2日、埼玉県行田市で作業員4人が下水管の点検中にマンホールに転落した。その後、4人とも救出されたが、全員の死亡が確認された。
【映像】なぜ「4人も」亡くなったのか?
今回の事故はなぜ起きてしまったのか? なぜ4人も亡くなってしまったのか? 事故を防ぐことはできなかったのか? テレビ朝日社会部の阿部佳南記者に聞いた。
━━事故原因の一つとして「硫化水素」の可能性が指摘されている。この硫化水素とはどのような物質なのか?
「硫化水素は、無色で空気よりも重たい有毒ガスで“卵が腐ったような腐卵臭”がする。火山周辺の温泉などで排出されるが、ビルの下水槽、どぶ川、下水溝などからも排出される。硫化水素の中毒には嗅覚の麻痺、眼の損傷、呼吸障害などがあり、死に至る場合もある。この中毒の怖いところは気づかずに中毒になるケースも多い点だ」
━━現場で作業員はどういった作業をしていたのか?
「現在、半年前の埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、県内、そして全国でも下水道管の内部状況の点検が進められている。そして、今回現場となった下水道管の中でも腐食が見つかり、状況を詳しく調べるために内部の清掃作業を行っている中で事故が起きてしまった」
━━今回、安全帯とマスクの着用はなかったというが、作業員に着用義務はなかったのか?
「市によると、下水道管の中で作業する時に酸素が欠乏する恐れがある場合、ボンベや地上から空気を送ってもらう送気マスクをつける規則があるという。だが、消防に話を聞いたところ、当時、少なくとも地上から空気を送っている様子はなかったという。一方で、業者によると、最初に作業開始時に測った際には基準よりも下の数値が検知され、それを受けて作業を始めていたという」
━━急に濃度が上がったのか?
「今回、4人の男性が亡くなっているが、最初に転落したのは一人だった。その男性がマンホール内に落ちた時に下水道管の水に溜まった泥がその衝撃で撹拌され、硫化水素などの有毒なガスが充満してしまったとも考えられる」
━━八潮の道路陥没事故と今回の事故に共通点はあるか?
「八潮も今回の行田市も、どちらも比較的大規模な下水道管の中での事故であり、どちらの下水道管の周辺でも管の中に腐食が見つかっている」
━━マンホールはどのくらい深さがあったのか?
「今のところ、地下14メートルから15メートルほどに下水道管が設置されていたと見られている。つまり、男性がどの場所から転落してしまったのかは定かではないが、10メートル以上の高さから叩きつけられてしまった可能性もある」
━━なぜ今回は4人全員がマンホールの中に落ちてしまったのか?
「今回、市から受注を受けた業者が作業を行う際に両者の間で命綱や有毒ガスの対策について規則に則って互いにしっかりと守るというコンセンサスが取れていたという。ではなぜ、今回のような事故が起きてしまったかと考えると、業者から現場に安全管理の情報が提供されていたのか、あるいは現場には伝わっていたものの『全員』への共有が不十分だったとも考えられる。また、一人が落下した後の対応については業者が提供した資料から考えられる。一人が落下した後、助けるために次々と中に入ってしまった、あるいは冷静な判断をするべき監督者によってしっかりと連携を取れず各自が個人行動をしてしまったのかもしれない。そうでなければ、1人がマンホールの外で見張るなど、役割分担ができた可能性もある」
━━どのような対策をするべきか?
「当日も気温が非常に高かったため、例えば熱中症で気絶して落ちてしまった可能性も否定できない。このように、その時、作業員の方に一体何があったのかをしっかりと解明すること、その上で作成したガイドラインがなければ今後全国で行われる補修工事・点検作業において業者の方々が勇気を出して作業にあたることが難しいだろう」
(ABEMA/ニュース企画)