「本当に最悪でした。誰にもお勧めしません」
沖縄県の今帰仁村に2025年7月25日(金)にオープンした新テーマパーク「ジャングリア沖縄」。事前の華々しい宣伝とは裏腹に、実際に訪れた来園者からは厳しい声が相次いでいる。オープンから6日目の30日(水)に現地を訪れた田中さん(仮名・30代女性)の体験を通じて、この新施設が抱える深刻な問題点を検証する。
「正直、行く前からGoogleレビューやSNSでの評価が軒並み低くて、『乗り物に乗れなかった』という報告ばかりで不安でした」と田中さんは振り返る。「でも、せっかく沖縄旅行の計画を立てて、チケットも購入済みだったので、『何だかんだ言っても楽しめるだろう』って思って行ったんですよね」
しかし、その期待は入園と同時に打ち砕かれることになった。
「9時半くらいに着いたら、理由は分からないのですが既にゲートが開いていてお客さんが入り始めていて、するする進むので私たちも午前10時の本来の開園時刻に入場できました。それで、すぐにアプリで整理券を取得しようとしたんです。そしたら、もう全てのアトラクションで整理券の配布が終了してたんですよ。まだ10時なのに」
田中さんの困惑は深刻だった。園内のアトラクション数は実質的に10程度しかなく、そのうち整理券を配布しているのは5つ程度。さらに、当日は少なくない数のアトラクションが運休状態にあり、実際に稼働しているアトラクションは極めて限られていた。
なぜそんなことが起きたのか。
「USJのようなプレミアムパス制度があるんですけど、これがプレミアムパスを購入していない一般客にとっては本当に厳しいんです」と田中さんは説明する。
通常の入園料に加えて追加料金を支払うことで、アトラクションに優先的に乗車できるこのシステムが、一般来園者にとって大きな障壁となった。
「プレミアムパスの人でアトラクションの結構な数の枠が占められていて、一般の整理券で利用できる枠がすごく少ないんだと思います。だから開園から10分くらいで全部なくなっちゃう現象が起きているのかと」
各アトラクションの回転率の悪さも問題に拍車をかけている。「『スカイフェニックス』とか体験型のアトラクションは時間がかかるから、1日で200人くらいしか乗れないんじゃないかな。他のアトラクションも時間がかかる上に、しょっちゅう止まってたから、実際はもっと少ない。だからそもそも全体のアトラクションのキャパが少なすぎると思います」
プレミアムパスを購入していない田中さんに残された選択肢は極めて限られていた。
「並べる乗り物は、ダイナソーサファリ、バギー、気球、やんばるフレンズの4つなんですけど、気球は終日運休でした。天気が良い日で風もたいして吹いていなかったのに運休って…じゃあ、いつなら稼働できるんだろうと思いました」
最も人気の「ダイナソーサファリ」の状況は過酷だった。「午前10時20分の時点で既に220分待ちって表示されてたんです。4時間近い待ち時間ですよ。しかも、待ち列に屋根がないから、炎天下でずっと立ちっぱなしなんです」
田中さんは苦笑いを浮かべながら続ける。「沖縄の強い日差しの下で4時間立ち続けるなんて、体力的に無理ですよね。特に子供連れの家族なんて絶対無理だと思います」
さらに問題なのは悪天候時の対応だ。「雷雨とかで一時避難になったら、それまでの待ち時間が無駄になっちゃう可能性が高いんです。そんなリスクを考えたら、とても並ぶ気になれませんでした」
アトラクションの状況とは対照的に、園内の飲食施設については田中さんも評価している。
「レストランは良かったんです。本格的なアクアパッツァとかもあって、味は本当に美味しかった。2800円くらいで、テーマパークの中としては妥当な値段だと思います」
キッチンカーについても好印象だった。「かき氷やスイカとかの軽食も充実してて、味も良かったです。レストランのスタッフの接客も非常に良くて、この点は運営側の努力を感じました」
ただし、レストランも混雑は免れなかった。「アトラクションに乗れない人がみんな食事に流れるから、レストランでも結構待ちましたね。でも、アトラクションと比べたら現実的な待ち時間でした」
