東京都や群馬県、北海道、三重・桑名市で、カスタマーハラスメントを禁じる条例が1日施行されました。顧客側への罰則はないものの、踏み込んだ対応を取る自治体もあります。加害者にはどんな人が多く、私たちはどう気をつけるべきでしょうか?そこで今回の#みんなのギモンでは、「カスハラ防止条例 名前公表も?」をテーマに解説します。■条例制定で…効果発揮できる?小野高弘・日本テレビ解説委員「客から理不尽な要求や暴言などを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)を禁止する条例が、全国で初めて、1日から東京都や群馬県、北海道、三重・桑名市で施行されます」

「東京都の条例ではカスハラは『顧客等からの就業者に対する著しい迷惑行為であり、働く人の就業環境を害するもの』と定義。客側にはカスハラをしないよう求め、事業者側には従業員を守るためカスハラ防止措置を講じることが努力義務と定めています」鈴江奈々アナウンサー「こういった条例が必要とされている状況であるということが、ちょっと残念な気持ちではありますけれども、これができることで抑止力につながるといいですよね」小野解説委員「問題は、条例を作って実際に効果を発揮できるかということです。東京都をはじめ各地の条例にはカスハラをした顧客に対する罰則は盛り込まれていません。なぜなら、カスハラと考えられる行為は幅広いからです」「暴言・暴力、土下座の強要、長電話で長時間拘束するなど、様々なケースがあります。罰則を設けるとしたら刑罰の対象とするわけなので、この行為は刑罰の対象だと厳格に定める必要があります」「また東京都の説明では、『禁止されていない行為はやってもいいのではないか』という誤った理解が広がる心配もあるといいます」森圭介アナウンサー「そもそも『(禁止事項として)書いていなかったらやっていい』という考え自体がどうかなとは思いますが、お店の方々を守るためには必要なんでしょうね」斎藤佑樹キャスター「こういう条例があると客側の意識も変わりますし、見ている周りの方たちが『悪いことだ、注意していいんだ』と言いやすくなるかなと思います」■桑名市では全国初の「制裁措置」小野解説委員「どうやって意識を高めてもらうかという中で、踏み込んだ対応を取るのが三重・桑名市です。1日に施行した条例には、全国初の制裁措置が盛り込まれています。制裁措置とは穏やかではない感じもしますが…」「悪質なカスハラを繰り返した場合、氏名や行為の内容などを公表するとしています。20歳以上が対象で、カスハラを行った人の氏名と弁明内容などを市のホームページに1年程度掲載するといいます。もちろんこれは最終手段です」「事業者がカスハラ防止策を講じなくてはならないのはもちろんのこと、カスハラをした人の氏名が公表されるまでには、プロセスがあります」「被害を受けた人や事業者が市の相談窓口に相談し、相談を受けた市は弁護士などで構成される対策委員会に意見を求め、委員会が本人に話を聞くなどして調査。その上で、カスハラにあたるかどうか判断します」「カスハラだと判断されたら桑名市が警告を行い、こうしたカスハラがあったという概要も公表します」直川貴博キャスター(元福島中央テレビアナウンサー)「この時点で名前も公表されてしまうんですか?」小野解説委員「この時点では氏名は公表されず、本人に対する警告のみです。警告を受けたのに再びカスハラを行った場合、市は対策委員会に意見を聞くとともに、市側が本人に直接話を聞いた上で、カスハラをした人の氏名などを公表するということです」「丁寧な手順を踏むようには見えますが、それでも氏名を公表するのは重い措置です。市議会の議論では、こうしたプロセスで本当に大丈夫か不安が残るという反対意見もありました。それでも、より抑止力を高めるためにここまで踏み切りました」森アナウンサー「これだけ手順があると時間もかかって本当に大変な作業になるでしょうが、名前を出されたくないんだったらそもそもカスハラをしないで、となればいいですね」■どんなカスハラ被害が?…調査結果小野解説委員「繊維や流通などの労働組合でつくるUAゼンセンが去年行った調査では、『直近2年以内にカスハラ被害に遭った』という人は46.8%。約2人に1人いました。