年末が近づき、今年も毎年恒例の街頭イルミネーションが始まった。都内でも各地で点灯が始まり、多くの人でにぎわっている。しかし、人気スポットである六本木の「けやき坂イルミネーション」では、「映え写真」を撮ろうとするあまり危険な行為に及ぶ人が相次ぎ、問題に。イルミネーションを楽しむ人々のリアルな声を聞いてみた。
【画像あり】この画角を求めてマナー違反… イルミネーションの向こうに見える東京タワー
年末恒例の街頭イルミネーションが始まった。東京・六本木の「けやき坂イルミネーション」は、約400メートル続くけやき坂の並木道が白と青のLED約80万灯でライトアップされ、その様子は非常に幻想的だ。
外国人観光客も多く集まる人気スポットだが、ライトアップされた欅の木が車道沿いに並ぶためなのか、人々が車道に出て「映え写真」を撮ろうとする“危険行為”が続出しているというのだ。
Xには、「もうイルミネーションやめればいい」「もう仕方ないからあの道イルミの季節だけホコ天にしたら、、、」「けやき坂イルミネーション、危険なスマホ撮影が多いなら、消灯だ!」といった声があがっている。
現場の声はどうだろうか。イルミネーションを楽しむ人々の声を聞いてみた。
TikTokを撮っていたという女性は次のように話す。
「友達とTikTokを撮りに来ました。人が多すぎて2時間スタバで時間つぶしてました(笑)。警備員は大声で怒ってるし、まじカオスな雰囲気だった。でも、いい感じの動画が撮れたから嬉しい!」(20代女性)
大学生カップルからは、長時間かけてデートを楽しみに来たという声が聞かれた。
「デートといえばここかなって思って、片道1時間半かけて来ました。ここの写真をあげてる友達は多いです。彼女とたくさん写真とか動画を撮り合いました。横断歩道で東京タワーと一緒に写真も撮れたし、あとでインスタとTikTokにアップします」(20代男性)
また、人気男性アイドルのファンだという2人組の女性は、「推し活」の一環として訪れたという。
「推しと一緒に思い出を作りたくて推しのアクスタ(アクリルスタンド)を持ってきました」(20代女性)
20代を中心とする若い層は、映え写真やデート、推し活などの目的で訪れているようだ。
あくまでもイルミネーションを“楽しむ”ことが目的で多くの人がこの地を訪れているようだが、記者が現場で取材を進めていると、確かに危険と思われる行為を目にした。
信号が青に変わった瞬間、大勢の人々が一斉に横断歩道に出て写真撮影を始め、赤に変わると警備員に誘導されて歩道に戻る。そしてそれが何度も繰り返されていたのだ。
横断歩道には警備員が常駐し、「車道に出ないでください!」「信号赤になりました! 歩道にお上がりください!」「危ないですよ!」と拡声器で常に大声で叫んでいた。また、車道へ出て写真撮影している観光客にクラクションを鳴らす車も見られた。
こうした状況に対して、家族連れで訪れたという40代男性からは次のような声が聞かれた。
「家族で食事に来たら、すごいことになっててびっくりだね。正直、歩きづらいし迷惑です。テンションが高い外国人観光客が多いね。世界的に有名な場所だからはしゃぎたくなる気持ちもわかるけど、マナーは守ってほしい。いっそのこと入場料取ればいいのに」(40代男性)
近隣店舗で働くという女性からは、次のような指摘があった。
「一番人通りが多いのは20時から22時くらいです。日本人の方も多く見かけますが、どちらかというと外国人の方のほうが多い印象です。中には、日本語がわからないのか、警備員さんが歩道に戻るよう大声で誘導しているのに、写真を撮るのに必死でまったく動かない人も。また、横断歩道がない場所でも、柵を越えて車道に出て写真撮影している人も多いです」(30代女性)
多くの人が指摘するように、現場には外国人観光客が非常に多い印象を受けた。
アメリカからカップルで来たという男性は「イルミネーションと東京タワーが一緒に撮れる」と話す。
「横断歩道の真ん中は、イルミネーションと東京タワーが一番きれいに撮れるベストポジションだね。でも、警備員がうるさくてびっくりしたよ。彼女とナイスなツーショットが撮れて旅行のいい思い出になった。ここは世界的にすごく有名な場所だから、SNSにこの写真をアップしたらみんな羨ましがると思う」(30代男性・アメリカ)
ミャンマーから来た男性は、「SNSやテレビのニュースで見た」と話す。
「SNSでここの写真を投稿している人をよく見かけます。いろんな国の観光客から人気の場所で、ミャンマーでもテレビでニュースになったり、有名なYouTuberが来たりしています」(20代男性・ミャンマー)
また、中国から来た女性からも同様に、「SNS」「東京タワー」という言葉が聞かれた。
「SNSにアップする写真を撮りに来ました。ここは中国のSNSでもすごく人気の映えスポット。日本で一番有名なイルミネーションだと思う。東京タワーと一緒に写真を撮ると『東京に来た』というのをみんなにアピールできる」(30代女性・中国)
中には、「横断歩道を行ったり来たり」することが“楽しい”という声も聞かれた。
「みんなで横断歩道を行ったり来たりしてすごく楽しかった! 信号が青の間だけしかシャッターチャンスがないから、綺麗な写真を撮るために何度も往復しました。イルミネーションと東京タワーが一緒に撮れる場所はここだけだから、絶対にいい写真が撮りたかったの」(30代女性・イギリス)
多くの外国人観光客から聞かれたのは、「東京タワーとイルミネーションが一緒に撮れる」「映え写真をSNSに上げることが目的」ということだった。大勢で横断歩道を行き来することを「楽しい」という声があるように、車道に出て写真を撮ることが「危険な行為」だと認識されていないのかもしれない。
取材班は、けやき坂イルミネーション以外にも、東京・丸の内仲通り、東京ミッドタウン日比谷、有楽町・東京交通会館前のイルミネーションでも取材を行なった。いずれのスポットもそこまで人通りや交通量が多くはなく、来ている人が静かに楽しむ様子が見られた。
それに比べ、「けやき坂イルミネーション」では車道沿いにイルミネーションが並び、交通量があるにもかかわらず交通規制はされていない。
車道脇には白いカラーコーンが並べられ、警備員が歩行者に注意を呼びかけるものの、それが日本語で行なわれるため、ほとんどの外国人観光客にはその意図が伝わっていない様子が見受けられた。
とはいえ、綺麗なイルミネーションと東京タワーを一緒に撮影し、それをSNSに上げて「いいね」をたくさんつけてもらう――その目的を果たすためには「少しの危険」を冒しても構わないのだろうか。
日本を代表する冬の風物詩が、その美しさゆえになくなったりすることのないよう、「赤信号では道路を渡らない」といった最低限のルールは守られてほしい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班