と結婚しろ」と言われて育ちました。そのことも影響しているように思えてなりません。順子さん自身、高学歴でなくても愛される存在だと思えていなかったのかもしれません。いまそのことに気づくことができれば、その先には、きっと希望があるはずです。
調査料金は25万円。(経費別)です。
東大卒の夫との子を高学歴に…小学校&中学受験のため「4月か5月出産」目指す妻の主張

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