10月の衆院選挙の敗北を受けて、馬場伸幸代表が辞任した日本維新の会。後任の代表を決める選挙が12月1日に行われ、馬場氏と共同代表を務めていた大阪府の吉村洋文知事が新代表に選出された。
「大方の予想通りですね。吉村氏については、党内にも『衆院選の責任を取らなくてもいいのか』という声がありました。しかし現状、吉村氏に代わる『党の顔』は見当たりません。知名度がある松沢成文参院議員も代表選に立候補しましたが、吉村氏が8547票を得たのに対して松沢氏は1066票にとどまったことからも明らかです」(大阪維新の会関係者)
予定調和を指す「シャンシャン代表選挙」との揶揄も聞かれる、今回の代表選。吉村新代表は「不十分なところはたくさんあるが皆さんの力を借りながら一致団結して前へ進めていきたい」と決意を語ったが……早くも党内で不協和音が出ているそうだ。
「その原因は、吉村氏が代表選後の会見で『国土交通相を務めた(前原誠司氏の)経験と実績の力を借りたい』と語り、国会議員団をまとめる『共同代表』として前原誠司衆院議員の名前を挙げたためです。党の規約では、国会議員ではない吉村氏に共同代表の指名権はありませんが、吉村氏は、準備がいいことに前原氏の内諾も得ていたそうです。
しかし、前原氏は副代表とはいえ、衆院選直前に『教育無償化を実現する会』を離党して維新入りした新参者です。そのため国会議員団からは、共同代表に就くことに不満が漏れています」(政治担当記者)
確かに「実績」「知名度」という点では、東京都知事を辞任後に「大阪府・市特別顧問」に就任し吉村氏とも気心が知れる同党参院幹事長の猪瀬直樹氏がいるほか、代表選で戦った松沢氏は元神奈川県知事で衆院議員も務めた。
「さらに党内には、『前原氏が維新を引っ掻きまわさなければいいが』と心配する声があります。前原氏は1991年に日本新党で初当選して以来、新党さきがけ、民主党、民進党、国民民主党、教育無償化を実現する会など目まぐるしく所属政党を変わってきたからです。
この“所属政党問題”は本人も気にしているのか、公式ホームページのプロフィール欄には当選年月や回数の記載はあるものの、当選時に所属していた政党名は書かれていません」(前出・政治担当記者)
政治ジャーナリストの宮崎信行氏は「およそ1年前の2023年9月、前原氏は国民民主党の代表選で玉木雄一郎氏と戦っていたんですよね」と苦笑し、こう続ける。
「2017年の希望の党との合流騒動は、かつて民進党にいた議員にとっては今でもトラウマだそうです。散々、前原さんに振り回された挙句に党は分裂、落選した議員も大勢いました。
そうしたこともあり、前原さんの政治的信用力は落ちました。前原さんは松下政経塾出身ですが、OBとのつながりもあまり聞きません。距離を置かれてしまい、付き合いはないのかもしれません」
日本維新の会の失速がささやかれるなか、吉村新体制の手腕が問われる。