1月18日、前兵庫県議だった竹内英明氏が自宅で自殺していたことがわかった。昨年3月に発覚した、斎藤元彦知事の内部告発を検証する百条委員会でも、鋭い質問を展開。誰もが一目置く存在だった竹内氏の死に衝撃が走っている。竹内氏は、生前、「現代ビジネス」の取材に応じていた。
昨年11月17日に行われた兵庫県知事選で斎藤知事が当選した直後、竹内氏は「一身上の都合」として県議会にを辞表を出していた。
斎藤知事の選挙活動はSNS展開で話題になり、双方を巻き込んだ誹謗中傷合戦が続いた。ついには斎藤知事を徹底追及していた竹内氏にまで、誹謗中傷は及んだ。
《竹内が斎藤知事を陥れた首謀者》
《諸悪の根源は竹内》
とまったく事実ではない情報が広がっていた。中には「襲撃」を示唆するものまであった。県議辞職当時、竹内氏は「現代ビジネス」の取材にこう語っている。
「私だけならまだしも、家族まで巻き込みかねない。自宅に変な電話があったり、襲撃するぞなんてことまでSNSに書かれている。電話をとるのも、外に出るのも、家族は怖がっている。スマホを見るだけで手が震える。もう限界だ……」
その表情は暗かった。
「あれほど、オレを見ろと言ったのに。どうして……」
竹内氏の訃報を聞いて、こう唇をかんだのは元衆議院議員の石川知裕氏だ。早稲田大学時代、石川氏は政治サークル「鵬志会」に参加。1年後輩が竹内氏だった。
石川氏は、小沢一郎氏の秘書を長く務め、衆院当選3回、2010年の陸山会事件では逮捕、有罪となった。また昨年はガンの手術も受けた。しかしそこから這い上がり、昨年の衆議院選挙に出馬するまでに復活している。
石川氏はこう残念がる。
「(竹内氏は)一度は民間企業に就職したが、旧民主党の職員になり、国対などを担当。勉強熱心でいずれ素晴らしい政治家になると思っていた。追及していた斎藤知事の当選で厳しい局面にあったが、県議辞職後、『苦しくてもあきらめるな、俺の姿を見ろ』と何度も言ったのですが……。姫路へ会いに行っておけばよかった」
斎藤知事の一連の問題が発覚後、内部告発した元県民局長は昨年7月に自死。また、内部告発にあった、阪神とオリックスの優勝パレードの担当者も死亡した。
ある県職員は、声を潜めてこう語る。
「斎藤知事の問題で、かかわった人たちが次々に亡くなってゆく。底知れぬ闇を感じる。本当に怖い。皮肉にも内部告発の真実性がさらに証明された気がする」
斎藤知事の一連の問題の出発点は、元県民局長の内部告発だった。竹内氏は、「現代ビジネス」の取材に対し、何度もこう繰り返していた。
「阪神とオリックスの優勝パレード、これが肝で刑事事件になりかねない。斎藤知事もこれを追及されると一番、嫌なはずだ。ここを徹底して取材してほしい」
このパレード話とは、話題になった元県民局長の告発文書の中にあった記述のことである。いわく、昨年11月、阪神タイガースとオリックス・バファローズの優勝パレードで寄付が想定より低かった。そこで信用金庫など金融機関向けの補助金の増額を条件に金融機関から寄付を受け、キックバックを行ったというもの。
《信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせることで補った》
告発文書には、そう具体的な内容が書かれている。竹内氏は、ここに書かれている内容こそ斎藤知事最大のスキャンダルだと、何度も語り、独自で調査をしていた。
ポイントとなるのは、優勝パレードへの寄付額と寄付が実行された時期だ。「現代ビジネス」では、すべての企業の寄付額一覧表を入手。記者はこの一覧表を昨年10月末に竹内氏にも見てもらい、「裏どり」を依頼していた。11月になって、
「私も複数の関係者に確認してみたところ、間違いない内容です」
と竹内氏から返事が来た。
それが後編《兵庫県の竹内英明県議が死の直前まで記者とやりとりした「寄付金額リスト」の中身》で公開する一覧表である。兵庫県に寄付をしたすべての企業や団体の寄付金額が判明した。
パレードは2023年11月23日に実施されている。ところがパレード後にもかかわらず、13の金融機関と同様に寄付をしている企業が7社ある。
たとえば上場企業でもある川崎重工業は、11月24日に100万円を寄付している。ところが、なぜか兵庫県はこれまでこの金額を「非公表」としてきた。100万円という金額は経営に与える影響はまったくといってないだろうが、兵庫県幹部によれば「普通、優勝パレードのようなビッグイベントに寄付した場合、PR効果でぜひ公表してほしいとなります。しかし、優勝パレード後だったこともあってなのか非公表を希望されました」というのだ。
また、2100万円という兵庫県では最高額とみられる寄付をしながらこれまた金額を「非公開」としてきたのが敬愛まちづくり財団だ。優勝パレードが終わり1ヵ月が経過した2023年12月になってから《貴財団にさらなるご支援》と県が追加支援を求め、同財団が高額寄付を行ったことが現代ビジネスが入手した情報公開などでも明らかになっている。後篇でいよいよリストを紹介しよう。
驚きの一覧表を公開する後編《兵庫県の竹内英明県議が死の直前まで記者とやりとりした「寄付金額リスト」の中身》につづく
【独自】「斎藤知事最大のスキャンダル」兵庫県がひた隠す衝撃のリストを公開…自殺県議が死の直前まで記者とやりとりした「寄付金額リスト」の全実名・全金額