大阪・関西万博は、開幕から2ヵ月あまりが経ち、会期は残り4ヵ月。開幕後の好評ぶりに、来場者の数は日ごとに増えている。その一方、開幕してからも新たな「問題」が事あるごとに起き、その都度話題に上っている。
最近は、パビリオンなどの予約枠の高額転売が起きたり、虫が大量発生したりと、開幕当初とは別の課題が浮き彫りになった。さらに、「予約」に関連する最新情報が、公式HPにリアルタイムで反映されないことも多々あり、一部のSNSで“情報戦”ともなっている。
一連の問題は今どうなっているのか、また今後さらに混むと予測される中での混雑回避テクニックなどを、地元在住で万博へ約10回訪れた旅行ジャーナリストが解説する。
パビリオンの予約方法が急に変わったり、「予約必要」が「予約不要」になったり……、開幕して以降、頻繁に起きているパビリオン等の予約関連のルール変更。しかし、それらの情報更新はリアルタイムで万博公式サイトに反映されないことも多く、パビリオンごとの発信や個人アカウントなどのSNSの情報を自分で拾い集める必要がある。
今回の万博は「並ばない」ことを開幕前からアピールしていた。しかし、来場者の数が増えるにつれてパビリオンの予約競争は激化し、予約なしだと何時間も待つことも。WEB上でも予約画面にたどり着くまで「待たされる」という笑えない事態も起きている。
そのパビリオンの予約方法だが、最近、「ある変化」が起きている。基本的にパビリオンの予約は、事前に公式サイト『EXPO2025デジタルチケットサイト』から行うことになっているが、一部のパビリオンで、当日予約可能な枠を開放し始めたのだ。
その一つが、パビリオン入口に実物大のガンダム像が立ち、館内でガンダムの世界観が体験できる『GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION』(ガンダム館)。ガンダム館は完全予約制で、予約なしだと入館できなかったが、あらたに「当日予約」枠が開放され、万博会場に入場してから10分後から、スマートフォンまたは会場内の登録端末を使用し当日の予約(12時/15時/17時/19時※)が可能になった(※’25年5月末現在)。
この方法が、一部で「ガンダム方式」と呼ばれ、他のシグニチャーパビリオンや企業のパビリオンなども追随している。当日予約は基本、入場して10分後から可能となるため、最も早い入場時間「9時」の入場&登録が有利だが、10時台、11時台に入場しても、随時、昼や夕方などの当日予約枠を開放するパビリオンが増えてきている。
予約枠の「高額転売」も一時期、大きな話題となった。特に、イタリア・パビリオン(イタリア館)とくら寿司では、無料で取得できる予約枠が転売サイトで1件につき数千円などで多く出品されニュースになった。
パビリオンの予約は通常、万博のチケットを購入して、公式サイトでチケットに記載されている「万博IDとの紐づけ」が必要だ。しかし、一部のパビリオンでは、万博公式サイトとは別に、それぞれ独自のHP上で「万博IDと紐づけ不要」の予約枠が取り放題という状況になっていた。この予約チケットが高額転売問題を引き起こしたのだ。
これに関し、イタリア館は大手転売サイトで予約枠の出品が一斉に削除されたのに加え、問題となった独自のHPからの予約を6月以降分から中止するなど、転売対策が行われた。
くら寿司も公式サイトに5月20日付で〈この予約を購入することも利用規約の不正行為に該当します。予約の取り消しやアカウントの削除などの処置がとられる場合がありますので、不正な取引を行わないようにお願いいたします〉と告知し、予約の強制キャンセルなどの対応が行われたようだ。
その他には、4、5月の来場者に無料配布していた通期パス購入用の割引コードや、万博会場内の限定販売グッズなどの転売も起きている。これらに関しては表立った対応は特に見られない。
