依然として続く物価高やアメリカの「相互関税」発動措置を受けて、与野党から国民負担の軽減策として現金給付や減税をめぐる議論が巻き起こっている。所得制限のない現金給付は「バラマキ」などと否定的な世論も多く政府・与党は断念する方針だ。一方、消費税減税についてもさまざまに言及されているが、与党内でそのことを主張し続けている実力者はただ1人なのだという。
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「与野党から現金給付や消費税の引き下げについての主張が持ち上がっているのは事実です。都議選や参院選を目前にし、そういった議論が持ち上がるのは想定内ですが」と、政治部デスク。
「それぞれを実施した場合に財源はどうするか、仮にそれを実施したとしても将来世代に負担を押し付けているだけではないかとの疑義が呈されるところまで、これまで幾度となく見てきた議論と同じ、いつか見た光景だと言えますね」(同)
国民民主党の榛葉幹事長は会見で「政府には消費税率の一律5%への引き下げなど、できることは全部やってほしい」と述べた。
「消費税の税収は社会保障の財源にあてられていますし、消費税率の引き下げを実施する場合は法律の改正が必要となり時間がかかります。その意味では、現在の物価高対策として主張するのは現実的ではないのですが、少数与党の弱みをついて存在感を示すという狙いがある。国民民主への支持率の高さから、財源などを示せなくても『現実味が薄い』『無責任』といった批判も浴びないという考えもあって、そういった主張を展開している面もあるでしょう」(同)
立憲民主党内では、江田元代表代行らが食料品の消費税率をゼロにするよう求める提言を取りまとめた。しかし、同党の枝野元代表は「減税ポピュリズムに走りたいなら別の党を作ってください」などと発言し、物議を醸している。
「野田代表は民主党政権での首相在任時、消費増税をまとめた張本人ですからこういった減税論には慎重なスタンスです。最終的には枝野氏寄りの態度に落ち着くと見られていますが、政党支持率で国民民主にダブルスコアで遅れを取っているとの世論調査結果もあり、参院選などを前にして減税に距離を置くことで“国民に寄り添わない冷たい政党”との評価を受けたくないのでしょう」(同)
立憲内のつばぜり合いは久々に同党に注目が集まるきっかけくらいになっているが、大きなうねりにつながることはなさそうだ。他方、自民党内でも消費税の引き下げを求める声は当然ある。
「ただ、本気でこだわっている実力者は1人しかいない、それこそ石破氏だと言われていますね。これまで減税には消極的と見られていたので意外でしょうが。ただ、どういった理由なのかわかりませんし、実現には時間がかなりかかります。さすがに現実的ではないと思われますが」(同)
友党・公明党はマイナポイントの給付を官邸に提案したとされる。
「特に都議選に注力する公明としては強力な物価高対策を官邸に求めていました。約1億人が保有するマイナカードにポイントを付与するなら、貯蓄に回りがちな現金給付より消費喚起につながり、事務的な負担も小さいとの見立てもあったようです」(同)
政府は、現金給付などの裏付けとなる補正予算案を編成せず、予備費などを活用して物価高対策を実施する方向に舵を切った。
実のところ、本当に生活に困っている層には消費減税よりもポイント付与などのほうがプラスは大きいといった試算もあるのだが、そうした冷静な比較をしたうえでの「熟議」ができる環境なのか、はなはだ怪しいところではある。とはいえ、国民負担の軽減策をめぐる報道が流れ続けてきている以上、何かしらの方策を施さないわけにもいかないという悩ましさもあるようだ。
デイリー新潮編集部