“タイパ”が重視される現代では、食事も簡単に済ませたいと“とある飲み物”を日常的に飲んでいるという人は少なくないはずです。しかし、『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)著者で糖尿病専門医の大坂貴史氏は、その飲み物について「おすすめしない」と断言します。その飲み物とはいったいなんなのか……理由とともに、血糖値安定のために摂取したい食品もあわせてみていきましょう。
〈本記事の登場人物〉坂田加奈子さん(43歳・女性)1児の母。職場では課長を務めるワーキングマザー。父が糖尿病を患っていることから健康には気をつけていたが、健診でまさかの「再検査」に。内科クリニックで「OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)」を受けたところ「糖尿病」と診断を受けるも、その後専門医に診てもらったところ糖尿病ではないことが判明。内科クリニックでの“誤診”の原因は、極端な「糖質制限ダイエット」の最中にブドウ糖を摂取する検査を受けたことにあった。専門医は、坂田さんが「糖尿病の一歩手前である“境界型”には該当する」としたうえで、「血糖値を安定させるためには、ご飯やパンなどの主食を積極的に摂取するように」と坂田さんにとって驚きの発言を繰り返す。
〈本記事の登場人物〉
坂田加奈子さん(43歳・女性)
1児の母。職場では課長を務めるワーキングマザー。父が糖尿病を患っていることから健康には気をつけていたが、健診でまさかの「再検査」に。内科クリニックで「OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)」を受けたところ「糖尿病」と診断を受けるも、その後専門医に診てもらったところ糖尿病ではないことが判明。内科クリニックでの“誤診”の原因は、極端な「糖質制限ダイエット」の最中にブドウ糖を摂取する検査を受けたことにあった。専門医は、坂田さんが「糖尿病の一歩手前である“境界型”には該当する」としたうえで、「血糖値を安定させるためには、ご飯やパンなどの主食を積極的に摂取するように」と坂田さんにとって驚きの発言を繰り返す。
「先生、食物繊維が大事ということは、やっぱり野菜は重要ですよね?」
「野菜は好きですか?」
「好きですが、たくさん食べられているかというと足りない気がしています」
「どうやって食べることが多いですか?」
「レタスをちぎったり、ミニトマトをかじったり。自宅ではあまり手間がかからないものばかりですが……」
「それは継続してください。手間をかけないことはポイントです。ちなみに野菜を食べることは大切ですが、食物繊維量だけに限って言えば、生野菜だけでなく米や小麦、そばなどの穀類をしっかり食べることでカバーしやすいです。
日本人の食物繊維摂取量が減っていることには、野菜不足に加えて、玄米や全粒穀物などの未精製の穀類が減っている影響が大きいと考えられます。もちろん野菜にも食物繊維が含まれますし、ビタミン、ミネラルを含めて、体の調子を整える栄養素が摂れる食材です。カラフルな野菜は食卓を華やかにしてくれますしね」
「野菜ジュースでもいいですか?」
「その話は後ほど詳しく説明します。先に野菜の食べ方についての話を続けますね。野菜を増やす工夫としては、先ほどのレタスやミニトマトの下に千切りキャベツを置くだけでもいいですよ。千切り専用ピーラーも便利ですし、何なら千切りになったカット野菜がスーパーに売られています。そういうもので上手に工夫してみるといいかもしれません」
「炒めもの用の野菜セットは買ったことがあります」
「そうですか。そういう商品も使いながらでいいですよ。野菜の量を増やすには、加熱するとカサが減ってたくさん食べられますね。食物繊維の面から言えば、葉物よりも、豆類やいも類、海藻などを増やすように意識するといいでしょう」
いもって糖質が多いから血糖値を上げやすいんじゃなかったっけと思ったところで、糖質制限から頭を切り替えなきゃと思い直すことができた。
「先生、野菜を先に食べる“ベジファースト”で、血糖値は上がりにくくなるんですよね?」
「“ベジファースト”をしていますか?」
「必ずではないですが、思い出したときには先に野菜を食べるようにしています」
「では、それを継続でいいと思いますよ。ただ、野菜を先に食べるだけで血糖値が上がりにくくなることを示す決定的な報告は出ていないんですよ」
え、何ですと? と、面食らった顔をしているのが先生にもわかったよう。先生も苦笑いをしながら、教えてくれた。
「根拠が乏しいこともあって、糖尿病の食事指導の項目からもベジファーストについての記載は削除されています。とにかく野菜を全部先に食べきってからほかのおかずに手をつけるという順序を徹底する必要はありません。温かいものは温かいうちに。料理をおいしく食べられるタイミングで食べればいいと思いますよ」
メディアで言われている情報を鵜呑みにしている自分に気づいた。
〈先生からの処方箋〉野菜には手間をかけなくていい。食べる順よりも“適切な量を食べる”ことが大事!
〈先生からの処方箋〉
野菜には手間をかけなくていい。食べる順よりも“適切な量を食べる”ことが大事!
「野菜ジュースの話が出ましたが、坂田さんは野菜ジュースを飲みますか?」
「はい。ランチは外食が多いので、野菜不足にならないように野菜ジュースを買うことがよくあります」
「そうですか。そのほかに、カロリーを含むドリンクを飲みますか?」
「はい。糖質制限をする前は、美容効果を期待してビネガードリンクを毎朝飲んでいました。あとは、カフェでハニーラテをよく頼みます」
「わかりました。やめられそうですか?」
「やめたほうがいいですか?」
やめられますと即答できない私は、疑問形で返事をしてみた。
「そうですね。甘い飲み物は糖質の吸収が非常に早いので、血糖値を急激に上げてしまいます。
すると、今の坂田さんのようにインスリンの分泌がうまくいかないと血糖値が高い状態が続きやすくなります。また血中に糖が増えれば、中性脂肪も増加して太りやすくもなります。
糖尿病だけに限らず、健康維持のためにカロリーを含む甘いドリンクはやめるのがベストです」
「野菜ジュースもですか? ビタミン不足になりそうな気がして……」
「野菜ジュースからは食物繊維が取り除かれているので、完全に野菜とは別の食品だと思ってください。健康のためにという謳い文句に誘われやすいですが、甘みは糖分なので、血糖値を上げる飲み物です。
ビタミンはジュースではなく、野菜から摂りましょう。もし不足が気になるなら、食後にみかんを1個食べるほうがずっといいですね。ビネガードリンクも同じ理由でやめるのがベストです」
「では、ハニーラテははちみつを抜いて、ラテならOKでしょうか?」
「そうですね。ラテがベターです。ただ、牛乳にも乳糖という糖が含まれるので、コーヒーならブラックがベストです。普段飲むなら、水かお茶にしましょう」
「糖質制限はしなくていいけれど、甘い飲み物は制限したほうがいいのですね」
「糖質とひとくくりにしがちですが、穀類には糖質以外に食物繊維のほか、さまざまな栄養素が含まれます。いっぽう、ジュースは“糖質の塊”です。水に溶けてさらに体に吸収されやすくなっているので、とても危険です。
あれもこれもやめてとうるさく言いたくないと思っていますが、飲まなければ血糖値が下がるので、甘いドリンクはやめたほうがいいです」
甘いドリンクに頼ってきたので不安はあるが、ここは先生の言うとおりにしよう。
〈先生からの処方箋〉糖尿病を遠ざけるには、甘いドリンクと決別を!
〈先生からの処方箋〉
糖尿病を遠ざけるには、甘いドリンクと決別を!
大坂 貴史糖尿病専門医・指導医総合内科専門医