ジャラジャラジャラ……セルフレジに、大量に投入される100円玉。すると、セルフレジの画面がしばらく固まったように動かなくなる。いま、SNSではそうしたショート動画が数多く出回っている。また別の動画では、コンビニのセルフレジに1円玉が大量に投入される様子が映されている。硬貨の投入口には「つまりの原因となるため1種類につき20枚以上の硬貨のご利用はお控えください」と掲示があるにもかかわらず、1円玉がどんどん投入されている──。
【写真】コンビニのセルフレジに1円玉が大量に投入される様子ほか、セルフレジが固まって動かなくなった様子なども…
同様の動画はXやTikTok、YouTubeショートで複数のアカウントが確認でき、「イオン」や「スシロー」、「ドン・キホーテ」といったさまざまな大手チェーンのセルフレジが取り上げられている。
それらの動画を撮影する目的は不明だが、硬貨の大量投入によってセルフレジが不具合を起こすことをどこか楽しんでいる印象だ。
前出のコンビニのように、一度の会計で使用できる硬貨の枚数を制限している店舗もある。ある動画の中で大量に硬貨が投入される様子が映されていたスーパーマーケット「イオン」などを運営するイオンリテール株式会社に問い合わせたところ、「一部店舗や、ほかのイオングループ企業では基準が異なる場合があります」と補足したうえで、以下のような答えが返ってきた。
「当社イオンリテールが運営する店舗のセルフレジでは、硬貨の投入は一度に30枚以下とさせていただいています。各セルフレジにはその旨を記載した掲示物を貼付しております。
硬貨の大量投入は機械の故障や他のお客さまのご迷惑となる場合がございますので、スムーズなご利用のため、硬貨は枚数制限をお守りいただくようご協力のほどお願いいたします」(イオンリテール広報部)
また、同じセルフレジに大量の硬貨が投入される動画があった回転寿司チェーン「スシロー」を運営する株式会社FOOD & LIFE COMPANIES広報部は、そうした動画の存在について、「現在、社内での事実確認をしておりますため、回答は控えさせていただきます」とのことだった。
このような行為に、法的な問題はあるのか。「グラディアトル法律事務所」の清水祐太郎弁護士に聞いた。
「エラーが起きる可能性を知ったうえで、エラーを起こさせる目的で小銭を大量に投入する行為は、刑法上の偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。また、セルフレジが壊れてしまうこともあると知ったうえで行っていれば、セルフレジを壊した場合、刑法上の器物損壊罪に該当する可能性があります。
刑法上の問題だけでなく、セルフレジが壊れてしまい、修理が必要ということになれば、店舗に対して、修理費用などの損害賠償責任を負うこととなります」(清水弁護士、以下同)
一度に使用できる硬貨の枚数については、実は法律で定められている。
「『通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律』の第7条に「貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する」とあり、店舗側は20枚以上の使用を拒否できます。
実際にセルフレジには、『硬貨の大量投入はご遠慮ください』や『硬貨の使用は20枚まで』などの制限を設けているところがあります。これらを無視し、セルフレジが故障することを認識したうえで小銭を大量に投入してセルフレジを故障させたときには、民法上の不法行為となります」
店舗側が当該の客に出禁処分を下したり、法的責任を求めることは可能だという。
「硬貨を大量投入してわざとセルフレジにエラーを生じさせる人物は、店舗に迷惑をかけるので、店舗自体に立ち入らせないという出入り禁止をすることが可能です。また、売買契約をすることはできないとして、拒否することも可能です」
6年ほど前には、ファストフード店で大量の1円玉を出して店員を困惑させる動画が“迷惑行為ではないか”と話題になったことがあった。ここ1~2年でセルフレジが急激に増えたことで、“同じネタ”が現代版になったということだろうか。
万が一本当にセルフレジを壊してしまったら、その代償は大量の硬貨では済まないかもしれない。