食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。
長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。
『「25gの食塩を100gの水に溶かした食塩水の濃度は」……算数が苦手な大人は25%と回答。正解は?』より続く
最初に、この問題を考えよう。
40-16÷4÷2
正解を述べると
40-16÷4÷2=40-4÷2=40-2=38
となる。簡単だと思うかもしれないが、大学生の10人に1人が間違える問題でもある。
この問題に関して筆者が、2021年6月16日の現代ビジネスの記事で取り上げたところ、予想外の大反響があった。
背景には次の、四則混合計算の規則を十分に理解していないこともあるだろう。
・計算は原則として式の左から行う。
・カッコのある式の計算では、カッコの中をひとまとめに見て先に計算する。
・×(掛け算)や÷(割り算)は+(足し算)や-(引き算)より結びつきが強いと見なし、先に計算する。

53-(8+9×3)÷(13-24÷3)
=53-(8+27)÷(13-8)
=53-35÷5
=53-7=46
ちなみに、( )は小カッコ、{ }は中カッコ、[ ]は大カッコである。そして、{ }は( )の外側にあり、[ ]は{ }の外側にある。
計算法則には以下の三つがあり、それらを順に理解しよう。
なお便宜上、△、□、○は任意の自然数(勝手な正の整数)とする。
交換法則
・和(足し算)の交換法則 △+□=□+△
・積(掛け算)の交換法則 △×□=□×△
結合法則
・和の結合法則 (△+□)+○=△+(□+○)
・積の結合法則 (△×□)×○=△×(□×○)
分配法則
△×(□+○)=△×□+△×○
以下、具体例によって説明しよう。
和と積の交換法則については、
△=3、 □=5
の場合について考えよう。
和については、下図のように一列に並べた●の個数を左から数えるのも、右から数えるのも同じであることから理解できる。
積については、下図のように並べた●の個数を上段から下段に向かって一段ごとに数えるのも、左の列から右の列に向かって一列ごとに数えるのも同じであることから理解できる。
積の交換法則として留意したいことがある。江戸時代の代表的な数学教科書『塵劫記(じんこうき)』の最初のほうにある九九の表においては、3×6はあるものの6×3はないように、△×□(△≦□)はあるが△×□(△>□)はない。
このほうが、積の交換法則をその都度確認するメリットがある。
和と積の結合法則については、
△=3、 □=4、 〇=5
の場合について考えよう。
和については、下図のように一列に並んだ●の個数が左右どちらから数えても合計が同じであることから理解できる。
積について下図のように、一辺が1cmの立方体を積み上げた直方体における立方体の個数を考える。
直方体としては、縦3cm、横4cm、高さ5cmなので、立方体の個数を考えると、
(3×4)×5=3×(4×5)
が導かれる。
ちなみに、3×4は上段にある立方体の個数で、4×5は前面に見える立方体の個数である。
結合法則は、「-」や「÷」に関しては、一般には成り立たないことを具体的に確かめておこう。
(8-4)-2≠8-(4-2)
(8÷4)÷2≠8÷(4÷2)
最後に分配法則であるが、
△=3、 □=2、 〇=4
の場合について考えよう。
下図のように、縦に3個、横に6個の●が並んでいる。したがって、全部で
3×6=18(個)
の●が並んでいる。
よく見ると、点線で区切られた左側の部分と右側の部分に分けて考えることができる。そして、
左側の部分の●=3×2=6(個)
右側の部分の●=3×4=12(個)
となっている。
全部で18個ある●は、左側にある6個の●と、右側にある12個の●を合わせたものになっているので、
3×(2+4)=3×2+3×4
という式の成立を意味している。
『「京都大学の入試問題」もラクラク理解できる!幅広く応用が利く「樹形図」の考え方』へ続きます。
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