今月2日に埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ対柏レイソルの試合前に、客席で事前に申請していない「旗」を掲げたことで、退場トラブルに発展した「FCクルド」。
前編記事『【クルド人サッカーチームの主張を全部聞いてみた】《埼玉スタジアム・退場トラブル》「記念撮影の許可を得て旗を掲げた」「家族を含む58人のチケットを手配」…FCクルド監督が独白』に引き続き、FCクルドの言い分に耳を傾けるとともに、浦和レッズの広報担当者にも話を聞いた。
記念撮影のためとはいえ、無許可で「旗」を掲げたFCクルド一行は、事情聴取のため警備員に連れていかれることになった。その際にも、メティン監督は「レッズを応援するために来ていることをサポーターに理解してもらうために『浦和レッズ頑張って!』と叫んだ」と主張する。
だが一方で、険悪な雰囲気を恐れて泣き出してしまった、FCクルドの子どもたちの両親の怒りが収まることはなかった。彼らは退場時に「ありがとう、人種差別してくれて!」などの暴言を吐いてしまったという。
「また、客席で旗を掲げたときに駆け寄ってきたスタッフの中には、我々が着ていたFCクルドのユニフォームに対して『それを脱ぐか、ジャンパーで隠してください』と注意してくる人もいました。
理由を尋ねると、『ユニフォームの一部に、相手チーム(柏レイソル)と同じ黄色が入っているからです』と説明されたのですが、その時は興奮状態だったこともあり『なぜ自分たちのユニフォームを脱がなくちゃいけない』と断りました。周りにいたFCクルドのメンバーにも『脱ぐな!』と呼びかけました」(メティン監督)
早急な対応を迫られた浦和レッズ側は、その後、FCクルドに対して別席を用意した。クラブの計らいに感謝し、メティン監督は「みんなでそっちの席に移動しよう」と提案したものの、このトラブルで泣き出してしまった子どもたちの両親が応じることはなかった。
それどころか、「ここにいるとトラブルが起きるから帰りたい」と告げられたため、FCクルド一行はスタジアムを後にしたという。
この一連の主張について、浦和レッズ側はなにを思うのか。同チームの広報担当者は取材にこう答えた。(以下、一問一答)
――FCクルド側は、スタジアムの外で「旗」を掲げようとしたところ、スタッフに一度目の注意を受けたと話しています。その後、スタジアムに入った際に、スタッフに「旗の掲出」に関して懇願したところ、「記念撮影くらいならいいですよ」と許可を得たと主張しています。
「スタジアムの外ではなく、中に入場したところで、FCクルドが旗を広げていたのは事実です。そこで警備員が『申請していないアイテムは掲出できません』と注意。その後、浦和レッズのサポーターが集まる座席で旗をもう一度広げたので、最終的には私たちがお声かけして『旗の掲出をやめていただけますか?』とお話しました。
ただ記念撮影の件については、初めて知りました。そういう事実があったかどうかも含めて、クラブとしては把握しておりません」
――当日着ていたFCクルドのユニフォームに関しても、デザインの一部に、相手チーム(柏レイソル)と同じ黄色が入っているという理由で、スタッフに「ユニフォームを脱ぐか、ジャンパーで隠してください」と言われたと主張しています。
「そうした事実があったかどうかについても、現場から話はあがってきておりません。ただ、彼らが座っていた北サイドスタンド周辺は、浦和レッズのサポーターが大勢いらっしゃる座席なので、その中で対戦相手の色に近しい衣類を身につけている集団がいるとすれば、それはクルド人であるとかないとか関係なく、警備員がお声がけするのは通常の対応なのかなと思っております。
これはお客様同士のトラブル回避の観点からですので、もし当日にそのような注意があったとするならば、それは決して禁止行為として伝えているわけではなく、あくまで『お願い』としてお声がけしているんじゃないかと思います」
――今回の件に関して、見解をお聞かせください。
「事実として、私どもは観戦ルールに『無申請のフラッグは掲出できません』と定めていて、そのルールに反する行為が今回あったので、やめてくださいという話をしました。それは今回だけに限った話ではなく、ふだんからどの試合であっても、同じように事前申請されていないアイテムが掲出された際は、同じようにお声がけしています。
それこそ『ちょっと浦和レッズの試合を観てみたいな』というライトなお客さまの中には、自作のアイテムを持ち込んで掲出しようとする方はいらっしゃいます。今回に関しても、ふだん通りに禁止行為があった方に対して粛々と対応しただけなので、決してクルド人であるとかないとかは一切関係ございません」
FCクルドのメティン監督は、一連の騒動に関して浦和レッズに「協議の場」を要請。今月6日には、「旗を掲げるには事前に申請が必要であることを知らず、また相手とコミュニケーションが取れずにトラブルに発展してしまい申し訳ありませんでした」と謝罪したという。
「その協議では、私たちが浦和レッズのサポーターとして応援に行ったことや、今後も浦和レッズの試合を子どもたちに見せて、お手本にしていきたいという旨も伝えました。最後には、またいつでもお越し下さいという優しい言葉もかけてくれました」(メティン監督)
浦和レッズの広報担当者も、次のように語る。
「たしかにFCクルドの代表の方がいらして、謝罪はいただきました。ただ、別に何度も話しているように、こちらとしては規則に則って対応しただけなので、揉めているわけでもありませんでした。だから別に謝罪に来ていただかなくても良かったのですが、こちらまで来ていただくとのことでしたので、話を聞いたという感じです。
今後もご来場される際は、観戦ルールを確認して来てもらいたいということを伝えて、FCクルド側にもそれを受け入れていただきました」
ルールを知らなかったとはいえ、周囲に迷惑をかけてしまった「FCクルド」。今度はそのプレーで世間から注目を集めてほしい。
(詳しくはこちら)【クルド人サッカーチームの主張を全部聞いてみた】《埼玉スタジアム・退場トラブル》「記念撮影の許可を得て旗を掲げた」「家族を含む58人のチケットを手配」…FCクルド監督が独白