鳥が鳴くような音、ガス会社の2人が点検に出向いた家で火災を食い止める…音の正体は?

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ガス会社の男性社員2人が、火災を食い止め人命を救助したとして、富山県東部消防組合から感謝状を贈呈された。
点検に出向いた魚津市内の住宅で火災に気付いた上司と部下。人生初の緊急事態に動転しながらも息の合った連携プレーが光った。(吉武幸一郎)
2人はガス会社「丸八」(魚津市)の社員、谷口浩之さん(50)と竹内唯翔(ゆいと)さん(23)。
火災があったのは6月27日午前11時半頃のこと。2人はなじみの高齢男性から、「ガスコンロの調子が悪い」と連絡を受け、魚津市上野(うわの)の男性宅に向かっていた。
ただ、家に近づくにつれ、鳥が鳴くような不思議な音が響いていることに気づいた。「変な鳥がいるもんだなあ」――。
2人は外から室内の男性に声をかけ、勝手口を使って家の中に入った。すると、リビングには白煙が充満し、まきストーブを中心に周囲の畳が燃えていた。鳥の鳴き声に聞こえた音は火災報知機の音だったのだ。
2人はすぐさま水を求め、火元から4~5メートル離れた炊事場に向かうと、洗いかけた5合炊きほどの炊飯ジャーの内釜が目に入った。谷口さんは119番するとともに、内釜に水を入れ、竹内さんと代わる代わる計4度水をかけて、初期消火に成功。延焼を防いだ。
同時に、火災に気づかず奥の部屋で横になっていた男性を外に連れ出した。消防によると、男性にけがはなく、病院にも搬送されなかった。
谷口さんによると、消火にあたったのは初めてで、脳内の整理が追いつかなかったという。
火を前にしながら「室内で勝手に水をまき散らしていいのか」と一時は戸惑った。
消防に連絡を取った際は、自身のスマートフォンがズボンのポケットにあったにもかかわらず、「スマホがない」と思い込み、竹内さんからスマホを借りた。さらには「119番」がとっさに思い出せずに焦ったという。谷口さんは「今考えれば信じられないが、慌てると頭が真っ白になるとは、まさにあのことだった」と振り返る。
7月18日に魚津消防署で感謝状を受け取った谷口さんは「あの日、点検に出向かなければどうなっていたのだろうか。本当にたまたまだが、命を救えてよかった」と喜んだ。竹内さんは「けが人も出ず、大きな火災にもならなかったのがよかった」と胸をなで下ろした。
2人の勇敢な行動に、魚浦康志署長は「迅速かつ適切な初期消火で功績は大きい。敬意を表したい」と賛辞を贈った。

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