2024年の暮れから、たびたび話題を集めている大学サークルがある。その名も、「京大クジャク同好会」。入試の日には受験生を応援し、文化祭ではアイドルさながらに注目を集める。虹色の羽を広げた見事なクジャクが、突如としてキャンパスに現れるのだ。
【画像】美しい羽を広げる姿、車で送迎されるクジャク、メスのクジャクとのツーショットも… 京大クジャク同好会の写真を一気に見る
一体なぜ、大学にクジャクが……? 「文春オンライン」編集部が取材を申し込むと、2羽のクジャクと、同会“会員”の野澤智晴さん(農学部農学研究科応用生物科学専攻を修了)と、川添悠義さん(農学部資源生物科学科3回生)が応じてくれた。(全2回の1回目/続きを読む)
◆◆◆
――こんなに羽を広げてくれるものなんですね。
野澤智晴さん(以下、野澤) 今日は機嫌がよさそうですね。たぶん威嚇だと思うんですけど。
川添悠義さん(以下、川添) ずっと人前に出たりして疲れると羽を閉じちゃうことが多いです。僕らは(京大の)クスノキの前で羽を広げることを「ファンサ」って呼んでます。
――クジャク同好会では2羽のクジャクを飼育していると聞きました。
野澤 オスとメスを1羽ずつ飼っています。飾り羽を広げるのはオスだけで、彼が会長のサカタニです。
「クジャク同好会」会長の「サカタニ」は現在11歳 深野未季/文藝春秋
川添 メスのスカイレインボーハリケーンゴッドフェニックスが副会長なんですが、気性が荒いのでキャンパスには連れてこられないんですよね。クジャク小屋にいるので、あとで案内します。
――サカタニさんと、スカイ……。
川添 スカイレインボーハリケーンゴッドフェニックスですね。
――ありがとうございます(笑)。野澤さんは3月に修士2回生を修了されたのですよね。サークル長をされていたんでしょうか?
野澤 いや、そういうわけではないですね。SNSを主に運用していたのは僕で、学年も一番上ではあるんですけど。
川添 上下関係、縦の縛りみたいなのがないサークルなんです。クジャクが会長、副会長ですけど。クジャクの下に人間はみな平等なので。
――クジャクの下に人間はみな平等。
川添 はい。このサークルでは。
――「クジャク2羽、人間約120名」で構成されているんですよね。
川添 その中でやる気ある人間はだいぶ少ないかもしれません(笑)。文化祭だけ手伝ってくれる、とかはあるんですけど。野澤さんがもういなくなっちゃうので……。深刻な人手不足なんですよ、このサークル。
野澤 新入生、入ってほしいですね。結構、喫緊の課題。
――興味ある方、絶対多いと思います。そもそも、2013年に当時の在校生がクジャクの卵を孵化させたのがサークルの始まりだったんですよね?
野澤 そうですね。僕も入学前で、当時のことは詳しく知らないんですけど、OB・OGからそう聞いています。
川添 おいどんさんですよね?
野澤 そう、おいどんさんが創始者。おいどんさんの本名、なんだっけな……。その方が、クジャクだけじゃなくて、いろいろな生物の卵を孵化させることに挑戦していたらしくて。上手くいったものの一つがクジャクだったそうです。
――2013年にクジャク同好会が誕生。もう10年以上も活動されているんですね。
野澤 クジャクも、もう11歳ですね。
――なぜ名前は「サカタニ」なんですか?
野澤 おいどんさんの友達の名前が「サカタニ」だったらしいです。「俺の名前つけてよ」って言って。
川添 その人、クジャ同(※クジャク同好会の略称)じゃないですよね?
野澤 多分違うね。
――(笑)。もう1羽の、メスのスカイレインボー……。
川添 スカイレインボーハリケーンゴッドフェニックスですね。長いので、僕らも普段は「スカイレ」と呼んでいます。
――スムーズに言えず申し訳ないです。スカイレさんはいつから育てているんですか?
