2023年、埼玉県さいたま市内の小学校に通う6年生だったシロウくん(仮名)が、クラス内で起きたイジメの加害者に仕立て上げられ、それを苦にして自殺未遂に追い込まれる事件が起きていたことがわかった。
【写真】シロウくんが同級生のメガネを流させられたトイレ。こんなところに閉じ込められていたとは…
クラス内で起きたイジメの首謀者に仕立て上げられて苦しんだシロウくん
シロウくんへのイジメが始まったのは、5年生の頃だった。同じクラスの女子児童からターゲットにされ、何度も消しゴムを盗まれる嫌がらせを受けたという。被害は買ったばかりのものを含めて7~8回に及び、消しゴムに名前を書いたり複数準備して学校へ行くなどの対策をしたが、そのたびに筆箱から盗まれていた。
他にも、机の中身を荒らされるなどの被害を受けていた。
「机の中身を机の上に出されていたこともあったようです。消しゴムを取られた直後には、クラスの何人かがニヤニヤしていたのを見たと息子は言っています。その児童たちは息子の消しゴムを持っていることは認めましたが、盗んだとは認めず、返却もしませんでした」(シロウくんの母親)
シロウくんは、自分がターゲットにされた理由がわからなかったという。
「なぜ狙われたのかは思い当たることがありませんが、誰がとったのかはわかっていました。仕返しが怖くて誰にも言えませんでした。本当にひどいなと思いました」
6年になるとクラス替えがあったが、状況はむしろ悪化した。クラスにはイジメを主導する3人の男子がいて、シロウくんや別の女子児童A子さんがターゲットにされていた。

そして6月初旬、3人のイジメっ子男子がA子さんのメガネを奪い、トイレに流す最大の事件が起きた。
ある日の午前、男子グループの1人がA子さんのメガネを奪って廊下へ持ち出すのをシロウくんは目撃した。その2日後、シロウくんはトイレに呼び出された。
「僕が教室にいたら、3人組の1人が近寄ってきて『トイレに来い』と言われました。トイレに行く途中で残りの2人もついて来ました。男子トイレの個室まで連れていかれて、個室の引き戸を開けて中に入るように言われました。そして僕にA子さんのメガネをトイレットペーパーで巻くように言ったんです」
シロウくんはおかしいと感じ、メガネをトイレットペーパーで巻くことを拒否したが、3人に「早く巻けよ」と煽られ、恐怖を感じてトイレットペーパーを3周ほど巻かされた。3人はそれを取り上げるとさらに巻きつけ、塊の状態にした。
すると3人は塊になったメガネをシロウくんに渡すと、「トイレに流せ!」と指示した。シロウくんは今度は強く指示を拒み、3人は何度も「流せ」と命令したが、しばらくすると昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。結局、3人は「(メガネをトイレの)棚の上に置け」と言い残して逃げ、シロウくんもメガネを置いて教室に戻った。
「(トイレでの出来事は)いじめだと思った。自分の中では、消しゴムを取られたことと比べて、されたことの重さが違う。感じたことの重さが違いました。怖かったです」

しかし、悪夢は終わらなかった。帰りの会の前にシロウ君は3人組に「トイレに来い」と再び呼び出され、男子トイレの個室へ1人で入れられ、ドアを閉められた。シロウくんが個室に入った時点で、便器の中にはトイレットペーパーに巻かれたA子さんのメガネと思われる塊が捨てられていた。3人から強く「流せ」と指示されたシロウ君は拒否できず、ついに流してしまったという。
「連れてこられてから(体感で)10分間閉じ込められ、怖かったので流してしまいました。やっとドアを開けると3人はすでにトイレから逃げていて、口止めをされていたし、心配をかけたくなかったので親にも言えず、悩んだままでした。その後も、何事もなかったかのように我慢して登校しました」
翌日以降シロウくんが学校に行くと、何度も3人から口止めを受けたという。
「怖くて先生に言うことも何もできませんでした」
しかしA子さんのメガネは実際に無くなっており、3人組がA子さんのメガネを持っているのを見たという通報があったことで、2週間後に事件が発覚。担任の教師は3人の男子児童とシロウくんに聞き取りを行った。この時、3人は口裏を合わせてシロウくんがやったことだと主張した。そしてシロウくんに対しても、そのうちの1人が「お前が全部やったことにしたからな」と脅した。

そして担任も3人の証言を信じ、シロウくんがA子さんのメガネを捨てたことを前提に話をするようになったという。
「移動教室で他の子がいないときに聞き取りがあったんですが、自分の話は信じてもらえませんでした。2回聞かれて、合わせて1時間くらいだと思います。3人組に『流せ』と言われたと話したのですが、いつの間にか僕が流したことになっていて、辛い気持ちになりました」
〈「犯人がうそをついているのに自分のせいにされた」イジメ加害者に仕立て上げられた小6男子が自殺未遂 ノートに書きつけた“切実すぎる9行の言葉”〉へ続く
(渋井 哲也)