近年、働き方の多様化が進む中で、「スキマバイト」という働き方が急速に拡大している。手軽に働けるイメージが先行する一方で、様々な課題が出てきているのも事実だ。本稿ではパーソル総合研究所が発表した「スキマバイト/スポットワークに関する定量調査」を一部引用しながら、スキマバイト経験者が直面する課題を紹介する。
調査によると、過去3年以内にスキマバイトを経験した人は全国で6.5%、推計452万人に達した。
また、1年以内のスキマバイト未経験者のうち、スキマバイト意向があるのは21.8%に上り、潜在的なスキマバイト人口は現在の約3倍となる1431万人と推計されている。今後の労働市場においてスキマバイトが重要な役割を果たす可能性を示唆していると言える。
スキマバイトの仕事内容で最も多いのは「軽作業系職種」で16.4%。以下、「接客・サービス系職種(14.9%)」、「配送・物流・運輸職(9.4%)」と続く。
レギュラーバイトとの比較で見ると、「軽作業系職種」や「配送・物流・運輸職」、「イベント・キャンペーン系職種」などは、スキマバイトの方が高く、「接客・サービス系職種」や「販売職」、「専門・技術職」などは、レギュラーバイトの方が高い。
同調査では、スキマバイト経験者を類型化している。結果、以下の5つのタイプに分けられた。
・隙間活用タイプ:隙間時間を有効活用したい層
・小遣い稼ぎタイプ:娯楽や趣味に充てる資金を稼ぎたい層
・生計維持タイプ:生活費を稼ぎたい層
・経験投資タイプ:興味のある仕事を経験したい層
・簡便志向タイプ:手軽に働きたい層
それぞれのタイプを詳しく見ていこう。
隙間活用タイプは女性が多く、スキマバイトをする理由1位は「空いている隙間の時間を埋めたかった」。同様に、小遣い稼ぎタイプは学生が多く、「娯楽費を稼ぐため」。
パート・派遣社員が多いのは生計維持タイプで「生活費を稼がなければならなかった」。一方で正社員が多いのは、経験投資タイプ。「やってみたい仕事内容だった」を理由に上げており、長期的には転職も視野に入れているのかもしれない。
最後の簡便志向タイプは無職者が多く、「仕事内容が難しくなさそうだった」を理由の第1位にあげている。
このように、スキマバイトを利用する目的は人それぞれであり、多様なニーズに対応している働き方であることがわかる。
今回の調査で特に興味深かったのは、スキマバイト経験者が直面する課題に関するデータ。業務に関する不満として、「従業員の仕事の教え方がわかりにくい」「マニュアルがない」などがともに約17%で上位にあがっている。
しかし、それ以上に深刻なのは人間関係の問題だ。調査結果によると、スキマバイト経験者の約15%が「職場の従業員の態度が冷たい」と感じていることが判明。この割合はレギュラーバイト経験者と比較すると約8割も高く、人間関係における深刻な溝が存在することを示唆していると言えよう。
調査回答には、他にも「職場で初めての人間関係を築くのが難しい」「職場でいじめや高圧的な態度をとられる」といった答えも目立つ。
短期的な雇用形態であるスキマバイトの宿命かも知れないが、彼らを迎える職場の既存の従業員からすると、「スポットで入ってくれた人員」に親身になって接する動機が薄いと思われる。
パーソル総合研究所の上席主任研究員・小林祐児氏は次のように指摘する。
「(スキマバイトの利用が拡大すると)現場では、人材の多様化とマネジメントの複雑化が起こる。すでにスキマバイト人材からは、「教え方がわかりにくい」「マニュアルがない」「既存従業員の態度が冷たい」といった現場でのハレーションが多く報告されている。
分析からも、店長・管理者は、スキマバイト/レギュラーバイト/レギュラー候補の3方向に対して異なるマネジメントが求められることが明らかになった。今後の課題は、このマネジメントの複雑化・高度化に対して現場管理者が対応できるかどうかだ」
企業はこの新たな働き方に対して、これまでのマネジメントとは違った対応が求められると言えるだろう。
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スキマバイトに関する課題は他にもある。つづく記事〈ヤマト運輸で「ポケカとiPhoneの在庫が減っている」「スキマバイトに疑いの目が」…物流大手の現場で起きている「来たるべき大崩壊」〉もあわせてご一読いただきたい。
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