4月13日に大阪・関西万博が開幕してから2週間経った。日を追うごとに運営もこなれ、今となっては開幕日の大混乱も懐かしく思えてくるが、一般来場者11万9000人で大混雑だった開幕日は入場規制など諸事情で並ぶこと自体を一時的に不可にしたパビリオンや店舗もあり、一部で緊張感が走る場面もあった。いったい何があったのか。目撃した来場者に話を聞いた。
【写真】雨に見舞われた開幕日の会場の様子。他、開幕日に打ち上げられたサプライズの花火など
「開幕日の昼下がり、隣り合っている大人気のオーストリア館とスイス館にはそれぞれ長蛇の列が他のパビリオンの前まで並行してのびていました。オーストリア館に並びたい人もスイス館に並びたい人も、どちらが自分の行きたい国のパビリオンの行列かわからず、並んでいる人に『どっちの行列ですか』と聞かなければいけない状況でした」
あいにくの悪天候だった初日。雨だけでなく風も強いため、傘をさしていても雨でバッグやリュック、上着、靴が濡れてしまうような状態だった。
「みんな寒さに耐えて列が進むのを黙々と待っていたのですが、だんだんスイス館の『ハイジカフェ』の入口につながる道の前にできた人だかりのあたりがピリピリしてきているのを感じました」(前出の来場者・以下同)
ハイジカフェは開幕日、15時からのオープンと貼り紙が掲げてあり、14時台になるとハイジカフェ目当ての人があちこちから集まってきていたのだ。
するとスイス館側のスタッフたちが「『ハイジカフェ』に並ばないでください。オープンする15時になったら来てください」と呼びかけていたという。
「先に集まっていた人たちに倣って並ぶような形で、なんとなく行列ができていたようにも思えましたが、後から来た人が案内のスタッフに“並ばないでください。列はないです”と言われていて困惑していましたね。スタッフは“15時になったら来てください”と繰り返すばかりで、どうしていいかわからず立ちすくんでいる人もいました」
『ハイジカフェ』のオープン時間が近づいてくると、入口の道に向かってオーストリア館の行列の人たちまで押し寄せてきてしまい、危ない場面もあった。
「とにかく雨風がひどく、ポンチョ姿の人もいたけど、傘をさしている人たちが多くて、子どもや背の低い人の目に傘の露先がささりそうで冷や冷やしました。みんな“自分は並んでいる”と思っているから、横入りをさせないために後ろから押してくるんです。このままだと危ない、けが人が出るかもと心配になりました」
同様に感じた人は多かったようで、並んでいた何人かの日本人来場者がスイス館のスタッフや近くにいたセキュリティスタッフと思われる会場関係者に列の整理など対策を講じるよう訴えたという。だが、現場で判断し、対処できるスタッフがおらず、混乱は続いた。
「集まった人たちの中から『私たちはずっと並んでいるのに、後から来た人が前にいるのはずるい』と不満を漏らす声も聞こえてきました」
こうした殺伐した雰囲気のなか「ハイジはそんなこと望んでなんていない!」と周囲に聞こえる声で嘆く人が現れる事態に。ある来場者は「その通り! ハイジが泣いているよ、と心の中で拍手しました。この声で冷静になった人もいたのでは」と話す。
結局、『ハイジカフェ』の厨房でトラブルがあり、16時すぎになっても開店せず、スタッフから「いつ開店するかわからない」「いま並んでいても入店できるかわからない」とアナウンスがあると、離脱する人が相次ぎ、現場はようやく落ち着きを取り戻していたという。
翌日はハイジカフェ用の列がつくられていたので、スイス館側が開幕日の問題を踏まえて並ぶルールを導入したのだろう。
現在は万博会場も落ち着いてきているようだが、大勢の人が楽しみにするイベントだけに閉幕まで大きなトラブルがないことを願う。