子ども同士が介在するママ友の関係は、母親が自分の意思とは関係なく参加させられる特殊な“友達コミュニティ”である。異論を唱えたり、独自の判断で行動する人間は排除されやすい。ゆえに嫌な意見にも表面的に迎合せざるをえないことが度々おきる。良識的な母親にとっては、かなりのストレスだろう。
そんな母親の弱みにつけこむかのように、傍若無人にふるまうママ友はいる。
栃木県・谷口英恵さん(仮名・39歳)のケースでは、娘と同級生の子供を持つ隣人のママ友、沙織さん(仮名・43歳)と付き合いを続けてきたが、沙織さんはことあるごとにマウントを取ってくるタイプで、「子ども同士が親しいのをいいことに、日頃から沙織さんから便利屋か家政婦のように扱われていた」という。
「沙織さん一家が海外旅行に出かける時は、沙織さん宅の庭の手入れや愛犬の世話をしていた」ともいうが、そんな折、英恵さん一家は、はじめて海外旅行(ハワイ)に出掛けることになる。うれしくて旅先でSNSに風景写真とともに、現地で体験したことを書き込んでいたところ、
「沙織さんからは『初めての海外旅行で舞い上がってない(笑)』とか『アラフォーの水着はイタすぎでしょ(苦笑)』など、水を差すコメントを何回もつけてきました。それで、コメント欄を途中で閉じて旅行を続けたのですが、帰国したらとんでもないことが起きていました」
前編記事『「アラフォーの水着はイタすぎでしょ(苦笑)」SNSにアンチコメを書きなぐるセレブママ友の、許しがたい「嫌味と嫉妬」』よりつづきます。
「帰国して自宅に戻ってみると、庭からじょぼじょぼと異音がしたんです。『えっ?』と思って庭をみたら、外付けの水道に繋げたホースの先から、じょぼじょぼと水が出ていました。旅行は4泊5日。その間、ずっと水が出ていたと想像しただけで眩暈がして、その場で呆然としていたのですが、ご近所の方が声を掛けてきて、沙織さんがうちの庭に入って『コソコソと何かしていた』と聞いて、彼女の仕業だと確信しました」
これまでずっと、沙織さん一家が海外旅行に出かける際には、英恵さんが頼まれて、庭の手入れや愛犬の世話をしていた。その立場からしてみても納得はいかない。すぐに沙織さん宅へ出向き、事実確認すると、沙織さんはあっさり自分がしたことを認めたという。ところが…
「『何でそんなことしたんですか?』と聞いたら『いつものお礼にお庭の水まきをやってあげたんだけど、うっかり蛇口を閉め忘れたみたい。ごめんなさいねえ。悪気はないのよお』と白々しく言われて終わりでした」
ちなみにこの時の水道使用料は1ヵ月で2万円を超えたという。
「水道代もさることながら、彼女の悪意にぞっとしました。それで沙織さんとの共通の知人に相談したところ、いろいろなことがわかったんです」
知人曰く、「沙織さんの直近の旅行先はグアム。それなのに英恵さんがハワイに行ったのが気にいらなかった」らしい。また、こんな話も聞かされた。
「沙織さんは他のママ友にも、議員が夫で、夫の実家が地主であることをひけらかして、経済面でマウントをとっていたそうです。あと、自分たち夫婦よりも、私たちが仲良さそうに見えていたことにも嫉妬していたと聞かされました。彼女にしてみれば、私がハワイにいったことで、『自分より優位に立たれた』と思ったんでしょうね…」
こうした、ささいなことで序列をつけたがる「マウンティング」も、ママ友界隈の「あるある」だ。
「あまりにくだらないので、相手にする気はありませんが、その敵対心がこの先、万が一にも娘に向けられるようなことがあれば、その時はきっぱり縁を切るつもりです」
ケース2「クリーニング屋のママ友による陰湿ないやがらせ」
東京都・村井晴美さん(仮名・42歳)
ママ友の中には、我が子を虚栄心や承認欲求を満たす手段にしている、付き合うと面倒な人たちが一定数いる。特に受験や進学が絡んだ場合、その傾向はより顕著になりやすい。
「娘が小学校の時に親しくしていたママ友に、梨香(仮名・48歳)がいました。彼女の家はクリーニング店を経営していて、知り合うと『ママ友割引』や『ママ友スピード対応』といった特典があり、ママ友御用達のお店でした」
梨香さんの店ではリフォームや寸法直しなども請け負っていたため、晴美さんは私立中学に合格した娘の制服のお直しを頼んだという。
「制服は合格発表後に採寸して仕立てたものですが、受験が終わったことで気が緩んだためか、娘は5キロ以上体重が増えてしまい、新品の制服がきつくなってしまったのです。10日後に入学式を控えていながら、『これじゃあ、デブなのがバレバレだよ…』とすっかりテンションが下がった娘のために、私は梨香に泣きつきました」
梨香さんは「ここまでのお直しだと、本当は最低でも2週間は見てもらうんだけど、特別に入学式に間に合うようにするね」と快く引き受けてくれたそうで、晴美さんは梨香さんが「神様のように見えた」と話す。
ところがちゃぶ台をひっくり返されるような事態に陥る――。
入学式の3日前、約束していた仕上がり日に晴美さんが梨香さんのお店に引き取りに行ったところ、なぜか臨時休業の貼り紙があり、家人もみんな留守――。
