大阪・道頓堀の飲食店が入るビル2棟で18日午前、火災が発生し、消火活動に当たっていた消防隊員2人が死亡した。外国人観光客でごった返す繁華街で何が起きたのか――。元東京消防庁消防官で、防災アナリストの金子富夫氏が建物内に隊員が取り残され、命を落とした原因を分析した。
火災が起きたのは、江崎グリコの看板で知られる戎橋から約100メートル東の道頓堀川沿いに立つ5階建てのビル。午前9時50分ごろ、119番通報があり、出火元は不明で、隣接する7階建てのビルに火は燃え移った。
約9時間後に消し止められたが、5階建てビルの地下1階から3階、7階建てビルの5、6階の計100平方メートルが燃えた。消防隊員5人と女性1人の計6人が救急搬送されたが、市消防局の森貴志さん(55)と長友光成さん(22)が亡くなった。2人は7階建てビルの5、6階部分が崩落した際に閉じ込められたとみられ、6階で発見された。
金子氏は火災状況をこう分析する。「5階建てビルの地下1階から2階までは焼き肉店のテナントが入っていて、油性の火炎で燃え方が激しく、先端の火が隣のビルに延焼したとみられます。道頓堀側には多数の看板があったことで、より燃え広がった可能性があります」
7階建てビルの1階にはラーメンチェーンの「一蘭 道頓堀店本館」のテナントが入り、2、3階部分に設置された看板は一部が燃損。5階建てビルの壁面も全体的に看板があったが、焼け落ちたとみられる。
2人が亡くなった6階では何が起きたのか。
「爆発的に延焼するフラッシュオーバー現象が起きていたのではないか。一酸化炭素が急激に増え、上階に行けば行くほどたまりやすい。消防隊は逃げ遅れた人がいないかを確認するために人命救助、検索の必要があります。5、6階でフラッシュオーバーによる建物内の崩壊が発生し、隊員は逃げ遅れたか、一酸化炭素を吸い込んでしまった可能性がある。濃厚な一酸化炭素は一呼吸、二呼吸で気を失い、亡くなってしまいます」
救助活動は危険と隣り合わせで、総務省によれば、消防隊員の殉職は2023年は4人、昨年は1人で、火災が原因だったのは1人だった。大阪市の横山英幸市長は「痛恨の極み。一刻も早い消火のために取った現場対応の結果、不測の事態となった。不幸な事故で終わらせずに再発防止に努める」と沈痛な表情を浮かべ、調査委員会を設置し、対応が妥当だったかを検証するとしている。