夫婦が手にかけたのは幼い我が子だけではなかった――。
11月22日、警視庁は有害物質エチレングリコールを摂取させ、母親の細谷八惠子さん(68)を殺害したとして息子で元会社役員の細谷健一容疑者(43)と妻の志保容疑者(38)を殺人の容疑で再逮捕した。
細谷夫妻は健一容疑者の姉である美奈子さん(41)、さらに父であった勇さん(73)そして次女であった美輝ちゃん(4)を同様の手口で殺害したと逮捕されていた。
鬼畜の所業とも呼べる家族殺し。その一連の蛮行が明らかになったのは今年2月14日のことだ。全国紙社会部記者が語る。
「警視庁は今年2月、次女である美輝ちゃんを殺人の疑いで夫婦を逮捕。2人は美輝ちゃんに対して何らかの方法でエチレングリコールや向精神薬を飲ませ、2023年3月に殺害した容疑がもたれています。同年3月には姉である美奈子さんの殺害容疑で再逮捕、同年10月には父の勇さんを殺害した疑いで再逮捕。そして今回、母である八惠子さんの殺害容疑で4回目の逮捕となっています。夫妻はすでに美奈子さんと勇さんの殺害容疑で起訴されている状況でした」
子供のみならず姉や両親殺しにまで手を染めていた細谷夫妻。一連の犯行の要因とされるのが父の勇さんが長く代表を務めていた細谷産業だ。元役員が語る(以下、「」は元役員)。
「父の勇さんは台東区で細谷産業という革製品の加工会社を長く経営していました。健一はそこの一人息子で、性格は絵に描いたようなボンボン。口はうまいが、仕事にも関わらず、約束の時間には来ないし、2~3時間遅れてくるのも平気。商談中でも『別の用事がある』と言って帰ってしまう。
そのくせ、お金に関しては無計画。物件でもなんでも『買いたい』『欲しい』と言って申し込みはするが、いざ支払いのタイミングなれば渋って、ずるずる先延ばしにする。とにかく行き当たりばったり。志保も子供服や化粧品やら欲しいものは何でも大量に買ってしまうだらしなさがあった。
姉の美奈子さんは細谷産業で経理を担当していましたが、生前は『健ちゃんに会社のお金は任せられない』と嘆いていたと聞いています。美奈子さんが亡くなったと知った時は『両親も亡くなったからあの夫婦が会社欲しさに姉を殺したのではないか』と思っていました。まさか両親まで手にかけているとは想像もしていませんでした」
殺された勇さんは当初から2人の結婚には反対していたという。
「なれそめについて健一は『以前、志保はキャバクラで働いていて、そこで客としてであった』と言うだけでした。ただ健一は友達という友達もおらず、一人でキャバクラに行くようなタイプでもなかった。志保もお酒が飲めなかったので、おかしいなと感じて問い詰めると『スナックというか……』と歯切れの悪い返答をしていました。勇さんが結婚を反対していたのはそういう経緯があったからです。
健一も『親からは結婚を反対されていた』と語っていました。それでも彼は父親の反対を押し切って結婚した。元々、勇さんは一人息子だった健一を溺愛していて、彼の名義でマンションまで買ってあげていました。でも、結婚を反対されると健一はマンションを勝手に売って、そのお金をもとに志保と一緒に千葉の流山まで逃げていった。
そこでマンションを借りて生活していたそうですが、カネが尽きるとまた勇さんのところに泣きつくように戻って行った。その時にはすでに勇さんも健一を勘当していましたが、夫婦には子供が生まれていた。勇さんからしても孫が生まれてるわけですから、健一を受け入れるしか選択肢はなかった」
その後、夫婦は子供らとともに細谷家が持つ会社そばのマンションで生活。しかし、その暮らしぶりは異様なものだったという。
「元々、健一たちが住んでいたのは一階が事務所で、二階が作業場のマンション。そこに当時5歳ぐらいだった長男がいたんです。志保はおらず、その子も少し落ち着きがないような子でせわしなく部屋を動き回る。それを見て、健一がいきなり怒鳴るんです。それも子供の名前を叫ぶだけ。子供がビクッってなるぐらい大声です。それも私たちの前で平然とやる。
長男も一瞬は驚くんですけど、すぐにケロっとするので、普段からそういう怒鳴り方ををしてるんだなとは思っていました。傍から見てるとしつけというよりは、当たるという言い方が正しかった。しつけって『パパはこれしてるから、これをしちゃだめだ』とか理由をちゃんと子供に説明するものだと思いますが、そういうのはなく、ただの八つ当たりのような印象です」
そんな環境下で育っていた子供らに周囲の大人たちも警戒の色を強めていたという。
「子供たちも保育園に時間通りに登園していませんでした。来るのはいつも10時頃。園が『園庭で遊ばせるので、動きやすい恰好で来てください』と伝えていても、健一たちはワンピース姿で登園させるなどお構いなしでした。
むしろあの夫婦はそういう要望をクレームだと思い込んで、健一が園に怒鳴り込んだこともありました。その時、志保はそばに停めていた車から降りてこなかったそうです。保育園もその育児環境に危機感を持っていて、細谷夫妻についてはびっしりとノートで記録を取っては児童相談所と情報共有をしていました」
そんな中、関係者が恐れていた事態が発生する。事件が起こったのは2019年3月頃だった。
「突然、健一から『大問題が起きた。妻が自宅に放火して、逮捕された』と聞かされました。原因は夫婦がよく行くスパでの出来事でした。そこへ遊びに行く際、いつも健一が志保の下着を用意していたんですが、その時は手違いで上下の色が違っていた。それに志保が腹を立てた。彼女は健一に対して『私をそこらへんのみっともない女と一緒にするな!』と言い放ったそうです。そこから夫婦喧嘩に発展し、志保が自宅に火をつけたそう。
