「お茶で血圧が下がるなら薬を飲む前に試してみようか」「健康食品でダイエットできるならそれがいちばん楽でしょう」「食生活が不規則だからビタミンやミネラルで補うしかない」などと、健康食品はすっかりわれわれの生活に浸透している。
しかし実は、健康食品では機能性や安全性について何の保証もない健康食品が多く販売され、健康被害の大半はこれらの製品で発生している。ならばどんな健康食品を使えばいいか、使いたければ自身で見分ける目が必要である。そのため健康食品で被害に遭わないための基礎知識をさまざまな事例を通してわかりやすく解説した著書『健康食品で死んではいけない』より、健康食品の素材がなぜ毒に変わるのか連載形式で紹介する。
ウコンと言えば肝臓に効く健康食品だと思っている人が多いだろう。ウコンは香辛料としてカレーなどによく用いられるショウガ科の植物である。この中に含まれるクルクミンが、胆汁の分泌を促進し肝機能を改善する効果があることから「二日酔い防止」の健康食品として販売されている。民間伝承でもお酒の前に飲んでおくといいと言うし、確かにそうだと効果を実感している人も多いはずだ。
肝機能改善に関しては、実際にヒトに使って薬の効果・安全性を確かめるヒト臨床試験で効果があったという報告もあり、機能性表示食品としても販売されている。クルクミンには主に動物実験で、肝臓に対する作用以外に、抗菌、血糖低下、抗腫瘍、認知機能改善などの作用が多数報告されている。
脳科学者の茂木健一郎氏による、カレーを食べたときとそうでないときを比較してIQが若干上昇するというような研究発表もある。こうしたヒトに対する臨床報告をもとに、高齢者の認知機能改善をうたった機能性表示食品としても販売されている。
カレー好きが多い日本人にとって、いつも食べているカレーのウコンにこんな心地よい研究結果の報告が多いので、ウコンは体によい、と考えるのも無理はない。
しかし日本肝臓学会は、肝障害患者がウコンを摂取し始めて3ヵ月後に死亡した例、二日酔い防止のためにお酒と一緒にウコンの粉末をとり続けていた健常な38歳の男性が死亡した例などがあることから、2003年に全国的な調査を行うことにした。その結果、肝疾患の人が摂取した場合、かえって悪化することが明らかになった。また肝臓学会誌の報告例の中には、死にいたらないまでも重症化したケースが数例あった。
肝臓は種々の栄養素や栄養素以外の化学物質を処理する人体における化学工場のような臓器である。ウコンの成分は、肝臓の調子がよいときならその調子をアップさせる。反対に、調子が悪いときにウコンの成分が送り込まれれば、肝臓という化学工場の処理能力を超え、結果的に調子を整えるどころか負荷になり、肝臓をくたびれさせてしまうのだ。
肝障害の中で厄介なのは、本来病気を治すはずの薬剤でもしばしば薬剤性肝炎を発症させ、ときに劇症化、死にいたることである。ウコンの成分は薬的な働きを持つが、ときに肝臓のお荷物になって調子を狂わせてしまうということである。
アルコールも肝臓という化学工場で処理される。前述の二日酔い防止のためにお酒と一緒にウコンの粉末をとり続けて死亡した38歳の男性のケースなどは、お酒由来の大量のアルコールを処理しているところへ、さらにウコンの成分が処理すべき化学物質となってしまい肝臓が音を上げたと考えられる。
こうしたことから、日本医師会は肝疾患のある人のウコンの摂取に関して注意喚起をしている。国民生活センターも「健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがあります」と具体例をあげて警告している。
続きは<健康食品「ウコン」が肝障害を引き起こす…!? 忘年会前に気を付けたい、一緒に飲んではいけない医薬品>で公開中。
健康食品「ウコン」が肝障害を引き起こす…!? 忘年会前に気を付けたい、一緒に飲んではいけない医薬品