小学生を中心に、「シールブーム」が全国で再燃している。
平成時代にも流行したシールブームとは、シール帳と呼ばれるアルバムタイプのノートにお気に入りのシールを貼り付けて交換し合うもので、当時はお金さえ出せば自由に好みのシールが買えていた。しかし現在のブームでは、お目当てのシールを入手するための熾烈なバトルが繰り広げられている。
販売店舗ではトラブルが頻発、学校や警察が警戒を強める事案も起きている。前編記事『【令和のシールブームが過熱】「さっさとどけ!」「何枚も持っていくな!」飛び交う親の怒号、他人のカゴから盗む人まで…店舗スタッフが疲弊』につづき、令和の「シールブーム」の過熱ぶりを家族間のトラブルや子育てなどをテーマに執筆活動を行うライターの清水芽々氏が取材した。
熱中しているのが主に小中学生であるがゆえの問題も起きている。
「シールがきっかけとなったイジメ問題です」
そう明かすのは関東地方のある小学校の校長だ。
「シール交換に参加しないお子さんが仲間外れにされる現象が増えています。シール帳の学校への持ち込みは早い段階で禁止していますが、放課後や休日などの交流もシール交換がメインになっているため、シール帳を持っていない子は仲間に入れてもらえないんです」
かと言って、シール仲間同士の間でもトラブルが尽きない。
「希少なシールを自慢していた子が誹謗中傷されたり、交換したシールが正規品でなかったことから『詐欺師』呼ばわりされたり、『シールを交換する際に破損が生じた』『お気に入りのシールを強引に交換させられて精神的にショックを受けた』などから、損害賠償や慰謝料とった単語が保護者から出てくることもある。これはもう、子どもの娯楽として看過できない状況だと思います」
立体型シールの価格は安いもので200円前後、高くても500~600円だが、ネットなどではその10倍の価格で転売されていることもあり、とても小中学生のお小遣いではまかないきれない。
校長が続ける。
「そこで出てくるのが、親の財布からお金を盗んだり、パパ活まがいのことで稼いだりする犯罪行為です。市内の小学校でもここ半年で10件以上報告されています」
いずれも、家庭内での話し合いや厳重注意で済んだと言うことだが、前述のイジメを含め、重大事件に繋がる危険性も無いとは言えない。
筆者は「生活防犯課」に勤務する現役警察官にも取材したが、「シールを使った誘拐未遂事件」まで発生しているという。
「類似犯罪を防ぐためにあまり公にはしていませんが、公園などでシール交換をしている少女に『ボンボンドロップシール要る?』と言って接触しようとする声かけ事例が報告されています。大勢でいる場合は誰かしら危機感を持つので相手にしないことが多いようですが、少人数の場合は付いて行ってしまって車に乗せられそうになるなどの事案が起きています。言葉だけでなく、実際のシールを見せて誘い込むことも多く、通報によって身柄を確保された男性は『少女をおびき出すためにネットで購入した』と話していたそうです」
それでもシールブームは収まりそうにない。
小中学生だけでなく、社会人や若い母親など、平成シールブームを知っている年代に「ささって」いることもその一因であろう。
「前のブームの時は小学生で、お小遣いの範囲でしか買えなかったけど、今は自分の稼ぎで自由に買えるので楽しい」
子供ではなく、自身がシール集めに熱中しているというIT会社で勤務の女性(20代後半)はそう語る。この女性はSNSを駆使して、シールの買い回りをしているそうだ。
「今はどこのショップも予約や取り置きをしてくれないので、SNSで販売情報を見つけたら即出かけます。会社を早退したこともあるし、休んだこともあります。興味のない友人からは『無駄使い』と言われますが、グッズを買って推し活をしている人や流行のスイーツを食べ歩く人よりも全然コスパはいいと思っています」
幼稚園と小学校低学年、二人の娘がいるという30代の母親は、
「昔自分がそうだったから、娘たちがシールにハマる気持ちがすごく理解できる。昔よりもシールのデザインも可愛いし、キャラクターも豊富だし、特別高価というわけではないし、何より母娘で楽しめるからコミュニケーションツールとして重宝している」
と語る。「シールを優先的に入手するためだけに」今年から雑貨店で働き始めたという筋金入りのコレクターだ。
この他にも、
「子どもと一緒にお目当てのシールをゲットした時の達成感は何物にも代えがたい」
「楽しそうにシールで遊んでいる子どもたちの顔を見ると幸せな気持ちになる」
など、親子でシールブームを満喫している声も多かった。
ショッピングモールで取材中、フードコートで買ったばかりのシールを広げている母娘連れの姿を見かけた。
小学校低学年と思しき少女は何冊ものシール帳を並べて満面の笑みでシールを貼ったり剥がしたりしていたのだが、その横で40歳前後と見られる母親が頬杖をついたまま「アンタ、飽きたらそれ(大量のシール?)どうするの?」と苦笑いで聞いていた。
令和のシールブームはいつまで続くのだろうか。
こちらもあわせて読む『「サイゼリヤすら県内ゼロ」の高知県で、半世紀以上も君臨し続ける「ローカルチェーン」の正体』
【あわせて読む】「サイゼリヤすら県内ゼロ」の高知県で、半世紀以上も君臨し続ける「ローカルチェーン」の正体