カスハラをした客の推定年齢は60代が29.4%と最も多く、次いで50代(27.2%)でした」「どんな要求を受けたかについては、『不手際などに関する謝罪の要求』が3割近い29.2%、『商品を取り換えろ、サービスをやり直せ』が16.3%、『上の者が出てきて謝罪しろ』が15.1%でした」■カスハラ行為者に多い特徴は?小野解説委員「では、どんな人がカスハラをしやすいのか。専門家に聞きました。社会心理や消費者心理、悪質クレームについて研究する関西大学の池内裕美教授は、中高年にカスハラ行為者が多く、高学歴、高所得、社会的地位が高いなどの特徴が見られるそうです」「その上で、中高年でカスハラをする人は3つのタイプが目立つそうです。地位や権威を振りかざしながら自分の主張を通そうとする『筋論型』、正義感から教育してあげようとする『世直し型』」「そして、主張が通らないと声を荒らげる『ストレス発散型』。きっかけは小さなクレームでも、だんだん他の社会的な不満のストレスもぶつけ始めるそうです」■カスハラ加害者にならないために…小野解説委員「自分がカスハラ加害者にならないためにはどうしたらいいのか。池内教授によると、意識してほしいのは『クッション言葉』です。お店の人に何かお願いする時、『申し訳ないんですけど』『お忙しいところすみませんが』と挟んでから交換をお願いするなどします」「柔らかいクッション言葉を挟んでからお願いやクレームを伝えるといいそうです。斎藤さんだったら…?」斎藤キャスター「シチュエーションにもよりますが『僕が間違っていたら申し訳ないんですけど、これってこうじゃないですか?』と言いますね」鈴江アナウンサー「自分に間違いがあるかもしれない、という…」小野解説委員「クッション言葉を意識して挟んでいくと、威圧的になるのを抑えられるそうです。また、相手の状況や仕事の範囲を理解して接することも重要です」鈴江アナウンサー「ストレスをぶつけて、また新たなストレスが生まれてという負のサイクルを一旦断ち切って思いやりを持って接することを心掛けたいと思います」小野解説委員「クレームを言うことが悪いというわけではありません。その伝え方を意識しましょうという話です。いかがお考えでしょうか?」(2025年4月1日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
東京都や群馬県、北海道、三重・桑名市で、カスタマーハラスメントを禁じる条例が1日施行されました。顧客側への罰則はないものの、踏み込んだ対応を取る自治体もあります。加害者にはどんな人が多く、私たちはどう気をつけるべきでしょうか?
そこで今回の#みんなのギモンでは、「カスハラ防止条例 名前公表も?」をテーマに解説します。
小野高弘・日本テレビ解説委員「客から理不尽な要求や暴言などを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)を禁止する条例が、全国で初めて、1日から東京都や群馬県、北海道、三重・桑名市で施行されます」
「東京都の条例ではカスハラは『顧客等からの就業者に対する著しい迷惑行為であり、働く人の就業環境を害するもの』と定義。客側にはカスハラをしないよう求め、事業者側には従業員を守るためカスハラ防止措置を講じることが努力義務と定めています」
鈴江奈々アナウンサー「こういった条例が必要とされている状況であるということが、ちょっと残念な気持ちではありますけれども、これができることで抑止力につながるといいですよね」
小野解説委員「問題は、条例を作って実際に効果を発揮できるかということです。東京都をはじめ各地の条例にはカスハラをした顧客に対する罰則は盛り込まれていません。なぜなら、カスハラと考えられる行為は幅広いからです」
「暴言・暴力、土下座の強要、長電話で長時間拘束するなど、様々なケースがあります。罰則を設けるとしたら刑罰の対象とするわけなので、この行為は刑罰の対象だと厳格に定める必要があります」
「また東京都の説明では、『禁止されていない行為はやってもいいのではないか』という誤った理解が広がる心配もあるといいます」
森圭介アナウンサー「そもそも『(禁止事項として)書いていなかったらやっていい』という考え自体がどうかなとは思いますが、お店の方々を守るためには必要なんでしょうね」
斎藤佑樹キャスター「こういう条例があると客側の意識も変わりますし、見ている周りの方たちが『悪いことだ、注意していいんだ』と言いやすくなるかなと思います」
