北海道・旭川市を流れる石狩川の渓谷、神居古潭にかかる神居大橋。観光客が数多く訪れる風光明媚なこの橋で、2024年4月、無惨にも女子高校生(当時17)が転落させられ、亡くなった。
【写真】「顔は可愛いけど性格ブス」小西被告の卒アル写真ほか、内田被告と不倫相手だったX刑事の2ショット他
この「旭川女子高生殺害事件」で、殺人などの罪に問われた旭川市の無職・小西優花被告(20)の裁判員裁判が2月27日、主犯とされている同市の無職・内田梨瑚被告(22)に先行して旭川地裁で始まった。
小西被告は事件当時19歳。特定少年に該当するが、地検が起訴した際に「少年法の趣旨や事案の重大性から氏名を公表するのが相当と判断した」と氏名を公表。道内で初めて実名が公表された特定少年の裁判となった。
「小西被告は起訴内容を認めており、本裁判での主な争点は量刑となります。それには事件の残虐性や、小西被告の主体性、犯行動機などが大きく影響を及ぼします。冒頭陳述では、まず事案の概要が説明されました」(地元紙社会部記者)
小西被告が初公判で問われている罪は3つだ。
【1】昨年4月18日夜から翌未明にかけ、共犯者らとともに被害女子高生が内田被告の画像を無断でSNSに投稿したことに因縁を付け、女子高生を車に乗せて約4時間にわたって車内等に監禁した(監禁罪)
【2】全裸にさせた女子高生を地面に土下座して謝罪させたり、神居大橋の欄干に座らせて謝罪させたりしている状況を動画撮影するなどのわいせつな行為をしている最中に殺害した(不同意わいせつ致死罪)
【3】被告らに対して極度の恐怖心を抱いていた被害者に対し、殺意をもって、神居大橋の欄干に座らせて「落ちろ」「死ねや」と何度も言うなどし、女子高生を神居大橋から落下させて殺害した(殺人罪)
前出の地元紙社会部記者が、検察側の冒頭陳述について解説する。
「そもそもこの事件のきっかけは、女子高生が食事をする内田被告が映った画像を無断でSNSでアップしたこと。あまりに些細な出来事ですが、それが殺害事件に発展した経緯はどのようなものだったのか。冒頭陳述では、被告らの耳を疑うような理不尽かつ酷い言動の数々について明かされました」
被害者が内田被告が映った画像をSNSに投稿したのは、昨年4月18日午後8時半過ぎのことだった。
「画像に映っていたのは内田被告がラーメンを食べている姿で、顔は麺と箸で隠れていたそうです。共犯者の少年からの連絡でこれを知った内田被告は、すぐに女子高生に連絡した。女子高生は内田被告に謝罪したが、怒りが収まらない内田被告は示談金として50万円を要求。少年は『どう落とし前つけんの』、内田被告も『じゃあ家族ごと潰していいんだね』などと女子高生を恫喝しました」(同前)
女子高生は謝罪しながらも、自宅住所を教えることや、保護者と電話を替わることなどを拒否したという。そして内田被告は午後10時15分過ぎに、被害者を「道の駅るもい」に呼び出し、別の共犯少年とともに、旭川から留萌に向かった。
午後11時半すぎ、内田被告は道の駅で女子高生を発見。「お前黙って乗っていろよ。バッタバタ(※ボコボコの意)にしてやるから」と、女子高生を車に乗せて、旭川に戻った。
「この間に内田被告は複数回、小西被告とやり取りをし、口止めに使う契約書を作るように指示していました。日付が変わって午前2時半過ぎ、小西被告も合流。女子高生はすでに土下座動画を内田被告に撮影されるなどしていました。小西被告も合流するやいなや、被害者を強い口調で責め立てた」(同前)
午前3時過ぎ、少年のひとりを家に送り届ける途中、女子高生がトイレに行きたがったためコンビニに立ち寄った。小西被告と少年はトイレの近くで待機していたという。トイレから出た女子高生は従業員に「すいません、助けてください。通報してください」などと助けを求めた。
「女子高生はコンビニのカウンターにしがみつくなど必死に抵抗したようです。しかし小西被告が、女子高生を無理矢理店外に引きずりだした。連れ出した店舗裏手では、小西被告が被害者に馬乗りになって、内田被告と共に、顔面を複数回殴るなどの暴行を加えました。
しかしコンビニなどからの通報を恐れ、場所を変えることにした。人目のつかないところでさらに暴行を加えようと、殺害現場となる神居古潭に向かったようです」
午前3時半頃、一行は神居古潭の駐車場に到着した。
「両被告は車内で被害者を全裸にさせました。それも座席に座ることを許さず、車の床で服を脱ぐように強いていたようです。検察の冒頭陳述によると、脱ぐのに手間どる女子高生の服の一部を小西被告が脱がせてもいます。
車外に出た小西被告らは、女子高生が着ていた服を草むらに投げ捨て、彼女の土下座動画を撮影。その後、殺害現場となった橋の方へと連れて行きました」(同前)
この日の最高気温は6℃。夜中はさぞや冷え込んだことだろう。神居古潭周辺では小雨もぱらついていたという。
内田被告は少年のひとりとビデオ通話をはじめ、小西被告は被害者に馬乗りになって顔面を複数回殴り、両手で首を絞めた。ビデオ通話を続ける内田被告も被害者の腹を蹴るなどした。
「それから女子高生を高さ約1.2メートル、幅約15センチメートルの欄干に座らせ、再度謝罪を強制。加えて小西被告は女子高生の両膝を持ち上げて、落下させるそぶりをした。その時は女子高生が橋の中に飛び込んだため、落下はまぬがれました。
しかし再度、女子高生は欄干に座らせられた。そして両被告は『落ちろ』『死ねや』などと何度も怒鳴り、落下させました。そうして女子高生は橋の下に流れる川で溺れて窒息死した、というのが法廷で検察側が明らかにした殺害の経緯です」(同前)
女子高生が内田被告の画像をSNSに投稿し、橋から落下するまでわずか7時間強のできごとだった。この間、彼女の恐怖はいかばかりだっただろうか。
検察側は、小西被告が一連の犯行の中核をなす部分を実行しており、また内田被告と同等の役割を主体的に行なったと指摘。内田被告との関係についても、『恩義を感じて慕っていた』『仲間意識を持っていた』と主張している。
一方、小西被告の弁護側は、今後小西被告と内田被告の間には明確な上下関係があり、犯行も内田被告の指示や命令に従って行なったと主張していくと見られている。
小西被告の裁判では、3月3日に内田被告の証人尋問も予定されているという。