※本稿は、小林弘幸『自律神経の名医が教える究極の休み方』(宝島社)の一部を再編集したものです。
一週間の疲れがたまった週末。何もせずに、ほぼ一日中ダラダラと寝て過ごしてしまったなんて経験は多くの人にあるはず。
「疲れているから何もしたくない」「週末ぐらいはゆっくりと朝寝坊したい」という気持ちは、誰しもが持ち合わせているものです。
とはいえ、何もせずにダラダラと過ごしても、「昼間もたっぷり寝たのに、週明けも体がダルい」などと感じて、結局疲れは少しも取れなかったという経験はないでしょうか。
たまった疲れから回復しようと思ったときに、何もせずに寝て過ごすというのは適切な休み方ではないのです。
自律神経のバランスを整えると、疲れからの回復が早まります。交感神経は日中、副交感神経は深夜に活性化のピークを迎えるので、日中に寝て過ごすと自律神経が乱れて疲れが抜けにくくなってしまうのです。
疲れがたまりがちな週末でも、思い切っていつもの平日と同じような生活リズムで過ごしてみましょう。もちろん、仕事などをする必要はありません。たっぷりと時間を使って趣味などに没頭するのです。
普段は時間がなくてできない凝(こ)った料理にチャレンジしたり、録画していたドラマやアニメをゆっくり見たりして過ごすのもいいですね。
やりたかったことをしっかりとやることで、心身ともにリフレッシュすることができて疲労回復に役立ちます。
効率的に疲れを取るためには、平日の仕事や買い物などから帰宅した際の過ごし方も重要です。「疲れた~」と、ほんの少しだけひと休みするつもりでソファに腰を下ろすと、座った途端に疲労感がドッと押し寄せてきて何もできなくなってしまいます。
ソファに腰を下ろすと、体を活動モードにする交感神経がオフになり、休・回復モードの副交感神経が活発になります。そのため、行動を起こすのが難しくなってしまうのです。帰宅後すぐにはソファに座らないようにしてください。
「ほんの少しだけひと休み」を我慢して、行動することが肝心。疲れていても、ここはもうひとがんばりして、家事や雑務などやらなければならないことを片づけてしまいましょう。
体を動かすことによって活動モードが維持されますから、意外と作業がはかどって、思ったよりも短時間ですべてを終わらせることができるものです。
やるべきことをやったあとの時間は、リラックスタイムとしてゆっくり過ごして体と心を休めましょう。やるべきことを終わらせていないと、「持ち帰った仕事があるのに手をつけていない」などと気になってしまって、しっかりと心身を休めることができません。
ソファで休憩せずにそのまま動いてやるべきことをやったほうが、ゆっくり休めて疲労感を抑えられるのです。
運動は健康な毎日を送るうえでとても役立ちます。体を動かす習慣を身につけて、運動を生活の一部にするといいでしょう。
習慣化するには、思いついたときに運動するよりも、「毎日いつもこの時間帯に運動をする」と決めてしまったほうが定着します。習慣化して運動を定期的に続けることで、生活習慣病などを予防することができます。
心筋梗塞や脳梗塞、高血圧症、糖尿病などにかかるリスクは、身体活動量が多いほど低くなると指摘されています。体を動かすことでエネルギーが消費され、内臓の動きも活発になり、体力・持久力が向上して代謝がよくなることで、さまざまな病気を防ぐことにつながるといわれているのです。
こう考えると運動はいいことずくめと思われるかもしれませんが、習慣化するうえで意識してほしいことがあります。それは、朝には無理に運動をしなくてもいいということです。
運動というと朝のジョギングやウオーキングを連想する人も多いことでしょう。人が少ない道路は走りやすいので、毎朝走ることにしようと決めている人もいるかもしれません。
しかし、朝起きたばかりの状態だと、まだ体は完全に目覚めていません。副交感神経がとても高まっている時間帯でもありますので、無理に体を動かすとケガをしたり、想定以上に疲れがたまってしまう危険性もあります。体がしっかりと目覚めるのを待ってから運動することをおすすめします。
無理な運動の代わりに朝の習慣として身につけてほしいのが体重測定です。毎朝体重を測定することは健康管理として有効です。
自分の理想の体重からプラスマイナス2kgの範囲を目安にしておきましょう。自分の一週間前の体重と比べて2kg以上増えすぎても減りすぎてもよくないと考えてください。
毎日の生活のなかで「最近食べすぎているかも」「運動不足じゃないかな」と思うことはあっても、なかなか行動の改善には結びつきづらいものです。
しかし、体重が2kg以上増減しているというはっきりとした“証拠”を突きつけられると、「食生活を見直そう」「ジムに通って運動しないといけないな」などと真剣に考えられるようになります。
急激な体重の増減は、体が不調を訴えているサインかもしれません。ストレスなどによって自律神経が乱れて内臓の働きが悪くなっているとも考えられます。毎日体重を測り続ければ、自分自身の体の変化にいち早く気づくことができるので、病気の早期発見にも役立ちます。
ただし、「昨日より体重が増えている」「昨日より体重が減っている」などとあまり神経質にとらえる必要はありません。
体重の管理自体は、先週の体重と比べる週単位、または月単位のゆるめのもので構わないのです。
重要なのは毎朝の体重測定を習慣にして、自分自身の健康状態や生活習慣の変化を把握できるようにすることです。
———-小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)順天堂大学医学部教授1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。———-
(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)