かつて「麻雀ができてネット麻雀体験の記事を書ける人」という立場から、旧知の取引先に「オンライン賭け麻雀サイト」の記事広告制作を依頼された石渡健司さん(仮名)。ところがその後、彼は時間や財産も失う「とんでもない事態」に巻き込まれることに。いったい何がいけなかったのか? 雀ゴロライター・福地誠氏の新刊『ルポ マンション麻雀 ‐バブル期から脈々と続く超高レート賭博の実態』より、石渡健司さんの執筆パートを一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/後編を読む)
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先日ほんの少しだけ麻雀界を揺るがした「『DORA麻雀』運営者逮捕事件」。お金を賭けられるオンライン麻雀として一部で有名だった『DORA麻雀』というサイトの運営者が、賭博開帳図利罪で逮捕されたというニュースが2024年2月に報じられた。
報道では「利用客についても単純賭博容疑などで捜査を進める」とされており、実際3月になって「客6人も書類送検」という記事が出ている。そちらの記事では、客の罪状が先に報じられた「単純賭博」ではなく「賭博常習」となっている。これは対象となった客が繰り返し遊戯していたことで、常習性が認められたということである。
これが報道上の流れだが、実際の時系列としてはこの客の取り調べは昨年末に始まっていた。なぜそれを断言できるかと言えば、私自身がその客6人のうちの1人だからだ。
最初に『DORA麻雀』について簡単に説明しておこう。4人打ち6種類・3人打ち13種類(随時増減あり)のレートが設定されているオンライン賭け麻雀サイトだ。毎回ゲームを始める前に最大負け額(持ち点0点で終了、箱下清算やご祝儀がないので1ゲームの負け額上限が決まっている)をデポジットとしてサイトに預けて、結果によって払い戻しがあり、プラス収支になったプレイヤーから一定料率でゲーム代が徴収される、というシステムで運営されている。
レートの種類が示す通り、勝負が早い3人打ちが主流、それも東風戦の卓が多く(3人打ちのレート13種のうち10種が東風戦)、実施されているゲームの大半が3人打ち東風戦。ひょっとするとこれはゲーム代を回収するペースを上げるために運営がそう誘導していたのかもしれない。
デポジットが384ドル、3人打ち東風戦ならば5~10分で終わるゲームで平均200ドル(日本円で3万円)程度動く超高レートから、デポジットが0.5ドルという超低レートまでの各種テーブルが用意されている。ただし極端に高い卓も低い卓もユーザーが揃いづらく、基本的にはデポジット16ドル、32ドル、48ドルあたりが多く動いていたのではないか。
飛びラスで2千円~6千円程度の卓が回っている。これはフリー雀荘で言ったら、点3、点5、点ピンくらい。まさに街場のフリー雀荘と同じ感覚の社交場ということになる。
そんな『DORA麻雀』に関する罪状で、私が警察のお世話になった経緯を、順を追って記して行きたい。
2023年12月下旬のある朝、9時少し前のこと。玄関のインターホンが鳴った。いつも明け方に寝て、昼前に起きる私にとっては、まだまだ早朝という時間帯。来客の心当たりは皆無で、寝ぼけまなこをこすりつつ、何事だろうかと考えながら出ると、そこにはコートを着た3人の男性がいた。
そのうちの1人が警察手帳と家宅捜索の令状を見せながら、この件について話を聞かせてもらいたい、と言う。そこには「賭博常習罪」の文字が。正直まったく心当たりがない。
街場のフリー雀荘や仲間内のセットで金銭の授受はしたことがあるし、大昔にはかなり高いレートもたしなんだことはあるが、最近は賭け麻雀自体ほとんどやってない。そもそも賭博の現場を押さえられるならともかく、家に警察が来るとはどういうことだろう。
脳内をぐるぐる回転させるが、答えは出ないまま。とりあえず3人に家の中に入ってもらうことにした。
そこで「DORA麻雀の~」という説明が始まり、ようやく事態が飲み込めた。なるほど、それならば確かにやっていたし、現場がオンラインなのだから自宅に来る理由も分かる。
しかしいざ事態が飲み込めると、他の疑問がつぎつぎとわいてくる。あれって安心安全じゃないの? てか家宅捜索までされるようなこと? だいたい自分は「絶対安全だから」と頼まれて、仕事として始めたし……。
そうなのだ。とある広告関連会社が、取引先から『DORA麻雀』の記事広告制作を依頼されて、そのテキスト部分の執筆委託が私のもとに届いたのが発端だった。
「麻雀ができてネット麻雀体験の記事を書ける人」ということで、その広告関連会社と取引があった私に、たまたま白羽の矢が立ったのである。
体験の際の麻雀の勝ち負けは自分持ちだが、稼働時の原稿料は払うし、それに伴ってそれ以外の業務委託についても便宜を図ってくれる、という明文化はされていないが長い付き合いの阿吽の呼吸もあっての受託であった。
もちろんその際に、「海外にサーバーがあるうえに別業者のウォレットもかますので、日本国内で法的に問題になる賭博ではなく、完全に安心安全である」という説明もあり、また当時(2021年初頭)はオンラインカジノでの逮捕もほとんど報道されていない時期でもあったので、私自身もさほどリスクを感じずに受けた覚えがある。
こうして自宅での取り調べが開始された。
〈「その間の携帯料金は払わなきゃダメ?」拘束時間8時間、スマホもパソコンも1ヵ月押収される事態に…仕事で「オンライン賭け麻雀サイト」をプレイしてしまった麻雀ライターの後悔〉へ続く
(福地 誠/Webオリジナル(外部転載))