路上で女性用の下着を頭にかぶり、面識のない人に見せたとして、動画配信者の男性がこのほど、千葉県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで県警に逮捕された。
千葉日報やFNNオンラインによると、男性は5月、千葉県市川市の路上で、面識のない50代女性に、体操着とブルマーを着用し女性用下着を頭にかぶった姿を見せた疑いが持たれている。
警察の取り調べに、男性は容疑を認めて「視聴者を増やすためにやった」と供述したということだ。要するに下着をかぶって徘徊する様子を生配信していたらしい。
実際の配信と見られる動画を視聴したが、言葉を失うような内容だった。SNSでは「リアル変態仮面」という指摘もあがっている。わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士に解説してもらった。
──女性用の下着をかぶって路上に出ることは犯罪なのでしょうか。面識のない人にその姿を見せたことがダメなのでしょうか。
今回のケースは、千葉県の迷惑防止条例3条の2第3号(*)の「卑わいな言動」の疑いで検挙されたものと思われます。
「卑わいな言動」とは、当該行為の相手方が必ずしも気付いている必要はなく、公共の場所または公共の乗物において、当該行為を一般人の立場から見た場合に、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言動または動作(最高裁平成20年11月10日第三小法廷決定・刑集62巻10号2853頁)と定義されています。
条例では「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせる」「人に対して」おこなわれることが要件になっています。
したがって、痴漢や盗撮と同じ程度に人に接近しておこなわれることが必要と思われるので、単に女性用の下着をかぶって路上を歩いただけでは「卑わいな言動」に該当しないと考えます。特定人に見せつけるとか、追い回すような行為が想定されていると思います。
──家の中で下着をかぶったり、その姿を動画配信するのは問題ないのでしょうか。
条例は「公共の場所」での卑わい行為を禁じています。「場所」というのは、条例の性質上、一定の地面の範囲を意味するので、家の中で下着をかぶったり、その姿を配信するのは、条例には抵触しないでしょう。
(*)千葉県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第三条の二 何人も、みだりに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次の各号に掲げるものをしてはならない。三 前各号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。
【取材協力弁護士】奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。事務所名:奥村&田中法律事務所事務所URL:https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/