昨年末、さいたま地検に所属していた阿南健人元検事(35)が「不倫相手の女性に他人の前科情報を漏らした」として懲戒免職となった事件で、検察組織に衝撃が走っている。国家公務員法が定める守秘義務違反を犯したとはいえ、公務員が情報漏えいだけで「一発アウト」になるケースは珍しいためだ。
どうやら法務・検察当局が問題視したのは「情報漏洩」という行為そのものではなく、核心は別のところにあったとみられる。それは阿南氏が既婚者にもかかわらず、独身者向けのマッチングアプリを通じて知り合った交際相手に「独身」と偽っていたことが原因で、民事提訴されていたという点だ。
よりによって阿南元検事の妻も現役の検事で、その父親は日弁連の副会長を務めたこともある弁護士というから罪深い。
検事が職務上の行為で免職に至るのは、2010年に発覚した大阪地検特捜部による証拠改ざん・隠蔽事件の元主任検事や元特捜部長、同副部長以来だ。それだけの大事ゆえ、検察幹部も阿南元検事の処分を発表した昨年12月26日、「検察の信頼を大きく損なった」と謝罪した。
だが、警察や検察を含む公務員が情報漏えいで懲戒免職となるのは、主に「見返りに現金を受け取っていたケース」だ。2021年に兵庫県警の刑事が薬物事件に関する捜査情報を同級生に漏らした際は、停職3カ月の処分にとどまっている。今回のようなケースで懲戒免職となるのは、異例中の異例といえる。
では、今回の処分は「重すぎる」と言えるのだろうか。やはり、訴訟にまでいたったことが、大きく響いたのだろう。
冒頭で述べた通り、阿南元検事はマッチングアプリで知り合った女性に「独身」と偽りアプローチしていた。その後既婚者だったことがバレてしまい、当該の女性に訴えられた。全国紙記者が訴訟に至った末を説明する。
「その女性は、マッチングアプリのプロフィール欄に『既婚者の方はごめんなさい』と明記していたそうです。それでも、阿南氏は女性に対して何度も『独身』『既婚歴はない』と伝えて接近し、逢瀬を重ねた。その中で、女性があるトラブルを抱えており、阿南氏は女性とトラブルになっていた人物の刑事裁判の判決日や、判決内容などの前科を、付箋に書き写して渡していた、とのことです。
交際中、阿南氏は『その隣にずっといたい』『将来の話をしよう』といった、人生を共にするかのようなメッセージを送り続けていたそうです。もちろん、女性はそれを信じたわけですが、阿南元検事には妻子がいた。
それを知った女性は『望まぬ形で不倫に加担させられた』『性的自己決定権を侵害された』として、550万円の損害賠償を求めて裁判所に提訴。精神的ショックから適応障害を発症したとも訴えています」
阿南元検事は、女性に情報を漏洩した理由について「頼りにされたかった」と述べているという。
結局、妻子がいることがバレてしまい、相手に訴えられ「情報漏洩」も明らかにされてしまったわけだが、ここで、阿南氏が妻と結婚した5年前に時間を巻き戻してみたい。阿南氏の結婚は「検察夫婦」というニュース性もあってか、妻の地元・名古屋でも注目を浴び、愛知県の地元放送局「東海テレビ」が結婚式の模様を報じていたのだ。
ニュースの概要は以下の通りだ。
<名古屋城の正面に建つ名門ホテル「ナゴヤキャッスル」。1969年開業、皇室も利用した由緒あるホテルは、建て替えのため休館を控え、最後の時を惜しむ人々でにぎわっていた。
そのロビーで、ひときわ幸せそうな新郎新婦がいた。>
ここで、当時30歳だった阿南元検事とその妻が紹介される。妻とは司法修習生時代に出会い、彼の「一目ぼれ」から始まった恋だというエピソードに触れながら、この結婚式がコロナ禍で延期され、数カ月遅れで開かれたものであることがナレーションで伝えられる。披露宴のモニターには、こんな文字が映し出されていた。
<法律順守とコロナ予防を誓った結婚披露宴>
その後、新婦がこう締めくくり、ニュースは終わる。
「今日が人生で最高の1日です」
格式ある空間で、法律を守ることを誓い、ニュースとして取り上げられた若き検事が、後に「法律を破り」「家庭を偽り」「世間の信頼を裏切る」存在として報じられるとは、皮肉としかいいようがない。
阿南元検事が卒業した大学の公式サイトには、かつて彼自身が語った「キャンパスライフ」が掲載されていた。
法学部4年生の時、阿南元検事は友人にペンを貸す行為ですら契約が成立し、生活と法律は切り離せないという気付きがきっかけで法律に興味を持ったのだという。ボランティア活動にも熱心で、東日本大震災の被災地・宮城県石巻市では側溝の泥かきをしていたと明かしている。
そんな出身大学の校風が好きだと強調し、「おおらかで、がつがつしていない、でもやる時はとことんやる」とも語っている。大学生活を通じて人生観も変わったといい、「自分のペースで生きていい。自分のやりたいこと、行きたい道を自分らしく進んでもいいんだ」と思えるようになったのだとか。
そして将来の夢として、「優しいオヤジになりたい」と語っている。
「子どもに『俺のオヤジ、すげーんだぜ』と言われる人間になりたい。そう堂々と言えるようになりました」
後輩たちに向けたメッセージは、そんな言葉で締めくくられている。
「自分のペースで生き」「自分のやりたいこと」をやりすぎてしまった男の末路。検察という職に就きながら、なぜこんな簡単な「善悪の区別」さえつかなかったのだろうか……。
(ちなみに現在では、東海テレビの記事も出身大学の広報記事もネット上から削除されている。)
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