インフルエンザの流行がなかなか収まりません。
国立感染症研究所の最新データ(2025年1月13~19日)では、1医療機関当たりの患者数が18.38人。2024年末には64.39人と過去最多の患者数を記録し、それよりは減ってきたものの、まだ油断は禁物です。今年に入ってからも、各地で学年閉鎖になる学校が相次いでいます。
しかも今シーズンは、新型コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎など複数の感染症が同時流行中で、次から次へ違うウイルスに感染する「感染症ドミノ」のリスクが高まっているそうです。
この大流行を乗り切るには、どうやら気合を入れた体調管理が必要そう。どんな対策が有効なのか、いとう王子神谷内科外科クリニック院長の伊藤博道先生に教えてもらいました。
◆インフルだけじゃない「感染症ドミノ」
今冬、流行している主な感染症は、なんと7つも!(以下、人数は2025年1月13~19日、1医療機関当たりの患者数)
インフルエンザ(18.38人)、新型コロナウイルス(5.62人)、マイコプラズマ肺炎(0.85人)、手足口病(0.11人)、感染性胃腸炎(4.52人)、伝染性紅斑(リンゴ病、0.95人)、そして、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(1.84人)などが同時流行するという異常事態です。そして、これらの感染症に時間差で感染してしまうこともあるのです。
どうしてこんな大変な事態になってしまったのでしょうか?
「新型コロナウイルスが5類に移行して感染症対策が緩和されたことで、それまで、息を潜めていたウイルスが勢いを増したようです。加えて、今年は厳しい残暑から急に寒くなったことで、みなさんの免疫力が低下していることも影響しているのでしょう」(伊藤博道先生、以下同)
実際、伊藤先生のクリニックでも昨年11月下旬以降、感染症ドミノの患者さんが増えているといいます。
「インフルエンザの後にマイコプラズマ肺炎になった30代の女性、手足口病の後にリンゴ病に感染した小学生、マイコプラズマの後に手足口病になった中学生――そんな患者さんが珍しくありません。複数の感染症が同時流行中で、組み合わせは基本的にはなんでもありという状況です」(伊藤先生)
◆病み上がりの状態で、家族から感染することも
もはや、どこから何に感染してもおかしくない状態。しかも、感染症ドミノは3週間から1か月という短いスパンの間に、立て続けに感染するケースが多いそう。
「最初の感染症の症状が少しよくなり、熱が下がって外に出られるようになったとしても、まだまだ本調子ではありません。本当の回復――免疫力や体力が戻るには3~4週間程度はかかります。その病み上がりの弱っている時期に、次のウイルスに感染してしまうのです」
感染症ごとに症状はそれぞれ違うけれど、共通するのは高熱が出たり、咳がひどく喉の痛みがでたり、どうしようもない倦怠感に襲われたりすること。そうした状態が1か月近く続くのですから大変です。
「中には、あまりに体調の悪い日々が続くため別の重篤な病気を疑いだす人や、落ち込んでメンタル不調に陥る人もいます。また、感染症ドミノは家族感染が多いのも特徴で、自分の体調も悪いのに子どもの看病をしなくてはならないお母さんも。私のところに来て、『先生……もう、病院いやです……』とうなだれながらおっしゃる方もいました」
新年早々、そんな目にあいたくない……。感染しないよう自衛するには、何をしたらいいのでしょうか?
◆感染症対策の2大ポイントは「乾燥対策」と「腸内環境の改善」
「基本的な予防策はうがい・手洗い、人混みでのマスク着用ですが、それに加え、歯磨きも推奨しています。口の中の歯周病菌がウイルスへの防御機能を弱めてしまうという研究発表があり、歯磨きをしっかりすると、歯周病菌やウイルスを吐き出すことができるのです」
そして、続けて伊藤先生が指摘するのは「私たちが本来持っている免疫力を最大限に引き出すこと」の大切さ。