また、万博会場で近ごろ最も話題なのが、大量発生する「虫」だ。蚊に似た羽虫の「ユスリカ」で、人体に直接影響を及ぼさないといわれているものの、大量に目の前に現れると誰しも気分が良いものではない。
この事態に、大阪府の吉村洋文知事が府と包括提携協定を結ぶ殺虫剤メーカーに協力を要請するなど、対策への動きが見られる。だが、この周辺の会場整備で生態系が変化したのが原因ではないかと指摘する専門家による意見もあり、完全に駆除できるか不透明だ。
雨に関しては、開幕日が荒天で、〈雨風がしのげるところが少ない〉と大変な目に遭ったという投稿がネットで大きな話題となった。実のところ、雨の日の万博は、かなり大変だ。
その雨や風そのものより、場所柄、地面に水たまりが多くでき水はけが悪い。〈靴下の替えは絶対に持って行ったほうがいい〉とまで言われている。
しかし、雨でも来場者の数は少なくない。入場日時やパビリオンが事前予約のため、行かざるを得ないのだ。一方、日中ずっと雨だと「早く帰ろう」と考える人が普段より多く、夕方以降は空きやすい。このタイミングを狙うのも手かもしれない。
「混雑を少しでも回避して万博を楽しみたい」――これは誰しも思うはず。そのヒントを、最新状況を踏まえてお伝えしたい。
まず、パビリオンは「朝9時から10時半ごろ」「夕方以降」が、比較的空いている。朝9時過ぎに入場すると待ち時間がないパビリオンも多く、特に人気のパビリオンにはこの時間に入場しておきたい。また、夕方以降も、遠足や修学旅行、遠方からのツアー客などが帰路につくため、日中は1、2時間待ちだったパビリオンが数十分で入場できることも。
混雑する日中は、予約入場できるパビリオンを事前または当日に予約するか、多くの国・地域が集まる共同パビリオン『コモンズ』を見学するのがおすすめ。コモンズはいくつもの建物に分かれていて、いずれも屋内で、トイレも館内にある。日本人にあまり馴染みのない国も多く、〈予想以上に楽しかった〉という話もよく聞く。
入場には事前の予約が必須の大阪・関西万博。時間のほかに、入場する入口を「東ゲート」「西ゲート」のどちらかに指定する必要がある。午前中から行くなら、9時の予約が理想だが、平日でも数週間前から満員で予約できないことが多い。ただ、何度かチェックしていると予約枠が空くことがある。来場日時の変更は基本3回まで可能なので、あきらめずにトライしてみよう。
9時入場を目指す場合、「東ゲート」では早朝の6時台、7時台から待機列ができていて、9時過ぎに入場できる可能性は低く、10時近くになることも多い。もし、いち早く入場したければ、事前予約制のシャトルバスやタクシーなどの利用者のみが入れる「西ゲート」を選択して、主なシャトルバスが到着する前の8時過ぎまでに到着するようタクシーで向かうのがおすすめだ。
また、入場ゲートの選択は、最初に行きたいパビリオンによって決めるのもアリだ。例えば、イタリア館だと西ゲート、アメリカ館だと東ゲートが近い。西ゲートは先述の通り、予約もしくは事前決済が必要のシャトルバスやタクシー、駐車場利用のライドシェアなどのみ利用できる一方、アクセスの手軽さでは大阪メトロ中央線の夢洲駅に隣接する東ゲートが便利。会場外では両ゲート間の移動ができない点にも注意したい。
最後にお伝えしておきたいのが会場内の「地図」に関して。万博協会は紙の地図を200円で販売し、公式アプリの利用を促している。しかし、紙の地図のニーズは高く、開幕直後はその地図を買うのに1時間待ちという状態に。筆者も手に入れたものの、使い勝手が良いとは言い難いものだった。一方で、個人が手作りした地図がSNSで広まり、実際、会場内でその地図を手にする来場者を今もよく見かける。
会場は予想以上に広い。中には、1日2万歩またはそれ以上歩いたという人も多い。歩きやすい靴は必須で、こまめな休憩と水分補給を忘れないように。夏なら暑さ対策、梅雨時なら雨対策なども必要だ。場所によっては行列していることがあるトイレは、場所を事前に把握し、見かけたら早めに済ませておきたい。
取材・文・写真:シカマアキ