乳がん検診といえば、乳房を強く圧迫してレントゲンを撮影するマンモグラフィを受ければいい、と思うかもしれない。ところが最近、日本人女性にはマンモグラフィが「向いていない」ことが分かってきている。
じつは、乳房には乳腺組織の密度が高い高濃度乳房と、まばらな脂肪性乳房がある。日本人女性には高濃度乳房を持つ人が多く、8割近いというデータもある一方で、欧米では高濃度乳房の持ち主は3~4割にすぎないのだ。静岡県立静岡がんセンター・乳腺画像診断科部長の植松孝悦医師が言う。
「高濃度乳房はマンモグラフィで全体が白く写るため、同じように白く写るがんの腫瘤が紛れて見つけづらいのです。欧米ではマンモグラフィ検診の普及で乳がんの死亡率が減っているのに対し、日本ではあまり減っていない一因に、高濃度乳房の女性が多いことが考えられます。
自分の乳房が高濃度かどうかを調べるには、マンモグラフィを受けるしかありません。ただ、アメリカでは昨年から、マンモグラフィ検診受診者に高濃度乳房かそうでないかを通知することが義務づけられましたが、日本では自分から医師や受診した施設に聞かない限り教えてもらえない。マンモグラフィを受けたら、自分から必ず聞くようにしましょう」
高濃度乳房を持つ人が乳がんをより正確に見つけるには、超音波検査との併用が有効だ。自治体の検診では、マンモグラフィだけ受けられるところが多いが、超音波検査も検討したほうがいい。
「ただし超音波検査を受けることで、偽陽性(がんがないのにがんの疑いがあると判定されること)が増えるおそれがある点は、事前に知っておきましょう。
今は『ブレスト・アウェアネス』といって、入浴時などに乳房を見たり触ったりして、しこりなどの異変に注意する習慣を持つことが、早期発見に繋がるとして推奨されています」
乳がんが多発する年齢のピークは40代後半で、育児や家事、親の介護で忙しい人も多く、検査が後回しになりがちだ。乳がんは早期発見・早期治療で治せるがんと言われるから、時間をとって早めに受診したい。
「週刊現代」2025年2月22・3月1日合併号より
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