日本が再び世界と闘うためには、自動車産業を復活させる以外にない。そして、そのための選択肢は1つしかないのだ。緊急提言がここに。
日本の自動車産業に大きな変化の波が襲い掛かっている。’25年1~6月の世界市場における新車販売台数で、トヨタ自動車は1位の座を死守したが、ホンダ(9位)と日産自動車(11位)が中国のBYD(7位)と浙江吉利控股集団(8位)に追い抜かれた。
BYDは’26年夏に軽EV(電動自動車)「ラッコ」を日本市場に投入する。日本市場専用に設計した車で、同社にとっては初の海外専用モデル。今秋に開催されたジャパンモビリティショーで初披露した。
軽自動車は国内市場で今や4割を占める存在。そこにBYDが殴り込みをかけてくるのだから「軽の王者」スズキもだまっていられないだろう。軽EVのコンセプトモデルを展示の中心に置き、迎え撃つ姿勢を前面に出していた。
BYDはタイで新工場を建設。トルコやハンガリーでも現地生産を始める計画で、欧州市場攻略にも動いている。また、浙江吉利は、中国などで「ジーリー」のブランドで知られる吉利汽車を持つほか、世界で買収戦略を進め、傘下にスウェーデンのボルボやマレーシアのプロトンなどを抱えている。
日中の政治的な対立のニュースの陰で、中国の自動車メーカーは世界戦略を着実に強化している。すでに東南アジア市場に攻め込んで日本車のシェアを奪い始め、日本メーカーにとって大きな脅威となりつつある。東南アジアを収益源とする三菱自動車はタイで乗用車を製造する第3工場の休止に追い込まれたほどだ。
「リストラを着実に進めて車の知能化で業界のリーダーになる」
日産は12月10日、英国の新興AI企業で自動運転に強いウェイブ・テクノロジーズと「次世代プロパイロットシステム」を幅広い車種に搭載していく協業契約を結んだと発表。その記者会見で日産のイヴァン・エスピノーサ社長はこう語った。
日産の「プロパイロット」システムとは運転支援技術のこと。次世代システムではウェイブ社の技術を使って無人運転も可能なレベルにまで引き上げる。
日産はその試作車を今年9月に一部メディアに公開。筆者も試乗したが、銀座の裏路地で人や自転車、車などが混在する複雑な道路環境の中を手放しで、かつよそ見をしていてもすいすいと進んだ。これなら読書しながらでも運転可能だ。
日産はこうした車を’27年度から国内で販売し、その後北米市場などに展開する計画だ。今後、新技術を利益にすることができるのかが今の日産には問われている。
日産の足下の業績は回復の兆しが見えない。11月6日に発表した’26年3月期中間決算で、営業損益は前年同期329億円の黒字から、277億円の赤字、同じく最終損益も192億円の黒字から2219億円の赤字にそれぞれ転落した。「トランプ関税」の影響が営業利益を1497億円押し下げたことに加え、主要市場で軒並み販売台数を落とし、7・3%減の148万台にとどまった不振が響いた。
「トランプ関税」の税率が確定したため、自動車各社は’26年3月期の通期での業績見通しを開示しているが、日産だけが最終損益を「未定」としている。これについて最高財務責任者(CFO)のジェレミー・パパン氏は「『Re:Nissan』を見極めているため」と説明した。
「Re:Nissan」とは日産が今年5月に発表した経営再建計画。
’27年度までに全社員の15%に相当する2万人の削減や、世界にある17車両工場のうち追浜工場(神奈川県横須賀市)など7工場を事実上閉鎖する大リストラを行う。
ただ、CFOの発言からは、いまだにリストラの内容や規模が明確に定まっていないために特別損失などの額が正確に算出できず、最終損益を未定にしたと受け取ることができる。
あるアナリストは「日産の収益状況は5月時点からさらに苦しくなっているので、追加のリストラ策が必要になるだろう」と見る。
こうした状況を打破するためにも、日産を支える金融筋からは「日産の経営の在り方を抜本的に変えることが必要。そのためにはホンダとの協業を推進し、再び経営統合に向かうしかない」との声が強まっている。
しかし、そのホンダも急激に業績が下降し始めている。’26年3月期中間決算におけるホンダの四輪事業は、営業損益が前年同期の2580億円の黒字から730億円の赤字に転落したのだ。営業赤字額は日産よりも大きい。
世界販売も5・6%減の168万台。国内や欧州、アジアで販売を落とした。「トランプ関税」の影響で営業利益が1643億円押し下げられただけでなく、EV事業見直しによる損失引当などが中間期で2237億円も発生したことが響いた。
藤村英司CFOは「一過性のもの」と説明した。しかし、ホンダはすでに3兆円近くEV関連に投資しており、「今のEV市場の冷え込みから損失引当が今後も続く可能性がある」(アナリスト)との見方も出始めている。
ホンダ全体の営業利益は41%減の4381億円と黒字を確保している。結局、今のホンダの経営は二輪事業が稼ぐことで、四輪の赤字を埋める構図になっている。
後編記事『トヨタ以外の自動車メーカー消滅の危機へ…生き残る道はこれだけ「日本&台湾4社連合」が唯一の希望か』へ続く。
「週刊現代」2026年1月5日号より
【つづきを読む】トヨタ以外の自動車メーカー消滅の危機へ…生き残る道はこれだけ「日本&台湾4社連合」が唯一の希望か