’23年5月に知人男性をナイフで刺し殺人未遂・銃刀法剣類所持違反などで懲役5年6ヵ月の実刑判決が下ったA子(事件当時28歳)。現在は女子刑務所で服役中だが、身元引受人がおらず満期釈放を待つ身である。
そんなA子は「お母さんに手紙を書いていた。いつにも増して涙が出て、冷静でいられないから中断した」などと苦しい心境を書いた上で「母以外の第三者に向けて何かを書くというのも、とてもよい気分転換になっている」として筆者に取り留めない手紙を送ってくる。そこには被害者への謝罪の言葉ではなく、女子刑務所内の不満や諍いなどについて綴られていた。
今年3月6日に届いた手紙にはこうある。
《刑務所での1番の罰(?)とは、共同生活だと思う》としながら《まずもって、常識だとかデリカシーだとかの個人差。これがほぼ全ての元凶》だと明かす。
《例えば最近のトラブル。ちょっと(…?)がさつめのAさんがいたとする。Aさんがある日ポンっと私のいる雑居に転室してくる。Aさんは挨拶もなしに、前回の部屋のメンバーがいかにヒドイかを語り始める。(略)ある人はAさんを可哀想だと言う。また別の人はAさんを被害者ヅラと言う。私はその日の風呂で、Aさんにおしっこをひっかけられてイライラしている。》(’25年3月6日消印。手紙の原文ママ)
風呂場で排尿する癖のある人はいるだろうが、他人におしっこをひっかけるとは目を疑ってしまうような内容だ。A子によればAさんは50代だそうで、他にもこのような素行にイライラしていることを打ち明ける。
《私にとってAさんは、ワキガのくせにろくに体を洗いもしない奴 お風呂でおしっこをする奴 (略) 風呂場で菜々緒ポーズでマンコを見せてくるキモイ奴》
A子はAさんのその菜々緒ポーズをやめてほしいと咎めたようだが、なぜかやめないということも綴っている。
《下半身の穴という穴からものすごいニオイが…部屋で1度、「さすがにキツイからやめてくれ」と頼んだが、やめねえんだよなあ…。担当に相談し、先輩に相談し、1日中イライラし…シャワーの場所を変えてもらってようやく安心》(ともに3月6日消印)
A子いわく、そのAさんをめぐって、部屋のメンバーは険悪なムードになると言うのだ。A子がAさんの排尿問題について文句を言うと、それに対して「空気が悪くなるから言い方考えろ」とキレる人や「Aの方が年上なんだから」と言う人や、さらに「年齢は関係ない、刑務所ではA子の方が後輩だ!」などと、カオスな展開で大揉めするのだという。
誰も仲裁に入らないのが刑務所ならではということなのだろうか。かつて女子刑務所で勤務していた女性の元看守がこう語る。
「まず受刑者の特性としてIQ69以下の知的障害がある人は2割強で、さらに境界知能も含めると非常に高い割合に達するとされています。男女ともに社会生活の困難から罪を犯すケースがほとんどなので、そのような居室内や風呂場でのトラブルは目に浮かびます。菜々緒ポーズをしていた受刑者は、精神的な幼さゆえ嫌がらせでお尻を向けてスカッとしているのだろうと思います」
そんなA子自身も「IQ80ほどしかない」と言い、事件を起こす前に精神障害者保健福祉手帳を取得し一時期は生活保護を受けて暮らしていたこともあった。A子は身の清潔を保つことはできているようだが、Aさんのような体を洗わない不潔な受刑者も少なからずいるのだという。前出の元看守は言う。
「基本的にネグレクトや家庭崩壊した環境で育った受刑者が多いので、不衛生な方はとても多いです。体の洗い方を知らなかったり、排便後にお尻を綺麗に拭けずに臭っている方などもいます。指に生理の血がついてガビガビになっている方などもいました。我々は受刑者の健康維持のため衛生チェックで手を洗わせたりすることもありましたが、さすがに体の洗い方の指導はしません」
元看守いわく「まれに知的水準が平均値の方も罪を犯し服役しますが、まともな人ほど厳しい環境だと感じると思います」と言う。A子の手紙には謝罪や反省の言葉はほとんどないが、こんな言葉を綴ってもいた。
《刑務所は、他人を変える場所ではない。自分と自分の未来を変える場所だ、とよく言われる。自分の考え方次第で、気持ちよく過ごすことができる、とも。私はもう、修行かよ、と白けた気持ちになってしまう日が多々ある。んまあ修行みたいなもんだとは思うけど…。ちょっと受け入れることが難しくて苦戦している》(ともに3月6日消印)
刑務所は教育や作業を通じて更生と円滑な社会復帰を支援する場所であり、修行ではない。社会復帰のためには罪と向き合い反省することも大事だろう。A子にとっては自分自身ではなく罪と向き合い反省することが一番難しいことなのだろう。A子が心の底から反省し未来に目を向ける日が来るまで、あと1000日以上。心身ともに更生する日が来るのを願うばかりだ。
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