〈抜群ボディで「ミス日本」に抜擢→妖艶なヌードを披露、ハリウッド映画にも出演したけれど…芸能人から「結婚詐欺師」に落ちぶれた47歳女性の下劣(2007年の事件)〉から続く
被害者のなかには1600万円だまし取られた男性も…。芸能人としての仕事を失ってからは、結婚詐欺師に変貌した鵜飼真知子(当時47)。彼女はいかなる方法で複数の男性たちをだまし続けたのか? そして、逮捕された彼女にくだった罰とは? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
【写真ページ】妖艶なヌードも披露…結婚詐欺師に変貌した元女性タレントの転落人生
写真はイメージ getty
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中西さんもまた、真知子を一目で気に入り、経歴を知ってゾッコンになった。真知子は妖艶な笑みを浮かべ、中西さんに迫った。
「私こそ結婚を前提にお付き合いしたいですわ。年明けには結婚できると思いますので」
真知子は「モデルを辞めるから」と言って、当面の生活費100万円を要求した。
その10日後には、さらに100万円の追加を求めた。中西さんの部屋を訪れて、甲斐甲斐しく身のまわりの世話を焼き、「結婚するならもっと大きな冷蔵庫が欲しいわぁ」と言って、その費用20万円も騙し取った。
1ヵ月後にはさらに100万円を要求。その傍ら、結婚相談所に公務員の田中宏さん(当時52)を紹介してもらい、「結婚前提」で付き合い始めた。
中西さんの誕生日、4時間も遅れてきた真知子は、「いい女と会うのに、何で待つぐらいのことで怒るの?」と言い放ち、中西さんと口論になった。これをきっかけに中西さんとの交際をやめ、音信不通になった。
その一方で、田中さんと交際していた真知子は、高級ホテルの一室で情事を重ね、「早く結婚して欲しい」という田中さんに、こんな話を切り出した。
「実は息子がサッカーで大ケガをして、ドイツで治療したんです。その借金500万円を返さないと、あなたと結婚できない。お金さえ返せば、すぐ結婚できると思います」
それで田中さんは500万円を振り込んだ。「早く自分の元へ来て欲しい」と言うと、真知子は「実は利息が100万円ある。それも返さないと結婚できない」とさらに無心。
だが、田中さんにそれ以上の余裕はなかった。
「話が違うじゃないか!」
「ごめんなさい。でも、息子も気が進まないと言っておりますし……。しばらくは行けそうにありません」
怒った田中さんは「500万円の借用書を書け」という内容証明郵便を送りつけた。
「夫婦になろうっていう関係なのに、こんなものを書かせるわけ?」
「オレの全財産だったんだ。キミこそ理解してくれ!」
「もう私のこと、お嫌いになったのね……」
それから真知子は音信不通になった。
たまりかねた田中さんは、ついに警察に相談。真知子は詐欺容疑で逮捕された。
警察による家宅捜索で、真知子の口座には他にも5~6人の男性から、不定期に金が振り込まれていることが分かった。
「私からお金を貸して欲しいと頼んだつもりはない。勝手に振り込んできたんです」
そのことを知らされた男性たちは、「自分ひとりだと思っていた。騙された!」と激怒した。
その後、真知子は中西さんに対する詐欺容疑でも再逮捕された。
だが、他の男性たちは「いつから真知子が金を騙し取る意思があったのか」を立証するのが困難で、立件は見送られた。
法廷に現れた真知子は茶髪のセミロング。目鼻立ちが整ったエキゾチックな横顔は、元モデルのたたずまいをしのばせていた。
田中さんと結婚しなかった理由については、「生理的に合わない外見だった」と言い放った。中西さんについては、「アル中で離婚したと聞いて嫌になった」と理由を述べた。
「他の人は自分を応援してくれる親友だと思っていた」(真知子)
むしろ悲惨なのは立件されなかった他の男性たちで、特に3人の男性は数年にわたって1000万円単位の金を騙し取られていた。
検察官:3人からプロポーズされていたのでは?
真知子:いいえ、記憶にないです。
検察官:あなたは「はい、分かりました。私もそのつもりです。でも、今すぐには結婚できません」と答えたのでは?
真知子:結婚の約束はしていない。趣味がすごく合うという話をしました。
検察官:1人の男性からは7~8年にわたって1600万円ぐらいを振り込んでもらっている。どうしてこんな援助をしたのだと思いますか?