早めのランチを終えた田中さん。せめて何か乗ろうと唯一60分待ちだった子供向けアトラクション「やんばるフレンズ」に並んでみる。しかし、すぐに全く進まなくなり何事かと思っていると約30分後「ただいまシステムが原因で停止しております」とアナウンスが…。まったく無駄な30分を過ごすはめになり、さらにここから炎天下で60分待つことは無理と判断。まだ14時過ぎだったが共通チケットを購入していた隣接するスパ施設に移動する。が、ここでも期待は裏切られた。
「スパ施設は温泉形式で、事前に期待してたインフィニティプールで水着着用っていうのはできませんでした。これはCMなどから勝手にプールと勘違いしていた私も悪いですが…。施設全体の規模も想像してたよりはるかに小さくて、洞窟風呂もHPの写真と違って全然広くなくて、2人でいっぱいになっちゃうくらいの狭さです。そもそも『世界最大のインフィニティ風呂』って謳ってるけど、そんなに驚くほど大きくもないんですよ。「インフィニティプール」ってくくりだともっと大きいところがいっぱいあるので「インフィニティ風呂」なのかと。間違ってはいませんけど勘違いさせる前提の宣伝に感じます」
景観についても厳しい評価だった。「HPと違って実際の眺望は期待を大きく下回りました。前に山が見える程度で、特別感動するような景色じゃない。普通のスーパー銭湯と比べても、特に優れた点は見当たりませんでした」
コストパフォーマンスについては辛辣だった。「スパだけは良かったという投稿も見ましたが、日ごろからスパに良く行く私的には2400円でこれは正直厳しい。アメニティが豪華だったりお洒落だったりするわけでもないし内装も普通。沖縄まで来て、高い交通費払ってまで利用する価値があるかって言われたら、ないと思います」
散々な体験に終わったジャングリア沖縄。数日経っても怒りが収まらない田中さんが最も問題視するのは運営体制の不備だ。
「一番の問題は、入園者数とアトラクションの処理能力が全然合ってないことです。デジタルチケット制なのに、適切な入場制限をしてない。1日に数千人しかアトラクションを体験できないのに、それを大幅に上回る人を入園させてるんです」
園内の案内についても不満を述べる。「マップの表示が不正確で、待ち時間の情報も実際と全然違うことが多い。園内で迷子になったり、正確な情報が得られなかったりすることがしょっちゅうありました」
基本的なインフラの不足も深刻だった。「トイレの数が少なくて、一部は警察の指導という理由で1時間くらい使用停止になっていたりして、そこから一番近い別のトイレを聞いたら『エントランスの方まで戻ってください』と言われて漏れるかと思いましたよ。あと休憩スペースも足りなくて、多くの人が階段や地面に座り込んでいる状況でした」
田中さんは改善点について具体的な提案をする。
「まず、すぐにでもやるべきは入場制限です。現在のアトラクション処理能力に見合った入園者数に制限して、来園者が確実にアトラクションを体験できる環境を作るべきです」
ハード面の改善も重要だと指摘する。
「待ち列への屋根の設置は急務です。沖縄の気候で屋外での長時間待機は現実的じゃない。あと、アトラクション以外で楽しめるコンテンツも必要です。“乗り物に乗れなければ何もすることがない”っていう状況は、テーマパークとして致命的ですよね」
最後に田中さんは、今回の体験を総括する。
「そこまで期待を抱いて行ったわけではないですが、実際の体験は更に下回るものでした。朝から入園して一つもアトラクション乗れない状況っておかしくないですか? HPのCGで作られたイメージ写真やCMに期待して、家族旅行として訪れるだろう家族とかはトラウマになっちゃうんじゃないでしょうか。大体の人は、遠方から高い交通費をかけて来るだろうに完全に馬鹿にしてますよね。これが一流のマーケティングを謳う会社がやることなんでしょうか」
子供たちへの影響を特に懸念する。「子供たちが楽しみにしてた体験が何も実現できないっていう状況は、単なる商業的な失敗を超えた社会的な問題だと思います。実際、私たちが行っている時の他の来園者たちの顔を見ても皆晴れてなかったです。お土産ショップは結構充実してましたが、そもそも楽しい思い出が作れてないので買っている人もまばらな印象でした」
田中さんは最後にこう締めくくった。「現在の状況が改善されるまでは、来園を検討してる人には慎重な判断をお勧めします。これが、実際に体験した私の率直な感想です」
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