授業中にまさかの発見です。美術館で展示していた岩石から、約2億2000万年前の「魚竜」の化石が発見されました。
【画像を見る】岩石をCTにかけると…見えた!これが「魚竜の化石」さらに3Dプリンターで復元した姿は
この時代の魚竜の化石が見つかるのは日本で初めて、世界的にも極めて稀です。発見につながったのは、教授のある「癖」でした。
約2億2000万年前の後期三畳紀「恐竜時代」に、海の生態系の頂点に立っていたとされる魚竜類【画像①】。今回見つかったのは、その化石です。
実はこれ、高梁市成羽美術館が30年以上前から「二枚貝の化石」【画像②】として展示していたものでした。
発見のきっかけは、岡山理科大学の加藤敬史教授が、清心中学校・清心女子高等学校の生徒に、この化石を使って「二枚貝類」について解説をしていた時でした【画像③】。
化石が含まれるこの岩石の断面を見ていたところ、「何かが埋まっている」ことに気がついたといいます。(岡山理科大学 生物地球学部 恐竜学科 加藤敬史教授【画像④】)「成羽美術館で化石の展示はしていましたけども、『それ以外のものが入っていないか』とか、野外で見るのと同じように見る癖があって」「それで『うわ、骨じゃ』となったのが、まず最初の感じです」
成羽美術館が所蔵する岩石自体は非常に固く、化石の取り出しは困難なため、X線CT装置を使って内部を観察。すると、椎体3点や肩甲骨1点、さらには肋骨11点など、合わせて21点の骨化石が確認されました【画像⑤】。
この骨化石を、3Dプリンターを使って復元し【画像⑥】、詳細な分析を行った結果、その特徴から「魚竜類の化石」であることが判明したのです。
魚竜の長さは約3メートルと想定されます。
化石を採集した「成羽層群」【画像⑧】が分布している高梁市一帯は、約2億2000万年前は海で、この時代は「魚竜類の進化における重要な転換期」でもあったと言われています。
「魚竜類の化石」の発見は、国内では宮城県以外の地域では報告されておらず、今回、西日本では初めて。またこの時代の「魚竜類の化石」の発見は、世界的に稀だということです。
魚竜化石研究の世界的権威である、カリフォルニア大学デービス校の藻谷亮介教授は、今回の発見について、以下のようにコメントしています。(カリフォルニア大学デービス校 藻谷亮介教授)「ノーリアン(三畳紀後期)という時代は、魚竜類の進化における重要な転換期で、近海型から遠洋型への真価がほぼ完成した時期にあたります。しかし、この時代の魚竜化石は世界的に稀で、まとまった化石はカナダのブリティッシュコロンビアから知られているのみです」「日本からこの時代の魚竜化石が出たということは、進化した魚竜類が太平洋より大きかった当時のパンサラッサ海を実際に渡ることができた可能性を示し、大きな意義があります」
加藤教授も、「当時の海の生態系が明らかになるきっかけになるかもしれない」と期待を寄せています。
(岡山理科大学 生物地球学部 恐竜学科 加藤敬史 教授)「ちょっとやらしい話ですけどけど、『誰もが気が付かないのを僕が見つけた』っていうのは、ちょっと誇りであります」「こういう標本が見つかると、そういう目で見る人たちが増えてくるというのもある。もちろんこれを詳細に調べることは前提として、追加の標本であるとか、そういう発見にも繋がるんじゃないかと思います」
思わぬ新発見となった、魚竜類の化石です。高梁市成羽美術館では、化石の調査が終わった8月ごろ、改めて「魚竜類の化石」として展示する予定です。