「イヤな予感しかしないなか、梨香にラインをすると、翌日になって『急に遠方の親戚に不幸があって出かけざるを得なかった。そっちに戻るのは明後日(*入学式の日)になる。ごめんね』という返事が来ました。
専門のお直し業者に委託した制服は予定通り仕上がって来てはいるものの、私に渡す手段がないということでした。思わず直接電話をして『それはないでしょう!?こっちも困るんだけど!』と声を荒らげてしまった私に、梨香は『そんなこと言われたって、こっちのせいじゃないし…』と冷たい反応でした」
とはいえ、晴美さんも引き下がるわけには行かなかったという。
「『往復の交通費は出すから、一旦こちらに戻って来て制服を渡して欲しい』とお願いをしました。でも『こっちも葬式の手伝いで忙しいから無理言わないで』と断られ、それきり電話にもラインにも応対してくれなくなりました」
途方に暮れた晴美さんは中学校に連絡。事情を話すと学校側が卒業生に連絡して制服を借りてくれることになったというが、
「学校のご厚意にケチをつけるのは申し訳ないんですが、用意してもらった制服はサイズも合わず、経年劣化もひどかった。無事に入学式には出られたものの、新しい制服に身を包んだ新入生の中でひとりだけ浮いてしまっていた娘は終始涙目でした。何年も受験対策をし、ようやく迎えた晴れの日のこの汚点は一生忘れないでしょう」
と、ここまでの話であれば、「遠方の葬儀なら仕方ないのでは?」と思う方も多いかも知れないが、「梨香の話にはウラがあった」という。
その後晴美さんは無事制服を受け取ったが、梨香さんからは
〈迷惑かけちゃってごめんねー〉
という、誠意のかけらもない言葉だけの謝罪のみだったという。
「それきり梨香と交流を絶ったのですが、『遠方の親戚に不幸があった』はずの日に、梨香が家族で温泉旅行をしていたこともSNSで発覚しました。制服の一件は梨香の嫌がらせだったんです。
後日、別のママ友から聞いた話によると、梨香の娘もうちの娘と同じ私立中学を目指していたけれど、成績が振るわずに諦めていたそうで、梨香はうちの娘が合格したのを知った日から、ずっと悔しがっていたと聞かされました。私は一生梨香を許さないと思います」
ケース3「結婚(再婚)披露宴をドタキャンしたママ友」
千葉県・服部恭子さん(仮名・35歳)
「ママ友の中に、シングルマザー同士ということで特に仲良くしていたA子(34歳)とB子(37歳)がいます。男運が悪いという共通点を持つふたりは、ともに再婚に向けて婚活をしていましたが、若い頃からイケイケで、20代と言っても通用するビジュアルとコミュ力を持つA子の方が常にリードしている感じでした」
聞くところによるとA子さんは、「イケメン」「金持ち」「温厚」「セックスがうまい」など、それぞれ長所のある彼氏を「とっかえひっかえしていた」らしい。
「A子に言わせると、どの男性も『帯に短くタスキに長し』だったそうで、A子はなかなか相手を絞り切れず、そんななかで先にB子の再婚が決まりました。B子の相手は金持ちで、画像を見せて貰った限り、かなりのイケメンでした」
そして結婚式の当日、恭子さんとママ友の5人は、A子さんの車に同乗してB子さんの結婚式会場に向かっていたというが、
「A子が突然、『調子に乗っているB子の顔見るとムカつくから全員でドタキャンしようよ!』と言い出して、ハンドルを切って会場からどんどん離れていったんです。
嫉妬する気持ちはわからなくもないけど、『友人としてそんなことはできない』と私は抵抗しましたが、他のママ友は下手なことをいうと巻き添えになるため無言…。そのままA子は、車を走らせ続けることで私たちを軟禁状態にして、式場とはかけ離れた場所までドライブを続けたのです」
結局、恭子さんたちは結婚式も披露宴もドタキャンすることになる。
「せめてB子に欠席の連絡だけでも入れようとしたのですが、A子から『スマホを触っちゃダメだから』という脅しのようなことを言われて、それもできませんでした」
申し訳なさから、恭子さんはB子さんに謝罪に出向き、当日の様子を聞かせてもらう。
「披露宴会場では『欠席の連絡がないから遅刻しているだけかも』と、私たちの席を撤去するわけにも行かず、私のたちのテーブルは〈無人のまま料理だけが運ばれて来る〉という、異様な雰囲気だったそうです」
その時の光景を思い浮かべて、今さらながら申し訳なさで黙り込む恭子さんにB子さんが「A子の差し金でしょ? わかっているわよ」と、声をかけたという。
「B子は苦笑いで済ませていましたが、私は人としてA子が許せませんし、A子に抵抗しなかった他のママ友にも不信感を抱いています」
仲間の人生を踏みにじることも厭わないママ友たち。そんな関係を警戒してか、最近はママ友を作らない「一匹狼ママ」の存在がクローズアップされているそうだ。
「子どもが孤立しかねない」「有益な情報交換ができない」など、一匹狼ママを懸念する声は多いようだが、どちらの不利益を選ぶかはその人次第であろう。
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