〈《アルコ&ピースも驚愕》「ずっと店の指名ナンバーワンを張っていた」意地でも就職したくなかった学生が海外を放浪するために飛び込んだ“ヤバいアルバイト”〉から続く
『ワイルドサイド漂流記 歌舞伎町・西成・インド・その他の街』を刊行したルポライターの國友公司さんが、人気Podcast番組「アルコ&ピースの#文化人が1番やばい」に登場!
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危険な海外放浪や、夢に出てくるほど個性的だったアルバイト先の常連客についてお聞きした前半に続き、盛り上がりすぎて延長戦となったトークの後半ダイジェストをお届けします。
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アルコ&ピースのお二人、國友公司さん。
平子 大学卒業後に就職が決まらず、作家・草下シンヤさんの「西成へ行け」という命を受けて西成に向かう――というところまでお聞きしました。そもそも草下さんとはどういうお知り合いだったんですか?
國友 学生時代に仕事をしていた雑誌の編集者さんに「就職が決まらなかったです」と相談したら、「草下さんがいる彩図社という出版社に手紙でも書いてみたらどうか」と言われまして。それで手紙を書いたら、草下さんからいきなり電話がかかってきて、「面白そうだから1回うちにおいで」と。「就職決まった!」と思って行ったんですけど、後日「手紙なんかで就職決まるわけねえだろ」って言われました(笑)。

平子 確かに(笑)。
國友 「面白かったら本にするから、まず西成に行ってこい」と。
平子 よりディープに、つぶさに研究しないと、という気になりますね。それで西成に飛んだわけですね。
國友 ライターとしての仕事もないし、お金もなかったので、とりあえず働こうと。西成にある解体現場、いわゆる「タコ部屋」に入りました。
酒井 うわぁ~すげぇ。

平子 住居は約束されてるわけですね。どういうお住まいだったんですか?
國友 はい。個室でテレビもあって、意外といいなぁと。日給1万1000円で、そこから部屋代と3食分の食費で1日3300円が天引きされていました。1ヶ月みっちり働けば月20万くらい貯金できる計算なんですけど……できてる人は1人もいなかったですね。
平子 何に使っちゃうんですか?
國友 酒、タバコ、ギャンブルですね。給料の前借り制度があるので、みんな前借りして、その日のうちに使い切っちゃう。
平子 僕も解体の仕事をアルバイトでやっていたことがあるんですけど、しんどいじゃないですか。どうでした?

國友 僕は精神的にしんどかったです。とにかく鈍臭くて、ネジをどっちに回せばいいかすら分からなくなって、「締めろって言ったのに緩めてるじゃねえか!」ってめちゃくちゃ怒られました。
酒井 めっちゃ怒られそう、それ(笑)。
國友 すぐに「出来損ない」のレッテルを貼られて。途中からは、現場から出ていくダンプカーのタイヤを高圧洗浄機でひたすら洗い続ける仕事になりました。
平子 それはラッキーじゃん(笑)。

國友 でも、8時間労働のうちダンプカーが出ていくのって10回くらいしかないんですよ。だからほとんどの時間、突っ立ってるだけで、みんなに「ウォーターボーイ」って呼ばれてめちゃめちゃいじられてました。
酒井 ウォーターボーイ!(笑)
國友 精神的には苦痛でしたね。
平子 そして次は、『ルポ歌舞伎町』執筆のために歌舞伎町の通称“ヤクザマンション”に住まれたと。
國友 これも草下さんに「次、ヤクザマンション住んで」って言われて(笑)。住む直前に、そこを舞台にした『殺し屋1』っていう漫画を読んだら、人が針で吊るされて熱した油をかけられてるシーンがあって、「こうなるのは嫌だな」と(笑)。

平子 実際に住んでみてどうでした?
國友 朝8時にマンションを出ると黒いアルファードが並んでて、見るからにカタギじゃないスーツの人たちが「おはようございます!」って親分を迎えているところは何回か見ました。ただ、住んでるだけでは特に何も起こらないので、途中から歌舞伎町全体を取材する方針に変えました。ヤクザじゃないけど非合法なことをしている人とも仲良くなったりしながら本を書きましたね。
平子 言える範疇で言うと……?
國友 違法な風俗スカウトとかですね。実際にスカウトすると犯罪になるので、研修だけ受けて辞めましたけど。「ここは〇〇組の縄張りだから声をかけるな」とか、「ここは私服警官がいるからダメだ」とか、いろいろ教わりました。
平子 マジで『新宿スワン』じゃん!
平子 さらに、2ヶ月間の路上生活も体験されたんですよね。食べものはどうしてたんですか?
國友 食費は1円もかからなかったんです。炊き出しがすごいんですよ。東京だけで週に150回以上あって、スケジュール表を片手に炊き出しをハシゴするツアーを組んでる人たちもいました。
平子 タイミングさえ合えば腹パンパンにできるんだ。
國友 お金は7000円持っていったんですけど、最終的に増えました。

酒井 え、なんで?!
國友 転売ヤーの手伝いをしたからです。ホームレスの人たちが、原宿のSupremeやポケモンカードの行列に並んで日当をもらう。1日行くと5000円くらい稼げるんです。誰がどう見ても(本来は)買う人じゃない集団なんで、周りからは白い目で見られてましたけど。
平子 なるほどなぁ~。
國友 あとは行政から公園の掃除の仕事をもらえたりもするので、実は月7~8万くらいの収入がある人もいる。食費はタダなので、全然生きていけるんですよ。
平子 2ヶ月続けてみて、この後も続けられそうでしたか?
國友 いけますね。終わった後も、懐かしくなってたまにやってます。独特な世界なんですよね。

平子 貴重なお話をありがとうございました。國友さんのご著書『ワイルドサイド漂流記』には、今日お話しいただけなかったことも含めて、もっとディープな話が書かれているということですので、皆さんぜひ。
國友 はい。「ピー」を入れずに書いていますので、ぜひ読んでみてください。
文=國友公司・アルコ&ピース撮影=佐藤亘
(國友 公司,平子 祐希,酒井 健太/ライフスタイル出版)