「医療利権の闇を知ってしまった今、黙っているわけにはいきません!」
参院選最終日、都内で行われた参政党の「ラスト街宣」。ステージの候補者はそう絶叫し、聴衆には異様な熱気が漂う。独自路線で躍進した参政党だが、見過ごせないのが豊富な資金力だ。’23年の収支報告書によると収入は約13億円に及ぶ。
同年9月の「参政党FES」では、約1億4000万円の収入を得た。イベントは’25年5月にも開催。約2000人が収容可能な会場で、最前列の「SS席」は20万円と高額だが、売り切れに。まさに「ぼろ儲け」だ。
「タウンミーティングでもTシャツなどのグッズ販売が推奨され、売り上げの大半は本部へ上納されます」(参政党の元近畿ブロック長・出原秀昭氏)
身銭を切り、党に貢献する熱狂的な支持者はどう生み出されるのか。背景にあるのが冒頭のように感情に訴え、「真実」を共有し、仲間意識を高める手法だ。参政党の元公認候補・太田勝規氏は「マルチ商法に似ていると言われていた」と語る。
マルチ商法(ネットワークビジネス)では、販売員が新しい販売員をねずみ算的に勧誘し、商品の販売を拡大する。集会では販売員が成功体験を熱弁し、組織内で「ストーリー」を共有。モチベーションを高め、販路拡大につなげるという。
「初期の参政党には『党員バッジ制度』があった。ダイヤモンド党員、ゴールド党員などと獲得党員数に応じたランク付けをし、『支部長に申請できる権利』といった特典を付与するシステムでした」(太田氏)
参政党は昨年4月、〈所属議員1名がネットワークビジネスに関与〉と報告し、懲戒処分にしたが、それを容認する土壌があったとの見方は根強い。
「歴史学者・倉山満氏は、親しかった参政党の神谷宗幣代表(47歳)から『陰謀論、ネットワークビジネス、そういうものを許容しないと(党の)広がりが無い』と言われ、関係を断ったと明かしています」(参政党関係者)
さらに、神谷氏の側近・川裕一郎副代表は今年5月まで公式HPに〈ジョージタウン大学日米リーダーシッププログラム修了〉と記載。ネットワークビジネス大手・アムウェイのHPによると、同プログラムは同社の理念を伝える目的で提供しているという。参政党は「(アムウェイは)正しくは『協賛』です。主催はジョージタウン大学及びジャパンタイムズ」などと回答した。
参政党は今年、政党交付金だけでも約9億円を得る見込みだが、取り扱いを巡っては懸念点もある。筆者は参政党が山形支部へ交付した約320万円が、支部側の収支報告書で不記載だった問題を報道。調査を進めると、さらなる問題を発見した。
’22年に参政党は佐賀支部に、約319万円の交付金を支出。だが、支部側で確認できるのは約22万円のみ。また、和歌山支部への交付金は約674万円だったが、支部側の記載は約540万円とやはりズレている。山梨支部には約730万円の交付金があったが、支部側には約320万円のみが書いてあった。合計約840万円の差額は一体どこへいったのか?
参政党に7月28日に質問状を送付すると、翌日になって「正式な回答は、必要な精査を経たうえで、ご報告いたします」と回答した。
筆者が「いつまでに回答をいただけるのか?」と尋ねると、「国会も開会するため来週いっぱいかかる見込みでございます」と返事がきた。
正式な回答が届きしだい、詳報するが、参政党の収支報告書についての質問にもかかわらず、回答までに2週間を要するのは極めて異例だ。
そこで、「なぜそれほど時間がかるのか? 収支報告書を訂正してから回答をするのか?」と聞いたが、返事はなかった。
政治資金問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が指摘する。
「政治資金規正法違反(不記載)の疑いがある。差額が裏ガネ化している可能性もあります」
「政治とカネ」の問題は致命傷になりかねない。
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かわの・よしのぶ/’91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している
「週刊現代」2025年08月18日号より
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