野澤 スカイレもサカタニと同じタイミングですね。卵はもともと4つで、そのうちの2羽がサカタニとスカイレ。スカイレは生まれた時に体が弱かったみたいで、名前だけでも派手にしようってなったらしくて。
川添 それで、スカイレインボーハリケーンゴッドフェニックス=「天空を駆ける嵐を呼ぶ虹色の不死鳥神」と命名したそうです。
――なるほど、たしかに派手ですね。あとの2つの卵は……?
野澤 ジョニーとももこって名づけられたものの、早くに死んじゃったそうです。
――なかなか育てるのは難しいんですね……。
野澤 そうですね。ヒナは病気も多いですし、孵化してからが難しいですね。
――主なお世話というか、サークル活動はどのようなことをされてるんですか?
川添 ヒナを育てるのは大変ですけど、ここまで成長したサカタニとスカイレはそこまで手がかからないんですよ。毎日お世話当番のシフトを組んでいるんですが、やることはエサやりと、水の交換と、飼育スペースの掃除・点検くらい。毎日欠かさないことが大事で、やること自体は誰でもできる簡単なお仕事、です。
――エサは何を?
野澤 基本的にはニワトリのエサですね。大袋で買ってあるので、それをエサ入れにざーっといれる感じです。主な支出もエサ代ですね。
――いくらくらいかかるんでしょうか。
野澤 ひと月2000~3000円くらいですかね。ただ、なかなかうちは資金繰りが厳しいので……。先日Xのアカウントでエサの寄付を呼びかけたんですけど、支援してくださる方がすぐに現れて、助かりました。
川添 Amazonの「ほしい物リスト」を公開してから、10分くらいでしたよね。あんまりたくさんいただいてしまっても、賞味期限もありますし、早めに締め切りました。
――川添さんのアクセサリーもクジャクの羽ですよね。自作ですか?
川添 そうです。イヤリングとネックレスなんですけど、あとクジャクの写真をプリントしたTシャツとかも売ってます。
――活動費はそこから捻出してるんですか?
川添 いや、これはあんまり売れないんですよ。文化祭で羽を売るんですけど、それが一番の資金源ですね。
――羽?
野澤 クジャクの羽です。
川添 エサやりのほかにその仕事もありましたね。自然と抜け落ちた羽を拾って、学祭まで溜めておく。
――そんなに人気なんですか。おいくらくらいで?
野澤 僕は1本1000円で。
川添 わりと時価ですよね(笑)。クジャクの羽ってバーッと広げたところに目玉模様があるんですが、外側だと目玉がないので、そういう羽だと僕は600円にしたり。
野澤 目玉なしは売れないね。でも、全体で100本くらいは売れる?
川添 そんないきますかね? でも、目玉ありは売れますよね。学生だと「高いな~」とか言ってぜんぜん買わないけど、文化祭だと親子連れとか、千円札握りしめた人たちで行列ができるみたいな(笑)。
野澤 まぁ、お祭りだからね(笑)。
川添 あと、文化祭ではクジャクのエサやり体験とかもやってます。小松菜をあげたり。
――それで資金繰りを。
川添 クジャク貯金です。病院に行くとなるとびっくりするくらいかかるんで。
野澤 保険がきかないので。クジャク貯金が消し飛ぶ……。
川添 1回2万~3万くらいしますかね。もっといくかな。
――クジャクは、結構病気もするんですか?
川添 いや、今はそんなではないんですけど、年老いていったら病院代がかさむと思うので、来るべき日のために貯金している感じです。
野澤 あとは、またヒナを飼うとかになっても、お金がかかるんで。環境を整えるのもなかなか大変なので。あとはお金もそうだけど、やっぱり人手がね。
川添 夏休み中のお世話当番シフトとか、ほとんど僕だったんですよ(笑)。
――でも、今や知名度はかなり高いですよね?
野澤 非公認サークルの中では。
川添 やっぱり最近だとXの反響は大きいですね。
撮影=深野未季/文藝春秋
◇◇◇
後編では、Xに投稿され大きな話題を読んだ“1枚の写真”、2人が会員になった経緯、クジャク同好会の知られざる「今後の展望」について紹介する。
〈《大学にクジャク→SNSで話題》「新歓でニワトリを捌いていて…」現役京大生が明かす、クジャク同好会に入った“意外なきっかけ”〈写真多数〉〉へ続く
(「文春オンライン」編集部)