怒りの参院選出馬はあるのか──。夏の参院選比例代表で国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里氏の去就が注目されている。山尾氏は公認が取り消された直後の6月12日に同党に離党届を提出し、「国政に再挑戦する決意に揺らぎはない」と国政復帰への強い意欲を示した。
【写真】〈怒りの完全決別〉玉木氏から山尾氏へ送られた“お詫びメッセージ”とは
現状では、国民民主党の支持率を急落させる「山尾ショック」を起こせるほどのインパクトを持つ山尾氏が主要政党から出馬するのは困難とみられている。無所属での出馬が現実的な選択肢となりそうだ。全国紙政治部記者はこう話す。
「山尾氏の出馬先として取り沙汰されているのは東京選挙区です。同選挙区はもともと改選定数が6ですが、非改選の欠員1を補充する補欠選挙の合併選挙となっており、今回は7人が当選できます。
無党派層が多いことから、東京選挙区では知名度が高いことが有利に働き、過去には元キャスターの蓮舫氏や元俳優の山本太郎氏が同選挙区で当選しています。知名度だけを考えれば、今の山尾氏は候補者の中でトップかもしれません」
この全国紙政治部記者は「山尾氏は国民民主の公認取消にかなり憤っている」とも語る。一度公認の内定を出しておきながら、ネット世論の反発を受けて一転して公認を取り消した党の“ガバナンス不全”に対してだけではないようだ。
「玉木氏は12日に〈山尾さんに対して大変申し訳なく思っております。本人にお詫びしました〉とXに投稿しているが、このお詫びは携帯電話のメッセージで〈ごめん〉と一言送っただけだったようです」
山尾氏は玉木氏のお詫びについて、17日に自身のXに〈対面でのお詫びを頂戴していないのは事実ですが、まだ日が浅く、選挙戦も抱える中で致し方ないことだったと思っています〉と書き込んでいるが、周囲には「党の謝罪とは受け止めていない」と不快感を示しているとされる。
国民民主党関係者によると、「玉木氏は公認取り消しに伴い、山尾氏に党の政策アドバイザーに就くことを打診したが、山尾氏は固辞した」という。
山尾氏に政策アドバイザー就任を打診されたか否かについて事実確認をしたところ、〈榛葉(賀津也)幹事長から、公認辞退と引き換えに党の政策顧問に就任してほしい旨の打診はありましたが、恐縮ながらお断り申し上げました〉と回答した。
「山尾氏はすでに作成したポスターやチラシ、事務所の開設費用などを国民民主党に請求していく構えで、山尾ショックの余波は収まる気配がありません。
さらに、山尾ショックの影響は思わぬところにも波及しています。国民民主党と源流を同じくする立憲民主党は、参院選比例代表に昨年の東京都知事選で3位に終わった蓮舫氏擁立を正式決定しましたが、時間がかかったのには、多分に山尾氏が影響しています」(全国紙政治部記者)
立憲民主党関係者は事情をこう説明する。
「山尾ショックで国民民主党の支持率があんなに落ちるとは驚きだった。蓮舫氏に山尾氏のようなスキャンダルはないが、東京都知事選の後、『国政選挙はもう考えていない』と表明してしまった。『出ないと言ったじゃないか』とネット世論から反発をくらう『蓮舫ショック』を警戒している。
また選挙に出るつもりなら、蓮舫氏も最初からあんなことを言わなければいいのだが、言ってしまった。党内には『出るならちゃんと詫びるべき』『今のままなし崩し的に出られたら迷惑』といった厳しい意見や、そもそも論として『蓮舫氏のような攻撃的なタイプは一部の層にしか受けず、失うものの方が多い』という声もある。まあ、結局は出馬することになったわけだけど、党内に不満が溜まっているし、国民からの反発もあるだろうね」
参院選前に“台風の目”になった山尾氏だが、出馬の意思は固いようだ。山尾氏は取材に対しこうも回答している。
〈国政に再挑戦する意志に変わりはございません。戦後80年がたち、米国が変容する今、日本政治の最大の課題は、『自律した安全保障と誠実な人権外交の両輪で、戦争を抑止し、国家と国民を守ること』だと考えています。憲法・国際法・人権外交などの知見と経験を総動員して、この最重要課題に取り組むため、国政の場への復帰を目指す決断をしました〉
山尾氏と蓮舫氏も東京選挙区から無所属で出馬する──なんてことはないだろうか。