東京・新宿の待ち合わせスポットで知られる商業施設「新宿アルタ」が2月28日で営業終了となった。再開発が進む都心は待ち合わせの名所が次々と消えている。渋谷の忠犬ハチ公像も再開発の波にのまれ、JR渋谷駅前から一時的に消える日が来る可能性があるのだ。
タモリが司会を務めた「笑っていいとも!」(フジテレビ系)の撮影スタジオがあった新宿アルタはJR新宿駅東口の出口前に位置し、待ち合わせ場所などで長年親しまれた。ビルを所有するダイビルは今後については建て替えも含めて、検討中で、いずれは「アルタ前で待ち合わせ」と言っても通じなくなることになりそうだ。
新宿と並んで都内屈指の繁華街である渋谷も100年に一度の大規模再開発の真っただ中にある。駅周辺では渋谷の名を冠する「ヒカリエ」「ストリーム」「キャスト」「ブリッジ」「ソラスタ」「フクラス」「スクランブルスクエア」「アクシュ」「サクラステージ」などの商業ビルが誕生。2027年にはスクランブルスクエアの中央・西棟が開業し、一昨年に閉店した東急百貨店本店の跡地では「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」が進み、新たなランドマークが誕生する運びだ。
再開発工事に伴い、まず駅前から移転となったのは「渋谷モヤイ像」だ。1980年に伊豆諸島の新島村から渋谷区へ寄贈されたイースター島のモアイ像に似たデザインで長年、渋谷駅西口の待ち合わせスポットだった。工事で囲いに覆われ、立ち入ることができなくなっていたが、昨年11月に約200メートル離れた道玄坂の「渋谷フクラス」の裏路地に移転となった。駅から離れた場所になったことで、待ち合わせには適さなくなってしまった。
同じく移転を避けられないのが渋谷で不動のシンボルとして、駅前に鎮座する忠犬ハチ公像だ。スクランブル交差点に面するハチ公広場も再開発の対象で、1月からはJR渋谷駅の最寄りの改札となっていたハチ公改札は60メートル離れた宮益坂側に移設された。広場前に設置されていたハチ公ファミリーの陶板レリーフも撤去されてしまった。
渋谷区によれば「ハチ公はタウンイメージをつくる重要なシンボル」とされており、今でも待ち合わせや観光スポットになっている。保存は決まっているものの、ハチ公広場の再開発工事が始まれば、閉鎖や移転は避けられない見通し。整備中や整備後にどの場所に移転するかは、時期も含めて検討中という。
施設の老朽化や再開発によって街の風景が変化していくのは避けられないものの、長年利用してきた待ち合わせスポットの場所が変わったり、なくなってしまうのは寂しいものだ。