2024年の外国人観光客が過去最高となった。消費額も8兆円を超えるインバウンドフィーバーだが、400年以上の歴史を持ち、コケ庭の名所としても知られる京都の「高台寺岡林院(こうだいじ・こうりんいん)」は外国人観光客に悩まされている。
【映像】外国人に「殺すぞ!」と言われた、高台寺の住職
これまで商業目的の無断撮影や無断駐車、モミジの枝を折られるなどの被害を受けたというが、先日、Xの投稿が話題に…。
「ウチのお寺の参道を塞ぐ形で停めてた、なにわナンバーのハイエースに『お寺の前なので近くのコインパーキング入れるか何かして貰っても良いですか?』と伝えたら『白タクじゃねーよ!○すぞ!』と言われました」(X投稿より)
車に乗っていたのはアジア系外国人だとして、「申し訳ありませんが、共存は無理だと思います」とまとめた投稿には、大きな反響があった。しかし、相次ぐ外国人によるトラブルの一方、国は今後もインバウンドを増やす計画をとっている。『ABEMA Prime』では、迷惑行為の防ぎ方について、投稿した住職と考えた。
高台寺は1606年、豊臣秀吉の菩提(ぼだい)を弔うために、正室・ねねが建立した。春のしだれ桜や、秋の紅葉のライトアップが人気となっている。拝観料は大人600円で、北に位置する岡林院は美しい苔庭で有名だ。
青山公胤住職は「コロナ前の2017~2019年も京都の外国人観光客は多かったが、その頃よりも少し増えているイメージだ」と語る。
今回のX投稿については、「『殺すぞ』と言われて怖くなり、声を上げなければとポストした。その土地や文化、人に対して配慮してこその共存・共生であり、無理だと思った。これは京都だけでなく、日本中で多発的に起きている問題だ」と説明する。
もしも外国人観光客が減れば、解決する問題なのか。「明文化されていないマナーやモラルを、分かりやすく啓発するなどの対策が必要だ。わかりやすく、ちゃんと説明を知った上で、入ってきてもらう。『外国人観光客の数を減らす』よりも、『入国前の教育』が大事ではないか」。
京都市産業観光局の「京都観光総合調査」によると、ここ10年間の外国人宿泊客のピークは2018年の400万人台だったが、コロナ禍を経た2023年には500万人台を記録している。京都市観光協会の調べでは、京都市の平均客室単価は2016年11月の2万2873円から、2024年11月には2万8686円に。公共交通機関にも影響が出て、満員・渋滞が慢性化した結果、京都市は「バス1日券」を廃止した。
TikTokerでYouTuberのYunaは、「日本人が外国人慣れしていない」ことが背景にあるといい、「『殺すぞ』と言われて、たまらず投稿するのもわかるが、英語で発信するなどの対策もある。オーバーツーリズムをネガティブに捉える人が多いが、日本の手取りやアクティブ世代の人口が減っているなか、外国人観光客からの収入は必要だ。なくならない問題ではなく必要になってくる。対応できる人を増やすなど『外国人慣れ』する必要がある」との見方を示した。
しかし、トラブルは他にもある。青山住職は「民泊利用者がゴミのルールを守らない。公園の横に民泊とおぼしき建物がある。そこから出てきた外国人らしき人物が、公園のゴミ箱に分類されていないゴミを捨てていた。それをカラスがあさって、片付けるのは近隣住民だ。ゴミの問題ひとつ取っても、住民として嫌だと思っている」と明かす。
ジャーナリストの堀潤氏は、「困りごとは何なのか」が重要だと説く。「観光客が大きなキャリーケースを引いて乗るために、病院へ行くためのバスに高齢者が乗れなくなってしまって困っているならば、バス路線を別に用意するなどの対策が講じられる」。
青山住職によると、「檀家(だんか)からも『足が悪くてバス利用していたが、観光客が多くて乗れず、もう法要に行けない』と言われた。京都では、観光地だけを回る『観光特急』のバスもあるが、そちらはガラガラで乗っていない」という。
高台寺では、撮影禁止を促す注意書きを英語や中国語などで掲示しているが、それでもなお被害は出ている。
観光問題に詳しい北海道大学大学院の石黒侑介准教授は「モラルやマナーを直すのは難しい」と考える。「観光でテンションが上がっている人に、顧みて行動させるのは難しい。仮に注意できても忘れてしまうこともよくある。努力は素晴らしいが、『禁止』と貼るだけでは解決せず、いたちごっこになる」。
解決策を考える上では「抜本的に『観光客の数をどうするか』『どこから入れるか』といった問題を正確に捉える」必要があるとして、「現状はスポットで水際作戦を繰り返している。これではなかなか構造的に解決できないと感じる」と語った。
バンド「PK shampoo」ボーカルのヤマトパンクスは、「制度やインフラの維持にもコストがかかる。京都は地下鉄を掘ったり、路線バスを増やしたりするのが難しい」と話しながら、幼少期を振り返る。
「お寺の人や近隣住民に怒られたことを思い出した。子どもを見る目は、見下しているのではなく、日本の文化や風土、ルールをわかっていないから向けられる。昔はうっとうしがられていたかもしれないが、今ではありがたい存在だ。子どもを教育するように、愛を持って『あかんぞ』と言うことが必要ではないか」(ヤマトパンクス)
(『ABEMA Prime』より)