動画のコメント機能に関する特許権を侵害されたとして、動画配信サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴ(東京)が米国のサイト運営会社FC2側を提訴した訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は3日、FC2側の特許侵害を認め、上告を棄却した。
FC2側にコメントを流すサービスの差し止めと計約1億1100万円の賠償などを命じた2審・知財高裁判決が確定した。
裁判官4人全員一致の意見。同小法廷は「海外サーバーを使っていても、実質的に国内のサービスと評価できれば特許侵害に当たる」との初判断を示した。
問題になったのは、コメントが画面上にリアルタイムで流れるように表示される機能で、ドワンゴが特許を取得している。米国に本社を置く「FC2」の動画サイトでも同様の機能が採用されており、ドワンゴが日本でのサービス差し止めなどを求めて提訴した。
特許権は、自国内でのみ効力が認められる「属地主義の原則」が2002年の最高裁判決で確立している。上告審では、米国に置かれたサーバーを介して日本のユーザーに提供されるFC2側のサービスについて、ドワンゴの特許権が及ぶのかが争点となった。
同小法廷はまず、国境を越える情報流通が容易となった現代の状況を踏まえ、「サービスが海外から発信されていることのみを理由に特許権の効力が及ばなければ、発明の保護や奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に沿わない」と指摘した。
その上で、FC2側のサービスを「ドワンゴによる発明の効果が国内のユーザーに生じている」とし、ドワンゴへの経済的影響もうかがわれるとして特許侵害を認定した。
1審・東京地裁判決は、属地主義を厳格に捉えるなどして特許侵害を否定したが、2審判決はFC2側の特許侵害を認定し賠償を命じた。
インターネットを活用した海外経由のサービスは急速に広がっており、権利侵害への懸念が強まっている。
特許庁が2023年度にグローバル展開する企業を対象に行った調査では、回答した国内約120社の7割超が国境をまたいだ特許侵害への対応に「懸念がある」と答えた。「特許侵害との指摘を回避するため、サーバーを海外に置くことは容易だ」という意見が出た。現行制度では権利が適切に保護されていないとの回答も約4割に上った。
今回の最高裁判決について、鈴木将文・早稲田大教授(知的財産法)は「ネットを通じて国境を越えた経済活動が活発に行われる時代に則して、『属地主義』の原則を柔軟に解釈した妥当な判断だ」と評価。「発明の効果が生じる場所や経済的影響といった侵害の成否の判断枠組みも示しており、ネットビジネスに関連する産業界や法律実務の参考になるだろう」と話した。
判決を受け、ドワンゴは「日本の技術保護に大きな影響を及ぼす問題について一つの指針が示されたことは大変意義深い。不明確だった特許権の適用範囲について法解釈の明確化の一助を担えたことは喜ばしい」とコメントした。FC2側はコメントを出さなかった。