「先生って職員室で生徒の悪口を言っていますか?」「部活を辞めたら内申点が下がりますか?」–10年以上中学校教諭を勤めたすぎやまさんが、SNSを始めて驚いたのは、“教師の本音”を知りたいという声が大きかったこと。
【画像】教師を辞めて、YouTuberに転身した現在のすぎやまさん
気になる現場の実態から、“ブラック校則”がなぜ生まれるのかまで、学校のリアルに迫った著書『教師の本音 生徒には言えない先生の裏側』より、すぎやまさんが実際に体験したモンスターペアレンツの恐ろしい行動を紹介します。(全3回の1回目/続きを読む)
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「テストの点数、上げてもらえませんか?」
保護者からそんな電話がかかってきたことがあります。いやいや(笑)、そんなことあります? 初っ端から冗談キツいよ、と思われると思いますが、残念ながら実話です。
それは定期テストが終わった後のことでした。学年主任に呼ばれて電話に出ると、相手は担任しているクラスの生徒の保護者。
写真はイメージ graphica/イメージマート
「先生、うちの子、今回の数学のテスト、すごく点数悪かったんですよ」
「あぁ、まぁたしかにそうですね……」
「あの……点数、上げてもらうことってできませんか?」
「えっ?」
正直、意味がわかりませんでした。
「点数上げるって、どういうことですか?」
「こんな点数見せたら、パパ(夫)が怒るから、怖くて見せられないんですよ。怒られたら娘も可哀想だし……少しでもいいんで、何点か上げてくれませんか?」
「いや……さすがにそれは学校の信用に関わるので、そういうことはできません」
「そうですよね……わかりました」
幸いなことに、この件はこれで終わりました。まあ、モンスターペアレンツとまでは言えないような、笑い話かもしれません。
本書ではいくつかこういう私の体験談をお話ししていますが、今でも根に持っていて、恨み節を言いたいという意図ではなく、あくまでも学校の実情を伝えるためのビックリエピソードとして聞いてもらえたらなと思います。
ただし、教員には守秘義務もあるので、個人が特定できないようにするため、内容は一部脚色していることはあらかじめご了承くださいね。
さて、こういう保護者からのビックリするようなクレーム、学校現場ではかなり多いのです。もちろん学校に問題がある場合も多いでしょう。それは真摯に対応していかなくてはなりません。
でも問題なのは、そうじゃないケース、つまり保護者があまりに理不尽なクレームを入れてくること。いわゆる『モンスターペアレンツ』です。
次にご紹介するケースはもっと深刻でした。
受験のときには、それまでの成績に基づく「内申点」を参考にして、志望校を決めます。その内申点が出たときに、ある生徒の保護者が夫婦で学校にやってきたんです。担任の先生に話がある、ということでした。
そこで、お2人を学校の応接室にお通ししました。
「どうしました?」
「あのさぁ、この成績、どういうこと!?」
「はい?」
父親の方は最初からケンカ腰。品の良さそうな母親は背筋をピンと伸ばしたまま、凍った表情でこちらを見ています。
「これじゃあさ、うちの子は○○高校に行けないじゃないか」
「そうですね、ちょっと……厳しいかもしれませんね」
「厳しいですよね、じゃないよ!」
お父さんの怒りはドンドンエスカレートしていきます。
「あんた担任なんだから、息子の成績、もうひとつかふたつ、上げてくれてもいいじゃないか!」
「担任としてうちの子の進路を応援する気はないのか!」
「息子の未来を潰す気か!」
机をバンバン叩きながら怒りをぶつけてくる父親。埒が明かないと思った私は、
「学年主任の方から説明しますんで、ちょっとお待ちいただけますか?」
と言って、席を立とうとしました。
ところが父親は「いや、いい、行くな」と言うのです。
「いや、でも私がこれ以上説明しても、ちょっとおわかりいただけないと思うんで……」
「いや、いい、とにかくあんたに言いたいんだよ」
そこから、また一方的な罵倒が続きます。しばらくそれを聞かされてから、
「いや、もう私が言ってもおわかりいただけないと思うので、学年主任を呼んできますので……」と言って応接室を出ようとしたんですが、「いや、行かなくていい」と、ドアを押さえられてしまいました。
「俺はあんたに文句があるんだよ!」
……もう、意味がわかりません。そのまま怒鳴り続けられ、時間感覚もなくなり始めた頃、
「これだけ言っても成績上がらないんだな?」
「上がりません」
「わかった、じゃあ帰るよ」
と言ってご両親は帰っていきました。
16時くらいに来たその保護者が帰ったのは、21時を過ぎてからでした。
ようやく職員室に戻ったら、心配した学年主任がまだ残ってくれていました。
「大丈夫だった?」と。
「いや、助けに来いよ!」と思いましたが、もうつっこむ元気すらありませんでした。
トイレも行けない、水も飲めないで、5時間ただ怒鳴り続けられる。こんな経験はなかなかできないと思います。
〈「ポニーテールは男子を欲情させる」「ブラジャーをしてないか男性教師が胸を目視で確認」元教師が語る“ブラック校則”が野放しにされる理由〉へ続く
(静岡の元教師すぎやま/Webオリジナル(外部転載))