入院中の当時8歳の娘に食事を摂らないよう強要しようとした母親に、大阪地裁は4月21日、執行猶予の付いた有罪判決を言い渡しました。一方で、故意に低血糖症に陥らせて入院させ、共済金をだまし取った罪については、無罪としました。 大阪府大東市の縄田佳純被告(35)は、暴力行為等処罰法違反や詐欺、強要未遂の罪に問われていました。【起訴内容】▽2023年1月、当時8歳の娘に必要な食事を与えず、故意に低血糖症に陥らせて入院させ、翌月に共済金計14万円をだまし取った罪(詐欺罪・暴力行為等処罰法違反)▽同じく2023年1月に複数回、娘に故意に下剤を飲ませた罪(暴力行為等処罰法違反)▽2023年2月、入院中の娘に“食事をすれば養育を放棄する”とLINEや電話などで脅し、絶食させようとした罪(強要未遂罪)

◆「怒りで言い過ぎてしまった。体調を悪化させようとしていない」被告は起訴内容を全面否認◆ これまでの裁判で縄田被告は、「低血糖症を悪化させようとして食事を与えなかったことはない」として、暴力行為等処罰法違反や詐欺の罪について起訴内容を否認。また、強要未遂の罪についても「娘が宿題をせず携帯を触っていたので、怒りで言い過ぎてしまった。体調を悪化させようとしていない」と起訴内容を否認していました。 一方で検察側は、懲役3年6か月を求刑していました。◆強要未遂罪について懲役6か月・執行猶予2年の有罪判決 「入院期間を延長させる意図だった」とする検察側の主張は否定◆ 大阪地裁(岩崎邦生裁判長)は4月21日の判決で、強要未遂の罪について「要求に応じなければ養育を放棄されるという恐怖心を被害女児が抱き、食事を摂取しない行動を選択する現実的な危険性が十分に認められる。親の子に対する叱責としての行き過ぎは甚だしい」と批判。 一方で「入院期間を延長させる意図だった」とする検察側の主張は退け、「被害女児が看護師らによって食事を管理されていたことからすると、実際に食事をせず健康を損なう事態に陥るおそれが高かったとは言えない」「怒りからの突発的な犯行で反省も深めている」として、懲役6か月・執行猶予2年を言い渡しました。◆被害女児の供述の信用性を疑問視「供述を的確に裏づける医学的証拠もない」暴力行為等処罰法違反と詐欺は「無罪」◆ 一方で、暴力行為等処罰法違反の罪については、「検察側が立証の核としていた、司法面接での被害女児の供述は、虚偽供述を疑わせる事情はないものの、正確な記憶に基づく供述であるかに疑問を抱かせる事情が多く、供述を的確に裏づける医学的証拠などもない」と指摘。「適量の食事を与えなかった事実や下剤を投与した事実は認定できない」として、無罪としました。 またそれに伴い、「故意に女児を低血糖症に陥らせた事実も認められない」として、詐欺罪についても無罪としました。◆裁判長が説諭「あなたと被害者が何気ない日常生活に戻れることを期待」◆ 判決の言い渡し後、岩崎裁判長は縄田被告に対し、以下のように説諭しました。 「あなたの行為は親の子どもに対する常識的なしつけを逸脱するもので、犯罪行為に値します。しかし、この裁判を通じて、私はあなたが被害者に愛情を持って懸命に育ててきたこと、反省し後悔していることを理解しました。一方で、被害者が傷ついたことも事実です。この裁判はあなたに負担が大きかったと思います。明らかに事実と異なる報道がされ、あなたも傷ついたと思います。これから被害者の疲れと、自身の傷を癒し、あなたと被害者が何気ない日常生活に戻れることを期待しています」