福岡市の大型商業施設で2020年、客の女性(当時21歳)が当時15歳だった男(19)(殺人罪などで服役中)に刺殺された事件で、遺族が男とその母親に約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は24日、男に約5400万円の賠償を命じた。
上田洋幸裁判長は、男の賠償責任は認めたが、男の母親については監督義務違反を認めず、請求を棄却した。
原告で女性の母親(50歳代)は判決後の記者会見で「言葉が出てこない」と涙ながらに訴えた。
男とともにその母親の責任を問うために踏み切った今回の訴訟。男の母親も被告にしたのは、「きちんと育てていれば事件は起きなかったのでは」という疑問が拭えなかったためだ。判決前には「冷たい娘の体に触れた時から、時間は止まったまま。男とその母親には大切な娘の命を奪ったことの重みをしっかりと理解してほしい」と話していた。
昨年夏、服役中の男に心情等伝達制度に基づき聞きたいことなどを書面に記して送った。届いた返事には「娘に抵抗されたとき、どのように思ったか」の問いに「偽善者ですね」と回答するなど、心ない言葉ばかりが並んでいた。
昨年12月には法廷で「すごくいい子で、皆が成長を楽しみにしていた。何でむごい殺され方をしなければならなかったのか。娘を返してほしい」と訴えた。しかし、この日の判決は男の母親の監督義務違反を認めなかった。女性の母親は「施設に預けていれば母親の責任を認められないなんて、こんな悔しいことがあるのか」と憤った。