NHKテレビとNHKラジオの「日曜討論」(日曜・前9時)が2日、生放送され、多発するクマ被害の影響と対策について議論された。
NHKの調べによると、今年4~10月にクマによる人身被害は全国で195人(うち死亡は過去最多の12人)に達しており、中でも秋田の56人、岩手の43人が突出している。リモート出演した秋田県の鈴木健太知事は、以下のように現状を報告した。
「人身被害は一昨年の70人超えより少ないが、目撃件数は8000件を超えている。これまでは考えられなかったが(秋田市など)街中のどこにでも出る状況。住民の皆さまは恐怖におびえながら暮らしている。ドアを開ければいきなりいる可能性もある。通学路の子供さんも、送迎やスクールバスの対応が追いついているわけではない。農作業も、今年の秋の収穫を諦めた方がいる。毎日無事を祈りながら暮らしている」
秋田、岩手の両県で人身被害が突出しているのと比べると、他の都道府県は比較的に被害が少ない。3番目に多いのが福島の19人で、長野15人、新潟13人、群馬10人、山形8人と続くが、近畿以西では5府県7人の被害にとどまっている。その理由を、NPO信州ツキノワグマ研究会代表の岸元良輔氏が以下のように説明した。
「今年は東北地方で非常に多い。(クマのエサとなるドングリは)東北地方はブナが中心で、中部地方から西はどちらかというとナラ。ブナは全国的に凶作だが、ナラ類は地域によってばらつきがあり、必ずしも凶作ということはない」
つまりブナとナラの分布の違いが、東北での突出した被害増につながっていると指摘した。
さらに鈴木知事は、秋田県民以外にも「あすは我が身だと思っていただきたい」と警告し、以下のように述べた。
「(今年より被害の多かった)2年前よりクマの行動が大胆になっているということから推測すると、今年は東日本全般に広がりましたが、あすは我が身と思っていただきたい。クマは学習しているなと感じる。2頭の子グマを連れた(母クマとの)3頭セット(の目撃情報)が多い。一度人里に来てエサにありつければ、2、3年後(子グマが)成長すると、より大胆に出てくることが、どこの県でもあり得る。歯止めをかけるために国として抜本的な対策を取っていくことが極めて大事」
そのために必要な対策として
・人とクマとのすみ分け
・ガバメントハンターを警察官が務めることと、そのための法改正
・AIカメラやドローンなどの監視体制の構築と予算措置
以上3点が必要だと強調した。さらに「クマはクリやカキの木に集まってくるが、所有者不明の土地の木は簡単に伐採できない。緊急的にクマの出没を抑制するため、伐採に関する規制緩和を求めたい」と国に要望していた。