〈「成績を上げろ」と担任を5時間監禁…中学校教師を襲ったモンスターペアレンツの“あり得ない行動”「息子の未来を潰す気か!」〉から続く
「先生って職員室で生徒の悪口を言っていますか?」「部活を辞めたら内申点が下がりますか?」–10年以上中学校教諭を勤めたすぎやまさんが、SNSを始めて驚いたのは、“教師の本音”を知りたいという声が大きかったこと。
【画像】教師を辞めて、YouTuberに転身した現在のすぎやまさん
教育現場のリアルに迫った著書『教師の本音 生徒には言えない先生の裏側』より、なぜ“ブラック校則”が生まれるのか、すぎやまさんが明かした学校側の事情を紹介します。(全3回の2回目/最初から読む)
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『ポニーテール禁止』も、意味不明なブラック校則のひとつ。
鹿児島市の女子生徒が「校則でポニーテールが禁止されているのはなぜか?」と担任に尋ねたところ、「男子がうなじに興奮するから」と返答されたという南日本新聞の記事がYahoo! ニュースにも掲載され、瞬く間に大きな話題となったのです。
写真はイメージ RYH/イメージマート
その波紋は海外にまでおよび、私のところにも、海外メディアから取材が来ました。
まったく意味のわからない謎ルールですが、教師からすると「あるある」なのです。さすがに「うなじに欲情する」などとは言いませんが、私が勤務したほとんどの学校でもポニーテールは禁止でした。
こういう社会の常識からかけ離れたヘンなルールが、地域限定ではなく、全国規模で存在しているのです。
たとえば生徒が髪を真っ赤にして就職試験に行くとしたら、「それはちょっとマイナスになるんじゃないかな。あなたはどう見られたいの?」という指導をするかもしれません。
もちろん、グローバル化が進む社会の中で、髪色や髪形、そもそも外見的な要素で人を判断するのはよくないという考えもあるでしょう。でも少なくとも今の日本社会では、一般論として、そういう奇抜な髪色は良い印象を与えないことはたしかだと思います。
では、ツーブロックやポニーテールはどうでしょう? ツーブロックなんて、むしろ爽やかで、好印象だと私は感じます。
くるぶしソックスも、ポニーテールもそう。誰がどんな靴下を履いていようが、誰も何も思わないでしょう。学校の謎のルールは世間一般の感覚と乖離しているのです。「下着は白! 靴下は白! 靴も白!」とかいう校則もそうです。
逆に、一般的には白い靴下はビジネスマナー的にNGとされています。スーツに白い運動靴というのも変でしょう。
ところが学校では制服に、白い靴下、白い運動靴じゃないと「身だしなみがおかしい」と言われます。
下着もそう。特に女性の場合は、白いブラウスに白い下着だと透けてしまうため、あまり好まれないことが多いです。男性でもベージュやグレーの肌着を着用する人も多くなっています。
ところが学校現場では、わざわざ服をめくって調べるほど、なぜか白の下着に異常に執着をしています。白=清潔感がある、という認識なのだと思うのですが、社会で通用しないようなルールをわざわざ押し付ける必要があるのか疑問です。
思春期の女子に関していうと、『体育で下着の着用禁止』という異常なルールが話題になったこともあります。
「汗をかくので、体操着の下に下着(ブラジャー)を着用してはいけない」というルールが川崎市の多くの小学校で存在するということで、2021年に話題になったのです。でも、高学年の女子ともなると、当然、胸が成長してきます。場合によっては、ブラジャーなしで運動したら胸が揺れたり、運動しづらいこともあるでしょう。
なので、ブラジャーの着用を認めるかどうかを、教員がその子の胸を『目視』して判断するというのです。しかも、男性教員がチェックすることもあったそう。
もう完全に人権感覚が狂っています。チェックする本人も、周りの教員も、なぜその異常性に気づかないのでしょうか? 誰かが止めることはできなかったのでしょうか?
ここまで異常な校則を放置した先生方はさすがに罪深いと思いますが、通常の学校に見られるようなブラック校則については、実は多くの先生が「ヘンだな」と思っています。でも、それを変えるには、一部の声のデカい、押しの強い先生と戦わなくてはなりません。先生にはそんな余力もないし、正直そこまで徹底抗戦するメリットが先生個人にあるわけでもありません。
ブラック校則がそのままになってしまうのは、そのためです。
〈「生理でもタンポン入れて」「全裸でバンザイしろ」まるで強制収容所…それでも“ブラック校則”をやめない教師たちの本音〉へ続く
(静岡の元教師すぎやま/Webオリジナル(外部転載))