知床国立公園(北海道)内で「ヒグマへの餌付けが疑われる事案」が発生したとして、知床半島の自然環境の調査や自然保護の啓発活動をする公益財団法人知床財団が、2025年7月30日にXでこうした行為はしないよう注意喚起した。
知床財団は、ヒグマに餌付けをするとヒグマの行動がエスカレートしていき、車を傷つけたり人を襲ったりする事態にも発展する可能性があると、その危険性を説明した。
知床財団によるヒグマの情報を発信するXアカウント(@bear_shiretoko)は、車内からヒグマにスナック菓子を与えていた人がいたとの目撃情報があったとして、「このような行為は多くの人を危険にさらしますので絶対にやめてください」と呼びかけた。
8月1日にJ-CASTニュースの取材に応じた知床財団の担当者によると、事案が発生したのは7月29日で、30日に財団に観光客から情報が寄せられた。目撃者によると、渋滞で止まっている車の窓から、子どもがスナック菓子を投げた様子だった。その近くにはヒグマがいたという。ヒグマが菓子を食べたかどうかは不明だが、担当者は状況から「おそらく食べたのではないか」とした。30日に財団の職員が現場を訪れたが、スナック菓子はなかった。
なお、知床国立公園にいるヒグマはこの時期、道路際にある蟻の巣を探すために道路に出てくることがよくあるという。
なぜ、ヒグマに餌を与えることが危険につながるのだろうか。
知床財団の担当者は、「本来ヒグマは、人を見てすぐに襲ってくる動物ではない」と説明する。しかし、人間が与える餌はヒグマにとって「ご馳走」だといい、1度覚えてしまうと、餌を求めてまたやってくるという。
そのため知床財団では、「人と食べ物を関連づけないために、餌をやらないでください」と発信していると説明した。
また、前出の担当者は、7月にヒグマに襲われて男性が死亡した福島町で、ヒグマがゴミ箱をあさっていたとの通報が相次いでいると報じられたことにも触れた。
ヒグマは、「この場所に行けば餌がある」と分かると「何度でも来ます」という。その場所にある食べ物は「自分のもの」と認識しているため、たまたま人が居合わせてしまうと、食べ物を守るために攻撃する場合もあると説明した。「人が介在する食べ物には絶対触れさせないというのが、1番の安全策と思っております」とした。
ヒグマに出会ってしまった場合にはどうすればよいのか。前出の担当者は、あくまでヒグマに限った場合だと前置きしつつ、「基本的に人見たら避ける動物なので、慌てずにゆっくりとその場立ち去るというのが1番の基本」とした。