真知子:私が母子家庭で頑張っているから、応援してくれたんだと思う。
検察官:彼はあまりお金持ちじゃないですよね?
真知子:頼めばいつもOKしてくれたので、私も甘えていた部分はあると思う。
検察官:ただ友人というだけで、お金を送る理由がありますか。結婚をちらつかせて騙し取っていたのでは?
真知子:私としてはそんなつもりはないです。生活費が足りないので送ってほしいと言いました。
検察官:別の男性たちからもプロポーズを受けていたのではないですか?
真知子:初期の頃のことで、お互いの生活環境を考えれば、一緒に住める状況ではないという話はしました。
検察官:もう1人の男性からも1500万円以上受け取っている。なぜそんな大金を?
真知子:私と息子の生活を応援してくださったのだと思う。
検察官:親しい友人なら1000万円も出すのか?
真知子:そこが私のいけないところで反省しております。
検察官:3人とも「騙された」と言っている。
真知子:そうであれば、私の大切な親友たちに対して、悪いことをしてしまったのだと思います。
息子がドイツやブラジルに行った事実はなく、家政婦ですら「何の仕事をしているのか分からなかった」というザマだ。
だが、逮捕の半年前に知り合ったという会社経営者が身元引受人となり、真知子は2ヵ月半で保釈された。刑期があければ、休眠中の子会社社長として招き入れ、女実業家として再生させるという。
この会社経営者は真知子の公判に情状証人として出廷した。
弁護人:知り合ったきっかけは?
証人:半年前に顧問弁護士から紹介された。
弁護人:事件のことは聞いているか?
証人:結婚詐欺と聞いている。22~23年前にアメリカに渡り、健康食品の事業を展開したが、詐欺に引っかかって、丸裸で日本に戻ってきたと聞いている。生活費に追われ、このような事件に手を出した。本業がないのが一番の原因と思う。
弁護人:他に仕事ができると思うか?
証人:語学堪能で、ニューヨークに会社を出し、一時は発展的だったと聞いている。休眠会社を一つあてがい、私の手が回らない仕事を彼女に任せたいと思っている。
検察官は次のように質問した。
検察官:彼女の能力を確かめているか?
証人:彼女は4年間、外国で仕事をしていた。その点を買いました。
検察官:その後、働かずに生活し、結婚詐欺を仕掛けた。その点は詳しく聞いているか?
証人:具体的には聞いていない。男女のことだから、かなりメンタル的なことではないかと思う。
検察官:それならどういう人物なのか分からないのでは?
証人:まだ半年だから分からない。朝6時半になったら、モーニングコールをしている。精神的な面からバックアップしていくつもり。
検察官:なぜ経営を任せる?
証人:彼女みたいな人材を探していた。中年で語学堪能な人は少ない。アメリカでの4年間の経験を買った。
裁判官からも質問があった。
裁判官:被告人について、何をどういう風に変えるつもりなのか?
証人:彼女の常識は世間の常識じゃない。男性が置かれていた状況や心境は私には分からないが……。
裁判官:それをどういう風に変えるんですか?
証人:非常に多額の生活費を使っていた。一般サラリーマンの3倍でしょう。それを縮小していくように言います。
真知子は犯行の動機について次のように語っていた。
「息子が高校を出れば、私から離れることは分かっていた。それなら高校3年間はいい思いをさせてやりたいと思った。生活費が足りなくて困っていると言うのが恥ずかしくて、親友たちには歪曲して言ってしまった。その結果、息子は『詐欺師の息子だ』と言われて学校でいじめられ、私も近所の人たちに挨拶しても素通りされたりして、辛い思いをしました。
これまでの堕落した生活を振り返り、これで終わりにしようと思います。息子にも『もう二度とこんな金を生活費に充ててくれるな』と言われました。子会社を一つ任せてくださいましたので、一生懸命働いて、地に足をつけ、息子と2人前向きに生きていこうと思います」
自分の美貌だけを頼りに生きてきた元モデルのなれの果て。裁判所は「収入がないのに贅沢な暮らしを維持しようという動機に酌量の余地はなく、結婚したいという男性の思いにつけ込む手口は巧妙で悪質だ」と断罪し、懲役3年執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
(諸岡 宏樹)