新年度が始まり新入生が入ってくる季節だが、今年1月に行われた大学入学共通テストで、4人がカンニングなどの不正行為で失格に…。時代と共にそのテクニックも進化する中、去年、早稲田大学の入試ではカメラ付きのメガネ「スマートグラス」で撮影した試験問題をSNSに流出させた事件もあった。こうしたカンニング行為、実は受験に限らず就活においても大きな問題になっている。
【映像】就活で行われた“カンニング方法”(実際の映像)
知的能力や性格を診断する「適性検査テスト」をWeb上で実施する企業が増加。そのWebテストで不正行為、つまりカンニングをした割合が45%にも上るという調査結果がある。街で聞いてみると、「世の中にいっぱい情報が溢れてるし、調べることをしないと周りの状況に今後ついていけなくなるから、カンニングも調べることの一つに入るから悪くない」との声があがっている。
カンニングに限らず、ネット上でも議論となっているのが、AIやスマホですぐに必要な情報を得られる今、知識を“覚える意味”は、どこまであるのか。就活でのカンニングの実態、暗記力や知識量の必要性について、『ABEMA Prime』で考えた。
過去に就活の適性検査でカンニングしたことがある、あきさん(30代)。就活時にWebテストの解答集を友人から入手し、補助的に使っていた。Webテストは落ちたことがなく、友人の代行もしたことがあるという。
当時について「もう絶対ダメだということが前提にある中で、バレるリスクが限りなく低く、人生がかかってることを天秤にかけた結果で受験をした」と明かす。
大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は、適性検査について、「性格検査と能力検査の2種類あり、WebテストはいわゆるSPIだ」と説明した。
あきさんは就活の経験から、「SPIだと、テストセンターと呼ばれるようなテストを受ける専用の場所があって、そこで受験をするときは不正できない体制が整えられていた」。一方で「自宅など、どこでも受けられるWebテストは、カンニングなどの不正が横行し得る環境だった」と振り返った。
石渡氏は企業側の事情について、「Webテストは、企業側にとっての費用がそこそこ安い。テストセンターだと試験監督や場所代がかかるので、ちょっと高い」と話す。そのため「就活の序盤からお金かけたくない企業は不正が簡単にできると分かった上でオンラインでやっている」と実情を明かす。
そして石渡氏は、不正対策は簡単にできるという。「1回目は簡単にカンニングできるWebテストを導入し、就活生の良心に任せる。そして、ある程度選考が進んできた中盤ないし終盤で、もう1回適正検査を対面で実施する。この段階でカンニングをできる度胸のある就活生なんていない。そこで極端に差があれば、『こいつカンニングやらかしたな。じゃあ落とそう』となる」。
AI時代において、記憶や知識の必要性はあるのか。元経産官僚の門ひろこ氏は、「(AIを使うことで)負担は軽減して、知識としてはいらなくなるかもしれない。しかし、ロジックは覚えておかないと、自分なりにソリューションが出せない。仮にAIを使ったところで出てきたものが正しいかどうかも判別ができない」と答えた。
あきさんは、AIを使う上で、「出力の仕方、プロンプトが非常に大事」といい、「ある程度、知識や暗記部分は、情報操作が多数あるのでいくらでもカバーできる。その情報を、どう使っていくのかを考えるのは自分の頭だと思うので、最低限の教養や知識、背景、その使い方は今後も必要になってくる」との見方を示した。
石渡氏は「10代の頃、特に中学生、高校生はある程度の暗記、その知識重視っていうのは必要だと思う。ただ、大学入試はもちろん、大学での勉強、就職活動だと、その知識に加えて、読解力や思考能力などの要素が重視されているが、今の時代はその傾向が強くなっている」とした。
(『ABEMA Prime』より)