煙を見た近所の住民が通報し、自宅周辺は消防車や救急車が押し寄せる大騒ぎとなりました。その時、志保は警察から捕まりたくない気持ちからか、マンション内を逃げ回っていた。幸い、子供たちは車の中にいて無事でした。あとから志保は割りばしを使って、簡易の発火装置を作り、火を放ったと知りました」
この一件により、志保は警察によって逮捕。一家には児童相談所が介入し、美輝ちゃんを含めたら子供らを保護するに至ったという。
しかし、ここでも元役員は健一と志保という異様な夫婦関係を目の当たりにする。
「健一から『志保の面会に行くから一緒に来てほしい』と頼まれて同行しました。その時はさすがの志保も大人しくしていました。ただ面会中も夫婦の間で子供の話は一切出ず、健一が彼女に『もうすぐ出れるからね。待っててね』と声をかけていました。放火の件では弁護士の働きもあって不起訴になりましたが、内心では『この夫婦、やっぱりズレてる』と感じていました。子供たちが児相に保護されてからは健一とはよく一緒にご飯を食べました。妻も拘留中でいないし、寂しかったんだと思います。
次第に健一は『志保と離婚したいと思ってる』と打ち明けるようになった。その際、『昔からよく志保とは喧嘩ばかりして、ずっと離婚したいと思っていた。志保は発狂すると手がつけられなくなって、過去にも救急車を読んだり、警察沙汰になることが19回あった』と言っていました。具体的には、志保が錯乱して家を飛び出し、警察に保護されたこと。彼女が家にあった台所洗剤を飲み干して救急車を呼んだこともあったそう。
私も『放火の事件をきっかけに離婚することは可能だから、子供のことをちゃんと面倒見れるなら離婚するのも一つの方法だよ』と彼に伝えた。でも彼が言ったのは子供の心配ではなく『もう一度再婚できる自信がないから離婚は難しい』という悩みでした。さすがに『子供が第一優先でしょう。あなたは資産があるから子供の養育費はなんとかなるし、ちゃんと真剣に再婚相手を探せば見つかるよ』と釘を刺しましたが、彼は『自信がない』と一辺倒。それも子供3人いるから再婚できないという心配ではなく、単に自分が再婚できないと言ってのけた。さすがに呆れるしかなかった」
その後、夫婦は児童相談所に対して弁護士を通して子供らの引き戻しを要求。児相も簡単には引き下がらず、2人に対して条件を出したという。
「児相側が夫婦に出した条件としては、夫婦とは別に子供の面倒を見る看護者を用意すること。これに関しては志保の父親が地元・北海道からやってきていました。他には子供を時間通りに登園させること。子供の前で夫婦喧嘩をしない、大声を出さないこと。志保が精神科に通うことなど細かく提案していました。しかし、結論から言えば志保たちはその条件をできないと分かっていたのに飲んだ。
実際、志保たちは子供たちを連れ戻したら、児相の手が届かないベトナムに逃亡しようと考えていて、2人で現地に下見へ行っています。だからウソの了承をしたんです。結局、いつもの無計画ぶりでベトナムには移住できませんでしたが、子供らが帰ってきたその日から志保たちは看護者であった志保の父親を追いやり、子供を連れ回すようになっていた」
そして2023年3月、美輝ちゃんは細谷夫婦の狂気の餌食となり、帰らぬ子となってしまった。
「私たちも美輝ちゃんが保護されたと知った時は胸をなでおろしました。夫婦は『子供たちを取られた!』と怒っていましたが、関係者からすれば『ようやく保護してくれた』という思いだった。児童相談所も最後まで美輝ちゃんを2人に渡すのを抵抗していました。夫婦に関しては保育園側や区の担当者も何度も集まって情報共有を繰り返して、対策を練っていた。やはり子供も戻すべきではなかった。今でも悔やみきれません……」
元役員は姉の美奈子さんの死についても不審な点があったと語る。
「お姉さんが亡くなった時、『あの夫婦がやったんじゃないか』とはどこかで疑っていました。不審に感じたのは健一の説明です。元々、健一とお姉さんは同じマンションに住んでいました。彼は『美奈子さんが自室から出てこず、音信不通となった。それで警察に通報した』と言っていましたが、同じマンションだから合鍵はありますし、家族だから部屋に入って様子を見ればいい。それをわざわざ警察に通報するのが不可解でした。
理由を聞くと健一は『志保が怖いと言っていたから警察を呼んで鍵を開けてもらった』と答える。当時から第一発見者を自分たちにしたくなかったのではないかという疑念はありました。健一は美奈子さんの死因については『変死』と言っていました」
さらに疑惑は続く。
「ご両親とお姉さんが亡くなっているのも健一から聞きました。やはりわずか半年で立て続けに亡くなっているわけですから、怪しいと思うのは当然でした。極めつけが、彼は亡くなった家族の順番を間違えていた。彼は『父が病気で入院して亡くなり、そのあとに母の体調が悪くなって死んだ。その後、姉がマンションで変死していた』と言っていましたが、本当はお母さん、お姉さん、お父さんの順番が正確。そのうえで子供まで亡くなったわけですから『やっぱりなにかおかしい』とは感じました」
最愛であるはずの家族の殺害を繰り返した細谷夫妻。その事件の実質的主導者とみられるのが妻の志保容疑者だ。
つづく後編記事『「彼女はサイコパス」「夫を支配」家族4人殺し・毒殺夫婦…志保容疑者の「異常な女帝人生」』では周囲から「サイコパス」と称される妻・志保容疑者の素顔について詳しく報じる。
「彼女はサイコパス」「夫を支配」家族4人殺し・毒殺夫婦…志保容疑者の「異常な女帝人生」