菅義偉首相時代に内閣広報官を務めていた総務官僚出身の山田真貴子氏(64)。総務省が管轄する放送事業会社に勤務する菅氏の長男らと会食していたことが2021年2月に明らかになり、国会で追及を受けるなどして辞職を余儀なくされた。2024年6月にはフジ・メディア・ホールディングスとその子会社であるフジテレビの取締役に就任したが、悪夢のような10時間超のトップ会見を取り仕切ることもできず、「広報のプロ」としての見せ場もなく不評を買い続けているという。
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ざっと山田氏の経歴を振り返っておこう。早稲田大学法学部卒業後、1984年4月に郵政省に入省し、女性として初の首相秘書官(安倍首相時代)に就任するなど、女性総務官僚としてフロンティア的なキャリアを重ねてきた。省ナンバー2の総務審議官を務めた後、2020年7月に退官。同年9月には菅内閣のもとで女性初の内閣広報官に就いたが、その官僚すごろくが暗転したのは2021年2月のことだった。
「山田氏が総務審議官在任中の2019年11月、菅氏(当時・官房長官)の長男らから接待を受けていたことが明らかになりました。菅氏の長男は総務省が管轄する放送事業会社・東北新社に勤務しており、そのような企業から“おごってもらう”ことは国家公務員倫理規定における利害関係者からの接待とみなされうるということで問題になったのです」
と、政治部デスク。山田氏は衆院予算員会に参考人招致されて野党の追及を受けるなどした後、2021年3月に辞職届を提出した。
「若い世代に向けた動画の中で自らを“飲み会を絶対に断らない女”だと言っていたことも注目され、良くない方に目立ってしまいましたね。パワハラ、モラハラの文脈からも不適切だとの指摘を受けました」(同)
その後はコンサル会社の顧問などを務めていたが、2024年6月にフジ・メディア・ホールディングスとその子会社であるフジテレビの取締役に就任した。
「東北新社に勤務していた菅氏の長男らからの接待がなければ山田氏の経歴なら、再雇用先は“いくらでも向こうから寄って来る”レベルだったとされます。が、スキャンダルでキズがついたお陰で手を差し伸べてくれるところは随分と減ってしまったようです。フジの取締役就任については放送行政を所管する総務キャリアが民放キー局の取締役に収まること自体、憶測を呼びかねないため回避した方が無難だというのが霞が関内の“普通の声”でしたが、突っ走った印象です。何らかの下支え、プッシュがあったと見る向きも多く、フジの天皇・日枝久フジサンケイグループ代表の後押しの存在が指摘されていました」(同)
何もなければ悠々自適の天下り生活だったかもしれないが、就任から半年後、フジは「中居正広」問題の当事者となった。今年1月に開いた1度目の会見が参加メディアを限定したことが問題視され、2度目の会見をフルオープン・質問無制限で開くことを余儀なくされたことは周知の通りだ。
「一連のフジの苦境に山田氏がまったく機能していないとの評価が永田町や霞が関にまで聞こえてきています。内閣広報官というのは首相の会見を取り仕切り、内閣の重要政策を幅広く周知徹底させる広報のプロ、というのが普通の受け止め方でしょう。もちろん彼女の就任時に中居氏のスキャンダルを把握していたのは社内でも一握りの人ですから、責任があるわけではない。また、フジで広報官としての仕事は期待されていなかったのかもしれません。とはいえ社内のみならず世間は内閣広報官として山田氏を見て判断しますからね。1度目の会見の条件設定など、“いくらでもアドバイスできる余地はあったのに”との恨み節も社内から漏れてきています」(同)
フジ・メディア・ホールディングスは3月末予定の第三者委員会による報告を待つ身だ。
「すでに懲戒などの処分や人事案は水面下で進んでいるようですが、委員会の報告を受けて6月の株主総会に向けた動きも加速することでしょう。日枝氏の退場は避けられないとの見方は強くなってきているようです」(社会部デスク)
しがらみなどから解放された「新生フジ」をアピールする必要があるのは間違いない。その場合、就任から1年も経っていないとはいえ山田氏の立場も安泰とはいかないのではと見られているようだ。
デイリー新潮編集部