2021年に内閣府が高齢者向けに行った調査によると、普段、食生活について気になっていることは「栄養のバランスがとれていない」ことだと答えた人は約2割いたそう。「見た目の若さには、日々の食事が関係している」と話すのは、『老けない最強食』(文春新書)を著したジャーナリストの笹井恵里子さん。さらに笹井さんいわく、「DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は老化予防の効果が特に強い」とのことで――。
【表】老けない魚ベスト10は!?
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アンチエイジング治療に携わる和田秀樹医師も「老けないためには筋肉と同じくらい脂肪が重要」と強調する。
「脂溶性ビタミンのA、D、Eは脂肪に貯蔵されますし、細胞を再生したり、新陳代謝を行うのにも脂肪は欠かせません。
もちろん、肉で摂ってもいいのですが、脂肪の割合が格段に多い肉を大量に食べると、動脈硬化を促進する危険があります。また、魚にしかない“老けない効能”もある。
いいとこどりをするなら魚と肉を一日おきに食べましょう。『昨日はステーキを食べたから、今日は脂っこいものはやめよう』ではなくて、むしろ肉を食べた翌日に脂ののったカツオや、マグロのトロなどを食べる。すると、血中で固まりやすい肉の脂肪を、血液サラサラ効果のある魚の脂肪で中和することになります」
オメガ3系脂肪酸は、脳の機能を高めたり、悪玉のLDLコレステロールの排泄を促したり、さらには心臓の老化予防の効果がある。東邦大学名誉教授の東丸貴信医師(平成横浜病院総合健診センター長)の話。
「オメガ3には、高血圧症や加齢に伴って硬くなっていく心臓や血管を再び活性化させる働きがあります。慢性炎症を抑え、心不全や血管老化を防止するのです。また新型コロナウイルスなどの感染症による急な炎症を鎮める働きもあります」
『老けない最強食』(著:笹井恵里子/文藝春秋)
以下では「オメガ3系脂肪酸」が多い順にランク付けをした。
オメガ3系脂肪酸にはさまざまな種類があるが、中でもDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は老化予防の効果が特に強い。
大まかにEPAは血管や血液に、DHAは脳や髪に良い作用があると覚えるといい。老けない魚ランキングで上位のものほどオメガ3が豊富で、それに伴ってDHAやEPAも多くなるが、個別の量では順位に多少の違いが出る。以下にDHAとEPAが、それぞれ多く含まれる魚を挙げたので参照してほしい。
DHAとEPAが豊富な魚 ベスト5<『老けない最強食』より>
三つのランキング全て上位の「サバ(ノルウェーサバ)」は、あくまで生の栄養価。
寄生虫(アニサキス幼虫)が潜む可能性があるため、サバは缶詰のほうが安心で、使いやすい。缶詰の場合、オメガ3の含有量はざっと半分になる。
サバを除くと、「クロマグロ」「サンマ」「ブリ」がどのランキングにも含まれ、日常の食卓における「老けない最強魚」といえるだろう。
オメガ3系脂肪酸全体の作用について調べた論文は数万件を超え、私もさまざまな研究を目にしたが、とりわけDHAに抜け毛や白髪予防効果があることに驚いた。
神経内科専門医で栄養学に詳しい大和田潔医師(あきはばら駅クリニック院長)が解説してくれた。
「きれいな髪を作る条件は二つあります。元気な毛根であることと、正常な毛根サイクルであること。男性は年とともに男性ホルモンの影響で毛根サイクルの回転が早まり、毛が成長する前に抜け落ちてしまうことがある。女性も加齢とともに髪のハリを失いやすい。
髪の毛は根元の毛根にある『毛包』に支えられているのですが、DHAは毛包の機能維持や炎症防止に大きな役割を果たします。DHAが豊富な魚を食べることで毛根サイクルが正常化し、毛もしなやかになると期待できます」
DHAには脳を活性化させる働きもある。「魚を食べると頭が良くなる」といわれるゆえんだ。
※本稿は、『老けない最強食』(文藝春秋)の一部を再編集したものです。