小野解説委員「どうやって意識を高めてもらうかという中で、踏み込んだ対応を取るのが三重・桑名市です。1日に施行した条例には、全国初の制裁措置が盛り込まれています。制裁措置とは穏やかではない感じもしますが…」
「悪質なカスハラを繰り返した場合、氏名や行為の内容などを公表するとしています。20歳以上が対象で、カスハラを行った人の氏名と弁明内容などを市のホームページに1年程度掲載するといいます。もちろんこれは最終手段です」
「事業者がカスハラ防止策を講じなくてはならないのはもちろんのこと、カスハラをした人の氏名が公表されるまでには、プロセスがあります」
「被害を受けた人や事業者が市の相談窓口に相談し、相談を受けた市は弁護士などで構成される対策委員会に意見を求め、委員会が本人に話を聞くなどして調査。その上で、カスハラにあたるかどうか判断します」
「カスハラだと判断されたら桑名市が警告を行い、こうしたカスハラがあったという概要も公表します」
直川貴博キャスター(元福島中央テレビアナウンサー)「この時点で名前も公表されてしまうんですか?」
小野解説委員「この時点では氏名は公表されず、本人に対する警告のみです。警告を受けたのに再びカスハラを行った場合、市は対策委員会に意見を聞くとともに、市側が本人に直接話を聞いた上で、カスハラをした人の氏名などを公表するということです」
「丁寧な手順を踏むようには見えますが、それでも氏名を公表するのは重い措置です。市議会の議論では、こうしたプロセスで本当に大丈夫か不安が残るという反対意見もありました。それでも、より抑止力を高めるためにここまで踏み切りました」
森アナウンサー「これだけ手順があると時間もかかって本当に大変な作業になるでしょうが、名前を出されたくないんだったらそもそもカスハラをしないで、となればいいですね」
小野解説委員「繊維や流通などの労働組合でつくるUAゼンセンが去年行った調査では、『直近2年以内にカスハラ被害に遭った』という人は46.8%。約2人に1人いました。カスハラをした客の推定年齢は60代が29.4%と最も多く、次いで50代(27.2%)でした」
「どんな要求を受けたかについては、『不手際などに関する謝罪の要求』が3割近い29.2%、『商品を取り換えろ、サービスをやり直せ』が16.3%、『上の者が出てきて謝罪しろ』が15.1%でした」
小野解説委員「では、どんな人がカスハラをしやすいのか。専門家に聞きました。社会心理や消費者心理、悪質クレームについて研究する関西大学の池内裕美教授は、中高年にカスハラ行為者が多く、高学歴、高所得、社会的地位が高いなどの特徴が見られるそうです」
「その上で、中高年でカスハラをする人は3つのタイプが目立つそうです。地位や権威を振りかざしながら自分の主張を通そうとする『筋論型』、正義感から教育してあげようとする『世直し型』」
「そして、主張が通らないと声を荒らげる『ストレス発散型』。きっかけは小さなクレームでも、だんだん他の社会的な不満のストレスもぶつけ始めるそうです」
小野解説委員「自分がカスハラ加害者にならないためにはどうしたらいいのか。池内教授によると、意識してほしいのは『クッション言葉』です。お店の人に何かお願いする時、『申し訳ないんですけど』『お忙しいところすみませんが』と挟んでから交換をお願いするなどします」
「柔らかいクッション言葉を挟んでからお願いやクレームを伝えるといいそうです。斎藤さんだったら…?」
斎藤キャスター「シチュエーションにもよりますが『僕が間違っていたら申し訳ないんですけど、これってこうじゃないですか?』と言いますね」
鈴江アナウンサー「自分に間違いがあるかもしれない、という…」
小野解説委員「クッション言葉を意識して挟んでいくと、威圧的になるのを抑えられるそうです。また、相手の状況や仕事の範囲を理解して接することも重要です」
鈴江アナウンサー「ストレスをぶつけて、また新たなストレスが生まれてという負のサイクルを一旦断ち切って思いやりを持って接することを心掛けたいと思います」
小野解説委員「クレームを言うことが悪いというわけではありません。その伝え方を意識しましょうという話です。いかがお考えでしょうか?」
【みんなのギモン】身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)